第二話 復讐の時

レイラは水龍と真正面から向き合っていた。

レイラは、この男を知っていた。

遠い昔―レイラが遊牧民として野原を駆け回っていたころのことだ。

突然、彼がやってきたと思うと、あの淡く輝く水龍で・・・家族や友達を皆殺しにしていったのだ―

理由は今もわからない。

ただ、殺しを楽しんでいるようにしか見えなかった。

一人で狩をして暮らしていた・・・そのとき、クロウが現われ、彼と共に生活することになったのだった。

レイラは、自分の心の奥底に、強い復讐の想いがあるのを感じた。

レイラと刺客しか立っていない静かな廊下。

レイラの心は怒りと憎しみに満ちていた。

今まで感じたことのない想いがレイラを支配していた。

刺客「お嬢ちゃん・・・たった一人で立ち向かうのか。いい度胸だ。」

レイラ「お前なんかに負けはしない・・・。そのために今日まで生きてきたのだから・・・」

刺客「ならば、今日で終わりにしてあげよう。―バレグ・フォン・ヒアム(行け・水・龍)・・・」

レイラ「―エヴァウス・クレイ(冷気・盾)」

放たれた水龍は、レイラの氷の盾にいともたやすく阻まれてしまった。

レイラ「その程度か。次は私からだ。」

レイラは走り出した。刺客めがけて。

予想外の行動にうろたえる刺客めがけて、レイラは魔旋律を唱えた。

レイラ「エルマ・アファル(氷・鉤爪)・・・」

レイラの指先からほとばしった冷気が鉤爪となり、刺客を襲った。

レイラ「・・・これで終わりだ。」

レイラが刺客に襲い掛かった瞬間だった。

???「しょうがない・・・私が助けてあげるよ。―ファイ・エクレ・ラルク(移動・他人・自分)・・・」

レイラの目の前に現われたのは女だった。

レイラ「ちっ・・・増援か・・・」

???「戦う気はない・・・こいつを迎えに来ただけさ。」

レイラ「待て! まだ勝負はついていない!」

???「また会おう。」

スッ・・・

レイラの目の前で、刺客と女は消えた。

レイラ「瞬間移動・・・それも完璧なものだ・・・」

しかし、その余韻に浸っている場合ではなかった。

さっきの衝撃で床が崩れ始めている。

レイラ「早く脱出しないとやばそうだな・・・」

と、その時だった。

ガラ・・・ズズ・・・

レイラ「・・・!!」

ドーン!

天井が落ちてきたのだ。

レイラ「これじゃ出れそうにもない・・・」

レイラは、密室状態となった廊下に閉じ込められてしまったのだった。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第153号
ページ番号
3 / 21
この作品について
タイトル
理想郷へ ―果てしなき世界―
作者
桜(フィルァ,チャチャ,飛諏珂)
初回掲載
週刊チャオ第153号
最終掲載
週刊チャオ第163号
連載期間
約2ヵ月12日