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特に傷は酷くは無い。酷いと言ったら酷いのだが、これまた不思議なのだ。
胴に貫通している穴が開いている。三つほど。それなのに、痛みしか感じない。血がまったく出ていなかったようだ。
一応、現場の写真も見させてもらった。俺が情けない体勢で倒れている。
臓器が傷ついていない、というのも不思議だ。肉だけ削られているのか?と、医者に質問はしてみたが返答はNOだった。
どうやら、臓器を避けて弾は通っているようだ。いろいろとありえない現象が俺に起きている。
どうしてだか分からない。あの男の弾が当たり、気絶したのだろうか。
それにしては早すぎる。三発も銃声は鳴り響いてない。相手のは一発。それを聞いた直後、俺は病室にいたんだ。
身内はいないので、気楽にすごせる。まさか追ってきたりはしないだろう。
そこで、あの男の目的を考えてみるが何も思い浮かばない。ただ単に殺しが好きな最低な野郎だっただけなのかもしれない。
今は夜。まだあの撃ち合いから数時間。消灯の時間は21:00だそうだ。疲れているので、早めに寝ることにする。

朝。木がぶっ飛ぶかと思うくらいの風と、葉っぱを全て木から剥ぎ取ろうとしている雨を伴う台風が上陸中。
いや、聞いてない。台風なんて来るっていうニュースは耳にしなかった。
地上波で朝放映している、ニュースにさえそんな話は出ていなかった。むしろ、ここ数日は快晴だとも聞いていた。
俺の記憶違いではない。ロビーかどこかに新聞紙があるはずだ。昨日のは残っているだろうか。読み散らかしてある場合、それが黒。
可能性は無いに等しい。同じ病室にいる患者に話しかけるのも気が引ける。
とりあえずは、ロビーに行って昨日の新聞紙を探す。テレビもあるなら、それでこの台風はいつまでここに滞在し続けるのかを見てみたい。
そう思って動こうとするが痛みのため動けない。
仕方が無いので包帯を外してみると、そこには三つの穴が開いた体がある。
中で血が出始めているようだ。そのうち、この包帯に滲むまでになるだろう。
いや、違う。それは無い。おかしいんだ。血が今出るってこと自体がおかしい。
体全体が動かせることから、特に心配はしなくていい。当分は入院だ。
と、安心したところに病室に銃声が響く。
聞きたくないこの音。勢いよく扉を開けた音と同時に聞こえたこの音に、病室はざわめく。
息を殺して顔を確認すると、やはりあの男だ。止めを刺しに来た、という考えなんだろう。顔を見られているからな。
数人の患者のところに行き、顔を確認すると今度は俺のところだ。
ベッドから這い出るように動き、ベッドから落ちるように下へ。その際、栄養補給のため点滴で使っていたスタンドが倒れる。
「動くな」
静かに言い、俺の近くまで歩いてきた。手にはもちろん銃。
「行動力がある。それでいい。俺の後について来い。着替えはあるんだろう?包帯はつけたままでいい。
着替えて、ロビーまで降りて来い」
そういうと、背中を見せて入り口まで歩いて戻る。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第220号
ページ番号
4 / 10
この作品について
タイトル
「生命への冒涜を求めて」
作者
Sachet.A
初回掲載
週刊チャオ第220号