表紙 Last Episode 第9話「全てはチャオのために」

某国からステーションスクエアへと飛ぶ飛行機の中。
ふうりんはキョーバ君に、小声で話しかけた。

「おかしいと思いましたよね。私たちは倉庫にいたはずなのに、いつの間にか気を失って、ホテルの部屋に戻されているなんて」
「ええ……まあ……」
キョーバ君は口をモゴモゴさせながら答えた。なぜ口をモゴモゴさせているかというと、ホテルから失敬してきたバナナを食べながら喋っているからである。

ふうりんはそんなキョーバ君には構わず続ける。
「このことから、犯人の人物像が明らかになります。一つは、倉庫の中を詳しく調べられるとまずいということ。もう一つは、それと同時に、私やキョーバ君を無下に扱うことが出来ないということ。その証拠に、私たちは何も盗られていませんし、体に傷を負ったわけでもない」
「でもその条件を満たす人なんて、たくさんいるんじゃないですか?」
うなずくふうりん。
「そうです。でも実はそれに加えてもう一つ、条件が潜んでいるんです。
 私たちを某国へ最も行かせたがっていた人物が誰だったか、覚えていませんか?」


☆★☆ 週刊チャオの表紙 - Last Episode ☆★☆
    第9話 「全てはチャオのために」


チャピル達は立ち上がった。ふうりんを助けるために。
日没を合図にして、ふうりん救出部隊は行動を開始する。
屋上には何かがあるはず。
そこで待ち構えていたのは、セティだった!!
「セティさん?……どうかされたんですか?」
「もう分かっているんでしょ? 私たちの計画を」
「私たち?」
「そう、私たち。私とDXエアーの手による、週チャオの海外進出を賭けた計画を!!」


~あらすじ~
週チャオの海賊版が発見された。その取り締まりのため、ふうりんとキョーバ君とは某国で、チャピルとけいりんは編集部の内部からそれぞ調査を進めていた矢先の出来事。
ふうりんが消息を絶った。その知らせを聞いたチャピル達は、直ちに、先日突き止めた敵の本陣に攻め入ることを決意する。


【DXエアー】「飛んで火に入る夏の虫とは、まさにこのこと!!」
どこからともなく声が聞こえた。
【シグマ】「お前は!! DXエアーか!!」
【DXエアー】「いかにも」
DXエアーは不敵にも、シグマの言葉を嘲笑う。
【チャピル】「ねーねー」
【けいりん】「なんですか」
【チャピル】「今季節的に冬なんですけど、夏の虫の例えを使うのって、どうなんでしょ?」
【けいりん】「べつにいいんじゃねー」
【チャピル】「そっすかー」

セティの表情が歪む。いや、彼女はしかし、笑っているのだ。
「ふふふ・・・こんな場面でも表紙コントを続けるなんて、ご苦労なことね。でももう、その必要はないわね? DXエアー」
「了解している」

チャピルのほほを、風が撫でた気がした。DXエアーの姿はどこにも見当たらない。
代わりに、甲高い笑い声が、どこからともなく聞こえてくる。
「我こそはDXエアー! 無意識と一体化し、この空間を制す、認識の支配者!!」
「くそっ、見えない空気だなんて、どうしたらいいんだ!」
ただっぴろい屋上には、自分たち以外の姿は見えない。

「下がってろ!!」
シグマが刀を抜く。そして剣先を正面に向けたまま、目を閉じる。
「空気が動かすのは、臭いだけじゃねえ」
彼は今、風を感じている。DXエアーが動けば、彼の触覚、聴覚は、必ずかすかな風の動きを受ける。しいては、DXエアーの居場所を掴むことも不可能ではない!
「そこだぁっ!!」
シグマは刀を力の限り、真横に振り切った。
宙を掻く刀。
思いっきり、からぶった。
「あ、あぁっ?」
シグマがぽかーんとしている間に、どこからかやってきた縄が、彼を縛り上げる。
「な、なにやってるんですかー!!」
「にゃあ(こっちもたすけてくれけんろー)」
気がつけば、チャピルを含めた全員が、DXエアーの縄によって縛り付けられていた。


セティはDXエアーに、チャピル達を屋上の端に、結わえてしまうように指示した。
こうなるとチャピル達は、もはや身動きを取ることも出来ない。
「ちょっとー、なにやってるんですかー」
「武闘派のくせに何の役にも立たないんですねー」
「にゃあ(やられキャラとは、つまりこういうこと)」
(……俺のせいかよ)


セティとDXエアーの2人は、救出特殊部隊を放置したままどこかへ行ってしまっていた。
いや、DXエアーについては、本当はいるのかもしれなかった。何しろ姿が見えないので、よくわからないのだ。
チャピルは試しに呼んでみることにした。
【チャピル】「おーい、DXエアーサーン」
……返事がない。
DX(猫)は試しに呼んでみることにした。
【DX】「にゃあ(おーい、イケメンで最近ファンクラブも出来たという噂のDXエアーサーン)」
【DXエアー】「なんすか」
割とすぐに返事があった。

【チャピル】「あのですねー、どうしてこんなことをするんです? 早く解放してくださいよ」
【DXエアー】「それはできませんね」
【けいりん】「あのですねー、どうしてこんなことをするんです? 早く解放してくださいよ」
【DXエアー】「我々としては某国での週刊チャオの販売を続けたいですからね」
チャピルは返事の質の違いにイラッとする。
【チャピル】「あの価格では、そんなに利益はでないでしょ?」
【DXエアー】「あの価格で出すから、意味があるんですよ」

【チャピル】「そうか……そうだったのか……」
思わせぶりに深くうなずき始めるチャピル。
【チャピル】「……ニセ週刊チャオと見せかけて、実はこれは、週チャオを宣伝媒体として利用することこそが本来の目的! つまり、冬きゅんとDXエアーとがチャオドルユニットとしてデビューするために仕掛けられた、巧妙な事前広告なのですよ!!」
【けいりん】「そうだったのかー」
【DX】「にゃあ(巧妙すぎて気がつかなかったぜ)」
【DXエアー】「違いますよ!! そんな古い話はもう忘れてください!!」
DXエアーが吠える。

そして彼は、真相を語り始めた。

【DXエアー】「某国は砂漠の中に位置する国。これは良く知られているところですが、ここステーションスクエアに暮らしていると、あの国にはチャオが全くいないという事実を、つい忘れてしまいがちになります。あの極端に乾燥した土地柄では、たとえオアシスに隣接した都市と言えど、水の生命“チャオ”が生きていくには不適当です」
【チャピル】「ではなぜ、ふうりんを……」
【DXエアー】「こんな機会でなければ、編集部が部員を出張させることなんてありませんからね。チャオが暮らせないところだから、チャオを見たこともない人達だからこそ、チャオについてもっともっと情報を伝えていかなければいけない。そう思いませんか?」

DXエアーの言葉に、その場にいた全員が、口をつぐんだ。

【チャピル】「なるほどね……」
【けいりん】「金輪際、ニセ週刊チャオを止めろなんて言いませんから、ここから離してください」
【DXエアー】「できませんね」
【チャピル】「どうして?」
【DXエアー】「だっていま解放したら、チャオドルユニットのこと話されるかもしれないじゃないですか」
【チャピル】「……」

このページについて
作者
チャピル
掲載号
週刊チャオ第344号
ページ番号
364 / 369
この作品について
タイトル
表紙
初回掲載
祝!復刊!週刊チャオ第1号
最終掲載
週刊チャオ チャオ20周年記念号
連載期間
約16年9ヵ月17日