5話~影の暗殺集団~
「ここが・・・。森か?」
ジュエチャは脱力したように言う。
完璧に森と言うより樹海だったからだ。
思いっきり「立ち入り禁止の縄」が張ってある。
「向こうへ渡るには一番の近道だが・・。こんな風になっていたとは。」
エメラスが首を傾げて言う。
剣翔は隣で呆れている。
「貴様、通った事は無いのか?」
剣翔が珍しく喋りかける。
剣翔が喋ると皆、「地震が起こるのでは無いか」と言う。
嫌味に近い。しかし今回は言わなかった。
「ある訳無いだろ!こんな荒れた森!!」
エメラスが言う。
その直後、ジュエチャは剣翔に目配せをした。
勿論、剣翔にはその意味がわかっていた。
後ろからエメラスに近付く。
ガシッ!!
「っぐ・・・!」
言葉にならない声を上げる。
後ろから思い切り羽交い絞めにされているのだ。
しかも剣翔の力は相当な物だった。
「貴様、俺たちにその『荒れた森』にい・か・せ・る・き・か?この野郎。」
「ギ・・・ギブギブ!!ギブアップ!!ゼ・・・絶対・・行きま・・せん!」
言葉が途切れ途切れになっている。
剣翔が解く。
「はぁ・・。こ・・殺す気か!?」
「それは貴様次第だな。」
剣翔が今日はやけに喋る。
本当に殺しかねない勢いだった。
「・・・もう夜か。ココで野宿だな。」
ジュエチャがため息をついて言う。
すぐにフェニクが講義する。
「えー!!!やだ!寝にくいじゃん!!」
駄々を捏ねているが完全に無視されている。
テントの準備までしている。ジュエチャが木の枝などを運ぶ。
「五月蝿い。じゃあ貴様は森の中で寝てろ。」
それだけはご勘弁願いたいところだ。
熊に食われても珍しいことでは無い。
夜、ジュエチャは一人で火にあたっていた。
「・・・、無駄だぞ。俺を殺そうとしているのか?」
後ろから声がする。
「ちっ・・。」
クイックだ。たまには本格的に仕事をやるらしい。
「貴様は何故俺の命を狙っているのだ。」
クイックは答えない。
だが数秒して、
「一族の長の命令だ。」
いつものクイックでは無い
「一族の長・・?何一族だ?それとどうしてそこまで性格が変る?」
エメラスが答える
「1問目は暗殺集団ラージニス。2問目は、・・・二重人格だ。」
ジュエチャが驚いて言う。
「・・・。名だけは聞いたことはある。何でも超優秀とか?」
「・・・。とにかく今日はまずいな。さらばだ。」
音も無く消えていく。
「暗殺集団か・・。」
続く