Act.7 躍動

電脳世界。そこは、光と闇の世界。
基本的には闇で構成されているが、そこを無数の光が飛び交う。
そこをアリサは、光の矢をかいくぐるように突き進む。


               【REMEMBER!![リメンバー!!]】Act7.躍動


そのアリサに、必死でつかまってるだけの神凪。
【神凪】「だ、大丈夫なのかよこれ!?」
【アリサ】「まぁ任せといてって!」

すると、アリサはさらにスピードを上げる。
【神凪】「うひいっ!」

そのスピードにだいぶ慣れてきた頃、神凪がふと思ったことをアリサにぶつける。
【神凪】「・・・って、そもそも光に当たるとどうなるんだ?」
【アリサ】「この世界を飛び交う光はつまり、信号、というか通信。
      ぶつかってもあたしらに害はないけど、届くはずのメールが届かないとか、重要な情報が通信できないとか、そういう事になるわね。」
【神凪】「へぇ・・・で、犯人をどうやって探すんだ?」
【アリサ】「あれだけの事をやるんだから、当然たくさんの通信が必要。となると・・・」
【神凪】「この世界で光をたくさん出しているはずって話か。でも、他の通信をたくさん出すような場所って、普通にあるだろ?」

大企業や官庁クラスであれば、当然たくさんの通信をしてるはずである。が、彼女には判別できる根拠があった。
【アリサ】「確かにそうだけど、そういう場所って、受信もたくさんしてるでしょ?
      いずれにせよ、あれだけの事をやるんだから絶対的に送信量のほうが多いはず・・・」
【神凪】「なるほど・・・」
そんな場所を見つけ出す。大量の光を避けながら。神様ならではの芸当だ。


【アリサ】「・・・候補は絞れたわ・・・あと3ヶ所・・・」
【神凪】「こっからは勘、か?」
【アリサ】「そうねぇ、でも・・・」

と、アリサはそのうちの1ヶ所の目の前に移動した。
すると、右手をスッと前に出す。
【神凪】「・・・?」
【アリサ】「恐らくハズレの2ヶ所は凄腕のハッカーか何かね・・・となると・・・」
その右手から一発、光の矢をその『場所』に向けて撃った。

すると、規則正しく放たれていた光の矢が、乱れた。
【アリサ】「当たりね・・・この程度のパケット送信で動揺してるなんて・・・」
【神凪】「普通攻撃してるところに攻撃受けたら動揺しないか?」
【アリサ】「ああいう事をやってる奴はこの程度は想定内、らしいわ。
      ・・・さて、いくわよ。」
【神凪】「あ、ああ・・・」

神凪は息をのんだ。アリサが言うには、ここに犯人がいる。
チャオ世界を通じ『闇』を侵食させ、無関係の人すら巻き込もうとした人間が。

そして、アリサに続いて、その無数の光が飛び出している『点』へ、飛び込んだ。


そこにいたのは、一人の女性だった。
【女性】「な、なんで・・・こんな、ことが・・・っ!!」
さすがに驚いている。というより、驚かない人間はいないだろう。パソコンのモニターから人間が2人出てきたのだから。

するとアリサは、今自分たちが『出てきた』パソコンを少しいじる。
【アリサ】「やはりビンゴだったみたいね・・・
      闇を侵食させてこの世界をも滅ぼそうとした犯人・・・」
【女性】「・・・っ!」
彼女は唇を噛む。バレてしまった、という表情だ。

【神凪】「この人、ひょっとして・・・」
神凪には、その顔に見覚えがあった。
【アリサ】「知ってるの?こっちの世界の有名人とか詳しくないけど・・・」
【神凪】「ああ、前にテレビで見たことがある・・・
     弱冠22歳にして数々の大企業のシステム構築を請け負う天才プログラマー、黒川紀子・・・!!」

その女性、つまり黒川は、椅子にカタンと座った。
【黒川】「・・・で、私を捕まえに来たの?」
【アリサ】「残念だけどあたしらは警察でもなんでもないわ。ただあたしは、自分の世界が侵食されて消えてしまうのが嫌なだけ・・・」
【黒川】「自分の・・・世界?」

そこでアリサは、自分のことについて話す。
すると黒川は、何かを思いついたようにパソコンをカタカタといじると、大きくため息をついた。
【黒川】「まさか・・・自分で自分の首を絞めるとはね・・・」
【神凪】「自分の首?」
【黒川】「チャオ世界・・・正式名、『IDOLA』[イドラ]を創造したのは、他でもない私よ・・・アリサ、あなたもね・・・」
【アリサ】「・・・え・・・!?」

そこで、アリサの動きが止まった。明らかに動揺している。
黒川はこう説明した。

アリサは、チャオ世界(=IDOLA)が昔から存在しているように思っているが、実は違う。黒川が数年前に自らプログラムして創りあげたものだ。
だが、既に天才と騒がれ、業界で注目されていた彼女にとって、創りあげたものを管理する暇はなかった。そこで、『管理者』を創造した。

後に、黒川がIDOLAを利用した侵食を企てた時に、『管理者』をその『監視者』として作り変えた。
【アリサ】「監視者・・・カレンっ!!?」
【黒川】「ええ、そうよ・・・」

だがその後、黒川がチェックしていない所である予期せぬ事態が生じる。
元々管理者にあった『良心』が、カレンから分裂して、別の人格になった。
【黒川】「それが貴方・・・アリサ・・・」
【アリサ】「嘘・・・そんな・・・っ!!」
その場に崩れ落ちるアリサ。

<続く>

このページについて
掲載号
チャオ生誕10周年記念特別号
ページ番号
8 / 12
この作品について
タイトル
【REMEMBER!![リメンバー!!]】
作者
ホップスター
初回掲載
チャオ生誕10周年記念特別号