Act.4 反動
学校での激突の翌日。激しい筋肉痛は止まらず、神凪は学校を休んだ。
・・・そして部屋では、アリサが『あの日』と同様に座り込んでいる。
【REMEMBER!![リメンバー!!]】Act4.反動
【神凪】「くっ・・・起き上がるのもキツイってどーなってんだ・・・」
そしてアリサはそれに味を占めたのか、テレビのスイッチを入れた。
【レポーター】『昨日夕方、県立第二高校の生徒及び教職員計24名が失踪した事件につきましては、・・・』
24名。これが平日であれば、さらに倍以上に増えていただろう。日曜日だったからこそ、この人数で済んだともいえる。
【アリサ】「ま、こればっかりは慣れしかないんじゃないの?」
と言いつつ、部屋にあったお菓子をつまむ。
【神凪】「あっ、俺の…ってこの際どうでもいい。
あの女の子・・・なんなんだ?というか、どこまで知ってるんだ?この事件のことを・・・」
結局、まだ神凪は何も知らされちゃいないのだ。
【アリサ】「そうねぇ、まず、あの女の子だけど・・・コードネーム『カレン』、らしいわ。
といっても、あたしが知ってるのはそれぐらいで、どこの世界の住人なのか、そもそも人間かどうかすらわかんない。」
【神凪】「カレン・・・」
【アリサ】「分かってるのは、彼女が『侵食する側』、だということと、めちゃめちゃ強いってこと。
これはあたしの推測だけど、昨日の学校みたいに闇の侵食がうまくいくかどうか確認して、あたしらみたいな邪魔者を排除する役割だと思う。」
【神凪】「そういや、復讐とか言ってたな。夢を忘れた人間に、だっけか?」
【アリサ】「そうねぇ。でもそれだけじゃ何も推測しようがないじゃん。」
そもそも、『夢を忘れた』のは特定の人間なのか、それとも人類全体に対するものなのか。
前者にしては無差別すぎるし、後者にしては小規模すぎる。最も、この方法しかできない、という可能性もあるが。
いずれにせよ、今のままでは不明点が多すぎるのだ。
しばらくテレビの音声だけが部屋を占める。
少しして、神凪が「もう1つ」の疑問に触れた。
【神凪】「そういえば・・・お前が神様をやってる『チャオ世界』って、どんな世界なんだ?」
するとアリサは少し考え込んだあと、
【アリサ】「そうね・・・行ってみる?」
と、逆に聞き返した。
【神凪】「行ってみるって・・・」
【アリサ】「チャオ世界に。それも、今。」
【神凪】「はぁ!?」
神凪が聞き返したその時、突然どこからもなく光が溢れ出し、思わず目を伏せた。
・・・数秒後、目を開けると、そこには草原が広がっていた。
【神凪】「なっ・・・!?」
【アリサ】「ここが『チャオ世界』よ。最も、今は闇の侵食でこういう場所はほとんど無くなってきてるけど・・・」
戸惑いつつ、辺りを見渡す。
すると、前方から、見慣れない生き物が現れた。こちらに向かってくる。
【神凪】「!?」
【アリサ】「あれが、チャオ・・・この世界に住む生き物の名前。だからここは、チャオ世界。」
すると彼女は一歩進み出て、やってみたチャオを抱え上げる。
【神凪】「なるほど・・・」
それを横で見ていた神凪。だが、妙な感覚に襲われていた。
【神凪】(知らないはず・・・初めて見たはずなのに・・・どこかで見た事あるような・・・
知っている・・・?俺は『チャオ』を知っている・・・?)
どこかで見たことがあるような気がするが、全く記憶に無い。
彼は、これがいわゆる「デジャヴ」なのかと、無理矢理納得した。そうでないと、収まらないからだ。
【アリサ】「ん?どうかした?」
彼女も神凪の『異変』に気付くが、
【神凪】「んや、何でもない。」
と軽く流した。
と、その時。
【アリサ】「・・・!!!」
アリサの表情が変わった。
【アリサ】「・・・来る!?まさかここまで!?」
【神凪】「まさか、あいつが!?」
【アリサ】「ええ・・・この子を頼める?」
と、彼女は抱えていたチャオを神凪に見せる。
【神凪】「つったって、どうすれば!?」
【アリサ】「とりあえず、あの方向ならまだ安全なはず!」
と、右後方を指差す。
【神凪】「おし、とにかく走って逃げるから、追い払ったら追っかけてくれ!」
【アリサ】「分かったわ!」
そして、チャオを神凪に渡す。
【神凪】「っしゃああっ!」
神凪は草原を回れ右して、チャオを抱えて走り出した。
それを確認するとアリサは、
【アリサ】「さてと・・・神様を怒らせると、恐いわよ・・・」
スッと一瞬目を閉じた後、正面の彼方を見つめた。
・・・その彼方から猛スピードでアリサに迫ってくる『影』は、昨日戦ったカレンに間違いなかった。
【神凪】「け、結構重いのな、お前・・・!」
チャオを抱えて走りながら神凪はそうつぶやいた。さっきまで動けなかったはずの筋肉痛は、全くしなかった。
<続く>