チャミーGoFight!(その3) ページ1
「やったじゃん、チャミー!」
ルビー色の卵をかかえ控え室に戻ってきたチャミー。
そんなチャミーをチャ・フェラリオのミィが迎える。
「本当に変わってしまったちゃおね。」
ルビー色の卵を横に置き、いすにちょこんと腰掛けるチャミー。
殺傷能力のある武器で闘うルビーチャオ。
それに疑問を感じることもなく興奮する、観客達。
どれもチャミーには、信じられなかった。
「ええ、これが地上ビトや地上チャオの影響。」
ミィは悲しそうにそう言った。
海と大地のハザマにあるというバイチャオンウエル。
全ての魂の帰る場所でもあるバイチャオンウエルは、地上ビト達の思いを受けやすい場所でもあった。
そう、C−1グランプリの観客達は、地上ビト達の思いの象徴でもあった。
「でも、信じられないちゃお。」
チャミーはぼそりとつぶやく。
「アタシの見てきた地上ビトや地上チャオ達は、そんなにひどくはなかったちゃお。」
チャミーがチャニックを追い掛け回した日々。
チャイルスやチャックルズ達と、世界中を駆け回ったが、それらは楽しい思い出であり、他人を傷付けることに何も感じない、いや、むしろそれを喜びにするなんて、チャミーには信じられなかった。
「地上世界も、そんなにすてたもんじゃないわ。」
ミィは悲しげなチャミーに、にっこりと微笑む。
「チャミー、あなたが地上世界から持ち帰ったそのチャオチカラ。それを見れば分かるわ。」
「そうちゃおね。」
そんなミィの言葉に励まされるチャミー。
「アタシは、このチャオチカラでジュエル四天王を浄化しなくちゃいけないちゃお。」
改めて自らの決意を語るチャミー。
「ええ。でも、次のサファイアチャオは、一筋縄ではいかないわ。」
決意に燃えるチャミーに、ミィは注意をうながす。
「サファイアチャオは、ファイティングコンピューターの異名を持つの。今までに何人ものチャオを殺してきたわ。」
ぷるぷる。
その言葉に、思わず身震いするチャミー。
「こ、こらー、何ふるえてるのよ~!」
思わず叫ぶミィ。
「で、でも!そんなチャオなら、なおさらちゃお!アタシが浄化してやるちゃお。」
チャミーははっとして、答えた。
「ふふっ、その意気よ、チャミー。」
「行こうちゃお、ミィ。」
チャミーとミィは、闘技場へと向かう。
闘技場では、サファイアチャオのデモンストレーション中だった。
「ふふふ、遅かったですね。てっきり逃げ出したのかと思いましたよ。」
その声の主は、エメラルドチャオだった。
エメラルドチャオは、チャミーの顔を模した風船を持っていた。
「ちょうどいい。あなたも、数分後の自分の姿を見たいでしょう!」
そう言うとエメラルドチャオは、チャミーの顔を模した風船のひもを手放す。
ふわりと空に浮かんでいく風船。
サファイアチャオは、左手に鉄の爪を装備し、ジャンプ一番、その風船を割る。
湧き上がる歓声。
「ふふふ。これが数分後のあなたの姿です。」
舞い落ちる風船の残骸を前にして、エメラルドチャオが言う。
「コーホー。」
サファイアチャオは不気味な呼吸音を放ち、左手に装備した鉄の爪を目の高さにかかげ、チャミーをにらむ。
「え?」
そんなサファイアチャオを見て、チャミーは驚く。
サファイアは、ハシリタイプのチャオだった。
メタルブルーに輝くボディ。とげとげしく伸びた後頭部。
その外見は、あのチャニックそっくりだった。
しかし、チャニックに感じたネジの緩さ、騙されやすさ、単純さといったものは、カケラも感じさせない。まさにファイティングコンピューター。
「あなた、ハシリタイプちゃおね。」
同じハシリタイプのチャオとして、サファイアチャオが平気に他人を殺せるのが許せないチャミー。
セコンドアウトの掛け声がかかり、エメラルドチャオとミィは、闘技場の外に出る。
審判のオモチャオの目が回り、二人の対戦方式が決定される。
オモチャオの目には、マスクが映る。
「今度ノ対戦方法ハ、覆面剥ギですまっちチャオ!」
突然、オモチャオの目に映ったマスクが具現化。チャミーの顔面を覆う。
「はう!肌に吸い付くようなフィット感!かぼちゃのソレとは、一味違うちゃお。こ、これは…。」
チャミーはマスクに手を当て、わなわなと震えだす。
「息苦しいちゃお!!」
チャミーは、マスクを脱ぎ捨てる。
「コラー。今度ノ覆面剥ギですまっちハ、覆面ヲ剥ガサレタラ負ケチャオ!」
オモチャオの注意が入る。
「え~?でも、あいつはかぶってないちゃお!」
チャミーはサファイアを指差す。
「チ、チ、チ。彼ハスデニ被ッテルチャオ。」
オモチャオがそう言うと、サファイアは顔面をカチャカチャさせる。どうやらサファイアの顔は、マスクらしい。
あっけにとられるチャミー。しかしすぐにはっと我に返り、叫ぶ。
「だったら!アタシの被り物も、アタシが用意するちゃお!被り物ならいいちゃおね?ちょっと待ってるちゃお!」
チャミーは、控え室に戻った。
数分後闘技場に戻ったチャミーは、卵の殻を被っていた。
「さあ、これで勝負ち