第二章 ~ヘルゼアス戦争~ 二十五話
~ゼアスとヘルズの国境~
ゼアス兵隊長とフィムの硬直状態は、まだ続いていた。
ゼアス兵隊長「マズイな・・・・・・。」
フィム「クク、腕が潰れるのも時間の問題。私の勝ちですね。」
それを見ていたマッスルが声を出した。
マッスル「もう行かせてくれよ・・・・・!」
ただ、その声はとても小さく、独り言のようだった。
それに気付いたスチがマッスルに言った。
スチ「だ、ダメです。約束を守る、と言うこともありますが、今手を出して何かの拍子に隊長の腕に負担が急に掛かったりしたら・・・・・・。」
そう、それもあってゼアス兵隊長はもう片方の手で攻撃をしないのだ。
マッスル「でも、見てるだけでも結果は同じなんだろ?」
マッスルは二人の方へと一歩足を出した。
ゼアス兵隊長「マッスル殿、その必要はありません。」
ゼアス兵隊長はニヤッと笑った。
マッスルは足を止めた。
ナイツ「何か・・・・・。後ろから音が聞こえる。」
ナイツのその言葉と共に、全員後ろを向いた。
ゼアス兵隊長「ナイツ殿は耳が良いようですね。さて、フィム。アンタもやられないうちに帰れ。」
フィム「・・・・・!?」
フィムの目に見えたのは、空飛ぶバイクに乗ってこっちに向かってくる沢山のゼアス兵と、その先頭を走っているシャドウだった。
マッスルの隣辺りで止まったシャドウはゼアス兵隊長に向かって言った。
シャドウ「すみません、遅れましたか?」
ゼアス兵隊長「いえいえ、丁度良いくらいですよ。」
そして、次々と降りてくるゼアス兵に驚いたフィムは、ゼアス兵隊長の腕を腹から開放し、一歩下がった。
フィム「何故だ・・・・・。」
ゼアス兵隊長「お前と戦う前に、シャドウ殿にお願いさせてもらってな。」
~戦闘前~
シャドウ「フィムの言う事を聞くのですか。」
ゼアス兵隊長「はい。勝てる保証はないですがね。ただ、確かめたいことがあるのですが、シャドウ殿。お願いできますか。」
シャドウ「・・・・・はい。」
ゼアス兵隊長「私が舌打ちを2回したら、城へ戻ってください。そして、兵達を連れてきてください。舌打ちをしたら伍星・弐割を使います。意識はこっちへ向くので、おそらくは気付かないはずです。」
シャドウ「分かりました。任せてください。」
ゼアス兵隊長「ではシャドウ殿、宜しくお願いしますね。」
~現在~
ゼアス兵隊長「さて、この状況。どうする?この数の兵と、伝説と呼ばれた者とその者と旅をしている者がこんなにいるんだ。」
フィムは強く歯ぎしりをした。
フィム「・・・・・・屈辱的です。が、こんなところでやられる訳には行きません。」
フィムはバシャンと音を立て、水溜まりになった。
フィム「この屈辱はきちんとお返ししてあげます。」
フィムは水溜まりのまま、地を這うようにしてヘルズの方へと行ってしまった。
ゼアス兵隊長「やっぱりな。」
スチ「どうしたのですか?」
ゼアス兵隊長「フィム、アイツは・・・・・・・。」
続く