表紙 Last Episode 第5話「あぶないキョーバ」

☆★☆ 週刊チャオの表紙 - Last Episode ☆★☆
      第5話 「あぶないキョーバ」

※チャピル・・・聖誕祭までに話数が足り無さげなので、こんなところに投稿ですよっと
※けいりん・・・なんでだろう、けいりんを見ると、目の前が霞んで見える(キョーバ君談)

【チャピル】「今週はミスディレクションについて話そうと思います」
【けいりん】「ミスディレクションというのは、マジック用語の一つですねー。小説で言うと、本筋とはあまり関係のない伏線を張って、真に着目すべきトリックから目をそらさせるようなことを言うみたいっす」
【チャピル】「つまり某作品の三角関係とか感情レベルとかは、全てミスディレクションだったわけですね。本当に目から鱗、瓢箪から駒でした」

【チャピル】「まあ、某作品のように余りにも伏線置いてきぼりなのもあれなので、実際にはミスディレクション用の伏線も、適当に回収してやった方がいいと思います」
【けいりん】「映画館のチケットの入手元を疑わせておきながら、会話文中でさらっと、そのチケットの入手元に新キャラの存在をにおわせて終わりか…」
【チャピル】「それは適当な伏線回収の例であって、ミスディレクションの例じゃないです><」


~あらすじ~
海外で週刊チャオのパチモンが出版されている。その噂を聞き、現場へ向かったふうりんとキョーバ君。
2人は現地での調査により、ついに、偽週刊チャオの取引を行っているという小さな会社を突き止めた。
そのころ一方、かいろくんはお金がなくて困っていた。


「かいろくーん」
ステーションスクエアの町中で、途方に暮れていたかいろ君の耳に、どこからか彼を呼ぶ声が聞こえてきた。しかし、辺りを見回しても、かいろ君を読んだ人物が見当たらない。しかたがないので、彼は大声で呼び返した。
「だれだああああ!!!!」
「俺ですよ! ここ!」
見るとその声の主がいたのは、すぐ側に立った黄色いビルの遥か上方。窓ふきをしていたゴンドラが、みるみる間に、かいろ君の元へと降りてきた。
その男は掃除夫のコスチュームに身を包み、こめかみを押さえて左右に引っ張ったような顔をしている。いつもそうやって細い目にしているという意味ではなくて、これが彼のデフォルトなのであった。
「お久しぶりですね」
いきなり空中から登場してきた男に、かいろ君は少々驚きながらも、片手を上げて挨拶する。
「久しぶり!! 掃除の途中のようだけど、続けなくていいのかい?」
「ちょっとぐらい大丈夫です! それより聞いて欲しいことがあるんです!」
いきり立ってそう告げた彼は、その高いビルのてっぺんまで思い切り見上げる。つられてかいろ君も上を見る。
目が細すぎて分からないが、もしちゃんと目が開いていたら、とってもキラキラしているんだろうなと思わせる、そんな雰囲気だ。
「聖誕祭に向けてこのビルをライトアップする仕事を頼まれているんですけど、一人じゃなかなか大変でしてね。今、追加の人手を探してたところなんですよ。どうです? やりませんか?」
聞かれて、かいろくんは我に返ったようにうなずいた。
「ああ、うん、それはいい!! ぜひやらせてくれ!!」
「じゃあ、決まりですね!! 設計や器具は屋上の扉を入ったところにあるので、それを見てください!」
それだけ告げると、彼はゴンドラを操作し、またビルの窓拭き掃除の仕事へと戻っていく。
かいろ君は言われた通りに、頭上のプロペラを回転させて、屋上へぱたぱたと飛び立っていった。

高いところに上がると、ステーションスクエアの町並みがよく見える。
高く連なる高層ビルの合間を歩く人々のうねりは、不思議な紋様を描いているように、見えるような、見えなくもないような。
(そういえば、もう、聖誕祭なんだな…)
かいろくんはステーションスクエアのうねりに、どこかうきうきしたものを感じ取っていた。
思えばこうして高いところに飛び上がる機会も、最近はあまりなかったような気がする。テレビ出演などで忙しかったおかげで、聖誕祭の存在にもまったく無関心だったのだけれど。
かいろくんはまだ、テレビ局から請求されただけの額を準備していない。勢い余って必ず払うなどと言ってしまったけれど、今のかいろ君に、どうすればそんなことが出来るのか、全く思いもよらなかった。
(誰かの助けを借りる…?)
しかしそこまで考えて、かいろ君は首を傾げた。もしもかいろくんがチャオだったら、ポヨがハテナに変わるところなのだけれど、さて、こんな話を頼れる人が、ボクの周りにいたっけ?
ボランティア関連の知り合い、週刊チャオ編集部の人々、同じオモチャオの仲間、とりあえず一通り思い浮かべてみたものの、金銭面の悩みを打ち明けられそうな人など、誰一人としていなかった。

「ま、いっか!!!」
かいろくんは、明るい声で、自分自身に言い聞かせた。
ボランティアに従事しているときは、その労働に夢中になれる。悩んでも分からないことよりはそう、目の前にある仕事をやりたい。
それが、かいろくん。


