その2 ページ1
海と大地のハザマにあるという世界、バイチャオンウエル。
スペースコロニーチャークの危機から帰還した、どこかさびしそうなチャニック。
チャミーは、彼をしばらくそっとしといてあげる為、故郷のバイチャオンウエルに帰って来た。
全ての魂の帰る場所とも言われるバイチャオンウエルは、地上ビトや地上チャオの邪念により、淀んだ世界になっていた。
その淀みの象徴が、ジュエル四天王と呼ばれる四人のジュエルチャオだった。
チャミーは、地上から持ち帰ったチャオチカラにより、彼等を浄化すべく、C−1グランプリに出場することを決めた。
C−1グランプリの闘技場。
それは、10メートル四方の、一枚の石版だった。
四方の一辺は、選手の控え室や大会本部のある館に隣接。
残りの三方から3メートル離れた所に壁があり、その向こう側が観客席になっていた。
体長50センチにもみたないチャオにとって、それは広すぎる闘技場だった。
チャミーは、その石版の上で1人、待機していた。
以前、このC−1グランプリで優勝したことのあるチャミー。
チャミーは、バイチャオンウエルの伝説となったチャオであった。
そんなチャミーを一目見ようと、バイチャオンウエル中のチャオ達が集まっていた。
しかし、そんな観客達の興味は、伝説のチャオを打ち負かす、ジュエル四天王達にあった。
待ちわびた観客達の我慢が限界にきたころ、1人のジュエルチャオが登場する。
「チカラこそ、パワー!!」
その叫び声に、観客のボルテージは最高潮に達する。
チャミーの前に現れたジュエルチャオ。彼は、ニュートラチカラのルビーチャオだった。
「ちゃっちゃっちゃ。あのチャラリオの敵をとりに来たのかな?ふん、返り討ちにしてくれるわ!」
そう言ってルビーチャオは、鎌ヌンチャクを取り出した。
それを見て、観客の声援が乱れ飛ぶ!
派手に勝つルビーチャオへの期待の現われでもある。
「ちょ、ちょっと!あんなのでぶたれたら、大出血ちゃお。あんなの反則ちゃお!」
チャミーは、審判のオモチャオに抗議する。
「コノC−1ぐらんぷりハ、武器ノ使用ハ認メラレテルチャオ。ナンラ問題ハナイチャオ。
サア、対戦方法ヲ決メルチャオ。」
そう言うと、オモチャオの目玉が回転し始める。オモチャオの目に、鎖の絵が表れる。
「対戦方法ハ、ちぇーんですまっちチャオ!」
オモチャオの一声で、チャミーとルビーチャオの右腕をつなぐ鎖が現れる。
長さにして、2メートル。体長50センチにも満たないチャオには、そんなに束縛される長さではない。
「イザ、尋常ニ勝負!」
オモチャオの掛け声とともに、試合が開始される。
猛然とダッシュするルビーチャオ。チャミー目掛けて、鎌ヌンチャクを振り回す!
わっと盛り上がる観客達。
そんな中チャミーは、鋭い鎌ヌンチャクを紙一重でかわしまくる。
はた目からは、ルビーチャオの攻勢に見えていた。観客達も、そんなルビーチャオに割れんばかりの声援を送る。
しかしルビーチャオは、そんな声援にいらだつ。
なぜ当たらない?
ルビーチャオのあせりは、その攻撃を単調なものにしていた。チャミーは、そんなルビーチャオのあせりが生んだ隙を見逃さなかった。
「足元が、お留守ちゃお!」
チャミーは、突然のスライディングキックをぶちかます。
足元をすくわれたルビーチャオは、もんどおりうってすっころぶ。
「あれが、チャミーの強さだ。」
闘技場に隣接された館の中から、ジュエル四天王の1人、アメジストチャオがつぶやく。
「なるほど。あの足技こそがチャミーの強さなのですね。」
もう1人のジュエル四天王、エメラルドチャオが答える。
「そうだ。我々チャオは、足が短い。どうしても足技はおろそかにしてしまうものだ。さすがは、ハシリタイプのチャオと言うべきか。」
「コーホー。」
そんなアメジストチャオの発言に、他の1人のジュエル四天王、サファイアチャオが不気味な呼吸音をあげる。
「そうでしたね。あなたもハシリタイプでしたね。」
そんな会話の最中、チャミーは起き上がるルビーチャオに対し、超必殺技を発動させる。
飛燕鳳凰脚と名付けられたその技は、無数の踏みつけ蹴りを浴びせながら、相手の体を駆け上がる。
そして、相手の額まで上り詰めた時、相手の顔面にトゥキックをぶちかます!
後方に吹き飛ぶ相手に対し、技のかけ手はその場で宙返りを決め、着地する。
しかし、今回の対戦は、チェーンデスマッチ。
チェーンの長さ分、ルビーチャオが吹き飛んだ時、チャミーの右手がチェーンに引っ張られる。
チェーンに吹っ飛ばされた威力を相殺されたルビーチャオは、その勢いを利用し、チャミーを引き寄せる。
体勢を崩したチャミーは、そのままルビーチャオに引き寄せられる。
鎌ヌンチャクの鎌を振り上げ待ち構えるルビーチャオ。
「チカラこそ、パワー!!」
叫び声とともに、鎌ヌンチャクを一閃!!!
「ちゃお~~~!」
鎌は、チャミーの左手をざっくりと切り裂く。ピンク色の体液が噴水のごとく飛び散る。