Final.Act 不動

12月24日、水曜日。
何事も無かったかのように学校に通う神凪。2日連続で休んだのではあるが、病欠という言い訳はできている。
【神凪】「おーっす、大丈夫か?」
【森下】「なーんかよく分かんねぇけど戻ってきたぜ。」
【富永】「俺らからしたら2日分タイムスリップしただけように感じるだけだからなぁ。」


               【REMEMBER!![リメンバー!!]】FinalAct.不動


闇の侵食が完全に消えた途端、行方不明者が消えた場所で次々と発見された。
全員ともに行方不明になっている間の記憶は無く、年の瀬の怪奇現象としてマスコミを騒がせた。
富永と森下もマスコミからの取材を受けており、何もしていないのに有名人である。

行方不明になる直前に2人と一緒にいた神凪も1回インタビューを受けたが、無論『真実』は伏せた。
2人と別れて、なんかフッと音がしたので振り向いたら姿がなかった、寄り道したのかと思い不審には思わなかった———それが彼の『証言』である。


【神凪】(チャオ、か・・・)
チャオ。昨日から、その単語が頭を離れない。あれだけのことがあって、ある意味当然なのかもしれないが。


あの後、電脳世界を通じ神凪の部屋に戻った後、アリサはIDOLAへと帰っていった。
もちろん黒川に世間の疑いの目が向けられることはなく、何事も無かったかのように仕事を続けている。
『いま話題の天才プログラマー・黒川紀子に直撃インタビュー!!』
そんな記事の載る雑誌が相変わらず本屋に積んである。

神凪は下校途中に本屋でその雑誌をパラパラと立ち読みしたが、インタビュー内容に興味は持てなかった。
雑誌がパソコンの専門誌のためインタビュー内容も専門的、というところが大きいが、何より、もう彼女は他人なのだから。


【森下】「おーい、何やってんだよ。」
森下が声をかける。
【神凪】「おう、ちょっとな。」
【富永】「しっかし相変わらずボーっとしてるなぁ。本当にどうしたんだ?」
【神凪】「何でもねぇってば・・・」
【森下】「ん、これって有名なオタク系パソコン雑誌じゃん。お前、実は隠れオタクだったのか!?」
【神凪】「違ぇーよ!!ちょっと気になっただけだよ!」
【富永】「何がだよ?・・・あ、この人だな!最近話題になってる美人プログラマー!!」
と、富永が指したのは、雑誌の表紙にあった黒川の写真。
【富永】「お前、ひょっとしてこいつのファンなのか!?」
【神凪】「いや、違うってば・・・」

無意味な押し問答を続けつつ、神凪は思った。これが日常なんだな、と。
やっと帰ってこれたんだな、という感情が沸き起こり、不意に笑い声がでた。

【森下】「つ、遂に神凪が狂ったぞ・・・」
【富永】「今ならまだ間に合う!神凪!引き返せーっ!!」


何とか2人の詰問をかわし、神凪は自宅へ。
階段を駆け上がり、自分の部屋へと向かう。
【神凪】(ここ数日色々ありすぎたし・・・今日はゆっくり寝るかな)


が、部屋の入り口で、神凪は再び呆然と立ち尽くした。

そこで、数日前とほぼ同じ光景が繰り返されていたからだ。


・・・そこにいたのは、テレビのお笑い番組を見てお菓子を食べつつたまに爆笑するアリサ。

【芸人】『これで楽におそうじが・・・ってなんでやねん!!』
【アリサ】「ぎゃははははは!!」

次の瞬間、何の気なしにふと入り口の方を振り向いたアリサと、神凪の目が合った。

【アリサ】「・・・あ゛。」
【神凪】「・・・をい。」
とっても気まずそうに目を合わせる2人。


【アリサ】「い、いやー、こっちの世界のテレビっておもしろいなーって・・・てへ♪」
【神凪】「てへ♪じゃねーっ!!」
神凪が一発アリサにブチ込む。その力は、テレビの中のお笑い芸人のそれよりはるかに強かった。


<おわり>

このページについて
掲載号
チャオ生誕10周年記念特別号
ページ番号
11 / 12
この作品について
タイトル
【REMEMBER!![リメンバー!!]】
作者
ホップスター
初回掲載
チャオ生誕10周年記念特別号