某国。
砂漠地帯にありながら、この国が比較的豊かなのは、その高野部から流れ来る湧き水と、それによって形成されたオアシスの存在故である。
湧き水は河川を形成し、都市を抜け、やがて砂漠へと消えていく。川と呼ぶにはいささか短いものではあるけれど、この都市国家を維持するのには、それで十分だった。
さて、そんな川から五十メートルも離れないところに、ぽつりと、一つ小さな倉庫がある。周りはヤシに囲まれて、農業に用いられているのかと思いきや、実はそんなことはぜんぜんないらしい。ふうりんファンクラブ兼週刊チャオ同好会曰く、あの倉庫が週刊チャオの取引の拠点として使われている。
話を聞いたふうりんとキョーバ君は、早速、その倉庫へと赴くのだった。

ふうりんとキョーバ君とふうりんファンクラブ兼週刊チャオ同好会の五人は、ヤシの木の陰から倉庫の様子をうかがった。電灯は持ってきたけれど、見つかってはまずいので点けない。月明かりだけが倉庫を照らす。
「あの倉庫に?」
ふうりんが押し殺した声で聞く。
「ええ」
「らしいです」
「たしかそうだったような」
「可能性はあるかも」
ふうりんファンクラブ兼週刊チャオ同好会…略してふう部の人達の台詞に、ふうりんは頭を抱えた。
ちなみにあの倉庫の所有者はというと、有限会社WCEと名乗っている。ますます怪しい。
「あれ、そういえば、一人足りなくないですか?」
キョーバ君が思い出したように、ふう部の人達に聞いた。
互いに見合わせるふう部の四人。
「ほんとうだ。リーダーがいない」
リーダーというのは、昼間カフェにいたがっちりした顔の男のことである。
「まー、あんなリーダー、いなくてもいいんじゃね?」
「そうだそうだ」
「あのリーダーがいると、どうも調子が狂う」
「リーダーはいらない子」
口々に、ふう部メンバーは言う。
「リーダーって、嫌われ者だったんですね…」
ふうりんが呟く。
「いや、なんというか」
「ちょっと人間離れしている感じ?」
「例えば我々のチームカラーを決めるときにも」
「五人だから五色にしようということになって」
「でもリーダーは、ニンジャブラックが好きなんだ!って言って聞かないんですよ」
「リーダーならレッドだろ常考」
「それで仕方がないから」
「全員が黒になりました」
「そ、そうなんですか…」

ふうりんが咳き込んだ。
「とりあえず、皆さん、ここまでの案内ありがとうございました。倉庫の調査は私とキョーバ君とでしますから、皆さんはお帰りいただいて結構ですよ」
ふうりんの言葉に、首を傾げるふう部員達。
「あれ、私たちも一緒に行けるんじゃなかったんですか?」
ふうりんは首を横に振る。
「情報提供ありがとうございましたー。たぶん倉庫は危険なので、私たち二人だけで行ってきます! 本当にありがとうございました!」
ふうりんはキョーバ君の手を引くと、足早に倉庫へと歩いていった。当惑気味のキョーバ君。
正直なところ、ふうりんはふう部の輪の中にいるのが、ちょっと苦手だった。
「待ちますか」
誰が言ったか知らないが、ふう部メンバーは各々うなずいた。
「僕はポテチを持ってきた」
「俺はせんべいと魚肉ソーセージを」
「僕は飲み物かな」
「私はアイスクリームです」
ふう部員達はヤシの木の根もとに腰を下ろすと、シートを敷き、お菓子を出し広げ、談笑を始めた。


ふうりんは倉庫の周りを調べる。テニスコート四面分ぐらいの広さ。付近はひっそりとしていて、人っ子一人いないようだ。
「こっちですよ」
入り口を見つけたキョーバ君が、ふうりんに呼びかける。
扉には何か鍵がかかっているかと思ったが、軽く引いただけで開いてしまった。なんて不用心なんだろうと、ふうりんは思う。
倉庫の中を覗き込む二人。窓一つない倉庫の中は真っ暗で、何も見えない。
ふうりんが手に持った懐中電灯を点けた。倉庫に、足を踏み入れる。扉を閉めようとするキョーバ君を、ふうりんが手で制す。
「開けておきましょう。ルートを確保しておくのは大事ですよ」
倉庫の中には、たくさんのボール箱が山積みにされていた。
ふうりんがボール箱に懐中電灯を近づけ、より詳しく観察する。箱の口は包装材で厳重に密封されている。この国は砂漠の中にあるだけあって、非常に乾燥しているのだが、書籍ともなるとこれぐらい湿気に気を使わなければいけないのだろうか。
キョーバ君はきょろきょろしながら、ふうりんの後を付いてきている。
何気なくキョーバ君を振りかえったふうりんは、視界にふとした違和感を感じた。
「扉が…閉まってないですか?」
「確かに…」
キョーバ君が走った。入り口の扉を揺さぶる。開かない。
「開きません!」
ふうりんは懐中電灯を振った。どこの壁を見ても、その扉以外の出入り口は見えない。
「閉じ込められた!?」
ふうりんがさっと懐中電灯を入り口へ向ける。
「キョーバ君!」
誰かがいるはず。
全神経を五感に集中させながら、ふうりんはキョーバ君へと歩み寄る。
誰かがいるはず。
ふうりんはしかし、キョーバ君の無事を確認したところまでは覚えているのだが、そこから先がよくわからない。

このページについて
作者
チャピル
掲載号
週刊チャオ第342号
ページ番号
360 / 369
この作品について
タイトル
表紙
初回掲載
祝!復刊!週刊チャオ第1号
最終掲載
週刊チャオ チャオ20周年記念号
連載期間
約16年9ヵ月17日