第五話 ページ2

「あ~、みんな見るちゃお!いじめっ子の頭の上!!」
「あ~、アレがないちゃお!」
チャオの頭の上に浮かぶ球体。それは、チャオの感情を表すコミュニティツール。
それが無いということは、意思表現のキャッチボールが出来ないということである。
「いや、あるちゃお。」
ピカチャオに一番近くにいるナックルズチャオは、虚空を指差す。
その指先には、よくよく見るとゴマ粒みたいなのが浮かんでいた。
「本トちゃお。」
他のチャオ達も、目を凝らして初めて気が付く。
しかし、新たな疑問が浮かぶ。

なぜ、いじめっ子のチャオのアレは、こんなにも小さいのちゃおか?

五人は、あれこれと考える。

ぽん。ぽん。
小気味いい音が辺りに響く。何度もハテナマークを作り直しているから。
その光景にピカチャオは、きょとんと魅入り、闘うことを忘れていた。
すると突然、エミーチャオの頭の上に、ビックリマークが浮かぶ。
「わかたちゃお!チャオトレーナーちゃお!」
「そうか、チャオトレーナーちゃお!」
テイルスチャオとツヤツヤシャドーチャオも、ビックリマークを浮かべる。
「チャオトレーナー?」
しかし、ナックルズチャオとツヤツヤソニックチャオはハテナマークのままだ。
「イインチャウ達が言ってたちゃお。チャオトレーナーは捕まえたチャオを育てて、チャオ同士を戦わせるちゃおって。」
テイルスチャオの言葉に、ツヤツヤソニックチャオも気が付いた。
しかしナックルズチャオは、ハテナマークのままだ。無理も無い。あの時、彼は泣いていたのだから。

「じゃあこいつは、チャオトレーナーにこのようにされちゃったってことちゃおか?」
聞き返すナックルズチャオに、みんなはうなずく。
「そうだとしたらこの子、かわいそうちゃお。」
エミーチャオは目に涙を浮かべる。
他のチャオ達も、同情な目でピカチャオを見つめる。
「ぴかぴか?」
ピカチャオはそんな五人に面食らう。
「お前も、あんな人間の犠牲者ちゃおね。」
「ぴか?」
ピカチャオにとって、その発言の真意は、よく分からなかった。
「あんな人間に捕まって、…。ごめんちゃお。君もチャオトレーナーの犠牲者だったちゃお。」
テイルスチャオは泣き出した。ピカチャオの置かれた境遇。チャオ同士を闘わせる為のみに育てられるピカチャオ。
なんともかわいそうにおもえました。
「ぴ、ぴかぴか!」
しかし、ピカチャオは首をふります。
「え?お前、あんな人間と一緒にいて、嫌じゃないちゃおか?」
「ぴか、ちゃお!」
ナックルズチャオの言葉に、力強くうなずく。
「でもあいつは、チャオ同士を戦わせるようなヤツちゃおよ?野蛮ちゃお!」
思わずまくしたてるテイルスチャオ。
しかし、ピカチャオは首をふります。

「そうちゃおか。君は、あのチャオトレーナーが好きちゃおね?」
「ぴか!」
明るく答えるピカチャオに、五人は不思議な気持ちになります。

チャオ同士を闘わせる。
そんな人間を、大好きだなんて。

「お~い、ピカチャオ~。どこだぁ?」
「ぴか?」
ふと、チャオトレーナーの声がした。はぐれたピカチャオを探しにきたのだ。
「お、そこにいるのか?」
ピカチャオの声に気が付いたチャオトレーナーが、駆け寄ってきます。
思わず身構えるキャラチャオン。
しかし、ピカチャオはにっこりと微笑むと、向こうの方へと駆け出します。
「ぴかぴかぁ!」
「お、そっちか。待てよ、ピカチャオ!」
チャオトレーナーの声も、ピカチャオが走り去った方へと遠のいていきます。

「助かったちゃお。」
ほっと胸をなでおろすキャラチャオン。
しかし、ピカチャオの事が、五人の胸に深くつきささる。
本当に、幸せなのだろうか?
チャオにとってのしあわせとは、なんなのだろう?

つづく。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第135号
ページ番号
6 / 28
この作品について
タイトル
不定期連載 レアチャオ戦記キャラチャオン (全28話)
作者
あさぼらけ
初回掲載
週刊チャオ第133号
最終掲載
週刊チャオ第190号
連載期間
約1年1ヵ月4日