第二章 ~ヘルゼアス戦争~ 二十八話
~ヘルズ~
ヘルズは矢張り、ゼアスと比べたら一目瞭然という程に環境が良い。
ゼアスは城下町や町以外の地は殆どが荒野のような状態だった。
それに対しヘルズは、草が生い茂っていたり、綺麗な川が流れていたり、緑が多い山があったりと、とても見ていて気持ちが良いものだ。
ゼアスは防戦一方なので、この環境が壊される事もない。
マッスル「ヘルズって、この環境を譲ろうとしないんだよな。」
マッスルは周りを見渡しながら、オリに尋ねた。
オリ「正確には、ゼアスは『共有』を望んでいるんだがな。」
マッスル「それって、国境をなくすって事か?」
オリ「そういうことになるかもな。」
マッスルはそうなのか、と言った反応を見せ、下を向いて歩いた。
シャドウ「では、何故ゼアスとセイはまだ1つになっていない?」
確かに、ゼアスとセイは敵同士ではないので、1つになっていてもおかしくはない。
その質問に対し、オリはゆっくりと答えた。
オリ「今ヘルズは、ほぼゼアスしか眼中にない。セイはハッキリ言うと戦力がないからな。」
すると、シャドウがハッと気付いた。
シャドウ「そうか、もし1つになったらセイもゼアスとして狙われる可能性があるのか・・・・・。」
オリ「そうだ。」
そしてしばらく歩いていると、今度はオリがマッスルに対し質問をした。
オリ「マッスル、何かお前にも俺に似たような物を感じるんだが・・・・・・。戦争に何か特別な気持ちがあるのか?」
マッスル「・・・・・何で分かるんだよ。確かにあるけどな。」
するとオリが寂しげな表情を見せ、マッスルに言った。
オリ「すまない、悪い事を聞いてしまったな・・・・・。」
マッスル「いや、いい機会だし言っとくよ。」
~マッスルの話~
シャドウ達は知ってるかもしれないけど、俺の母親はもう死んじまったんだ。
母さんは体が弱かったんだ。
母さんの母さん、そのまた母さん。
何代ぐらいだかは知らないけど、あの北南大戦争(※)の頃だから、500年前くらいかな。
その俺の先祖はカオストの住民だったらしい。
カオストには凄いミサイルみたいな兵器があったそうだけど、非情になれずに撃てなかったらしい。
何でも、撃つとエンドリアが消し飛ぶくらいの威力だったらしいね。
関係無いものまで消す事はない、って撃たなかったんだ。
でも、エンドリアにも似たようなミサイルみたいな兵器があったんだ。
カオストの兵器ほどじゃなかったらしいけど。
カオストはその兵器を撃ちこまれたんだ。
兵は互角だったのに、それで一気にカオストが不利になった。
それと同時に、その俺の先祖も被爆者となった。
運が良くて死ななかったらしいんだが、その影響を受けてそう長くは生きれなかったんだ。
1つ、その頃の夫とのタマゴを産むのと同時に死んだんだ。
そして、そのタマゴから生まれた子供も、またその親の被爆の影響を受けて普通のチャオより長くは生きられなかったらしいんだ。
子供はずっと女の子だったらしくて、やっぱりタマゴを産んでは死ぬ、が続いて・・・・・・・。
やっと、男が生まれた時は500年後くらい。
つまりは俺なんだ。
俺の母さんは特別精神が強かったらしくて、俺を産んだ後も少し生きたんだ。
1ヶ月くらいで死んだ。少しの想い出を残して、ね。
それで、戦争は俺の家系みたいに未来をなくす被害、が起きる前に出来るだけ早く終わらす事が大事なのかな、ってさ。
なんか自己中だけどな。
~マッスルの話 終~
オリ「そうか・・・・・。」
マッスル「でもさ、その時カオストが兵器を撃っておけばって言うと、そう言う訳でもないんだよな。わがままだけど。」
オリ「本当は、どうしたいんだ?」
マッスル「正直、まだ分かんない。ただ、このヘルゼアス戦争はまだ被害を抑えられるんだから、出来るだけの事はしたいね。」
オリ「そうか・・・・・。すまないな、巻き込んでしまって。」
マッスル「別に構わないよな、シャドウ。」
シャドウ「あぁ。もちろんだ。」
すると、シャドウ達の前に見覚えのある一人のチャオが現れた。
???「残酷なものだ・・・・・。」
マッスル「なんで此処に・・・・・!」
続く
※第一章 十二話 参照