Act.2 胎動

『神様』を名乗る少女が突然神凪の部屋に現れた。
彼女は、その『理由』を説明しだす。


               【REMEMBER!![リメンバー!!]】Act2.胎動


【神凪】「・・・『チャオ』?」
【少女】「そ。あたしはそのチャオってイキモノがいる世界の神様なんだけど、その世界がピーンチ!なのよ。」
【神凪】「で、この人間世界とやらで勇者様探しってワケか。」
【少女】「そゆコト。」

・・・しかし、最大の疑問はなお残る。
【神凪】「・・・で、その勇者様探しに何で部屋のガサ入れが必要なんだ?」
すると彼女は笑顔がひきつる。
【少女】「そ、それは・・・その、なんというか・・・ごめんなさい。」
神様、あっさり謝った。どうやら無関係らしい。

【神凪】「・・・何も盗ってないよな?」
【少女】「何か盗るつもりで入ったワケじゃないし。まぁちょっとこっちの世界の調べ物よ。」
【神凪】「ふーん・・・まぁいいや。」

・・・で、一番重要な話。
【少女】「で、勇者様にはなってくれるの?」
【神凪】「やだ。」
即答。

【少女】「・・・」
【神凪】「んな面倒なコトするかっての。ミスったら死ぬだろ?」
【少女】「まぁザックリといくわね。」
【神凪】「ザックリ・・・まぁそういう訳で、悪いが他をあたってくれ!」
と、言い切った。

彼女はその様子をみて、これ以上説得するのを諦めた。そして、急に表情を変えた。
【少女】「んじゃそうする。・・・だけど、最後に1つ忠告しとくわ。
     危機に陥ってるのはチャオ世界だけど、その影響はこちらにも及んでる・・・」
【神凪】「・・・!」
思い当たるフシがあった。ここ数日、マスコミを賑わす謎の失踪事件。
無関係の人が次々と行方不明になり、もう既に30人を越えている。
【少女】「無理に勇者様になれとは言わないわ。でもせめて、被害者にならないようにはすべきね。
     ・・・それじゃ!」
すると彼女は部屋を出ようとした。が、神凪は右手を伸ばして彼女の肩を掴み、それを止めた。
【神凪】「折角の縁だ、最後に名前だけ聞いておこうか・・・最も神様に名前があるのかどうか俺は知らないけど。」
【少女】「そうね。『アリサ』よ。まぁ、仮名みたいなもんだけど。
     ・・・それじゃ、今度こそ、いいかしら?」
【神凪】「ああ。」

すると彼女はタン、と軽くジャンプする仕草をすると、空へと舞い上がり、部屋の天井をすり抜けて、消えた。

【神凪】「神様、か・・・」

・・・その瞬間、思い出した。
【神凪】「まさか!!」

昨夜見た、『悪夢』。
『思い出せ』、と叫ぶその声は、今立ち去った『神様』と同じ声だった———

【神凪】「何を思い出せってんだ・・・」
だが、そもそも忘れているから思い出せと言われている訳で、何を思い出せばいいのか分かるはずがない。


その夜、彼は夢を見なかった。見た記憶が、無かった。


【森下】「おい、本当にどうしたんだ?この前から・・・」
【富永】「今日もボケっとして怒鳴られてたよな。」
【神凪】「何でもないっつってんだろ・・・」
その数日後の日曜日、3人で遊びに行った帰り、数日前と同じような会話を繰り返す。ある意味、それは日常でもある。

・・・が、その日常は、あっけなく崩壊した。

帰り道にある交差点、森下と富永は脇道へ曲がり、神凪は直進する。そこまでは普段通り。
神凪が2人に対し言い忘れがあった事に気づき、クルリと回り、戻って2人の曲がったほうを見た。その時———


2人が、消えた。


神凪が見た瞬間には、まだ2人の姿があった。が、刹那、2人の姿が消えた。
【神凪】「・・・!?」
声も出ず、その場で立ち尽くす神凪。何が起こったのか分からない。しばらく、彼の耳にはどんな音も入らなくなった。

【神凪】「森・・・下・・・?富永・・・!?」


そこで、『声』が耳に飛び込んだ。
聞き覚えのある声。これは———昨日の———そう、『神様』、アリサ。

【アリサ】「あっちゃー、まさかこんなに深刻だとはねぇ・・・。」

神凪はその声のする方、右後ろを振り向き、突然胸倉を掴む。
【神凪】「おい・・・どういう事だよ・・・まさか・・・」
【アリサ】「ちょ、いきなりオンナノコの胸倉掴むって何よ!?」
その一言で神凪はその手を緩め、離す。アリサは苦しそうに右手を自らの喉に当てた。
【アリサ】「はー、はー・・・まぁそういう行動に出たくもなるわよね・・・
      確認するけど、今の2人は・・・オトモダチ?」
【神凪】「ああ・・・」
ゆっくりと頷く神凪。

少しの間を置いて、アリサは話す。
【アリサ】「『闇の侵食』よ・・・昨日言ったチャオ世界ってところで『闇』が広がって、その闇がこの世界にも侵食し始めた・・・」
【神凪】「どうやったら止められるんだ?あいつらは戻ってくるのか!?」
【アリサ】「これは推測でしかないけど・・・『闇』を操っている者がどこかにいる。そいつを止めれば侵食は止まる。
      そして『闇』を完全に消せば、消えた人はみんな戻ってくる・・・」
【神凪】「分かった・・・昨日は断ったが、事情が変わった。俺がその勇者様とやらをやるよ・・・!」

<続く>

このページについて
掲載号
チャオ生誕10周年記念特別号
ページ番号
3 / 12
この作品について
タイトル
【REMEMBER!![リメンバー!!]】
作者
ホップスター
初回掲載
チャオ生誕10周年記念特別号