=【炎の世界編】=第32話

フレアスはふと上を見上げた。

次の瞬間驚愕と共にある寒さが訪れた。

あの恐怖を感じた時の寒さである。



天井部には大きな穴が開けられていた。
その穴の周りに逆さになってたたずんでいる『ナイトメア』の大群。
初めて見る者なら卒倒してもおかしくないだろう。

そのナイトメア達はフレアスのものとは全く姿が違った。

フレアスは洗脳されながらも心の奥で洗脳されたことに激しく怒りを感じていた。
その結果、ナイトメアはあの様な攻撃的な形となった。

だが今回のものは全く違う。

両手で抱えても足りない程大きい『骸骨』を模した頭。
その下から生える『昆虫のような四本の足』
そして口の部分から出ている夥しい数の『触手』

まさにおぞましい姿だ。
フレアスは『怒り』だったがこれは『恐怖』をモチーフにしたとしか考えられない。

「なんてことだ・・・。
 これだけのチャオが犠牲になったというのか・・・。」
「フレアス、どうやら落胆している暇は無いようだぞ・・・。」

ナイトメアの大群はその目を怪しく光らせ、一斉にチャオルカ達を見た。
チャオルカ達も同時にナイトメアを睨んだ。

時が一瞬止まった。

「この町を壊すことは許さん!」

フレアスのその一言と同時に放った炎が合図だった。
ナイトメアは一斉に降りてきてチャオルカ達を取り囲んだ。

「僕も戦うの?面倒だなぁ・・・。」
「んなこと言ってる場合じゃないだろっ!」

ナイトメアは四本の足を巧みに使い迫ってくる。
フレアスは向かってくるナイトメアに炎を放ち、
焼き払っているが流石に数が多すぎるらしい。息があがってきた。

「く・・・。面倒だ!全て焼き払ってくれよう!」

フレアスは天に向かって手を仰ぎ、叫んだ。

「燃え盛れ!ブラッドクラウド!」

フレアスの手からは大きな炎の塊が放たれ、上空に留まった。
太陽の様なその塊はその場の全てを焼き尽くすことも可能かと思われた。
それ程大きいのだ。
フレアスは先程と違う言葉で再び叫んだ。

「レイン!」

すると塊から雨のようになった炎がナイトメア目掛けて降り注いでくるではないか。
ナイトメア達は避けようとしたが、避けても二発目がすぐに狙ってくるので避けきれない。
次々とナイトメアが悲鳴を上げて燃え上がる。
後には灰は残らず、焦げ跡のみが残った。
これでナイトメアはほぼ殲滅出来た。
しかしまだナイトメアは数体残っていた。
これも片付けようとフレアスは構えた。

「生き残りがいたか。
 まぁいい、第二波だ!」

だがフレアスはそのまま止まってしまった。

「どうした?フレアス。」
「あれを見てみろ・・・リリーだ。」

なんとリリーがナイトメアの触手に捕らえられているではないか。
これでは攻撃をしようにも出来ない。
リリーは苦悶の表情を浮かべ、必死に自分を触手から解放しようとしている。

「くっそー!こんなものぉ!」

そう言ってリリーは触手を引き剥がそうとしたが、ビクともしない。
更には噛み付いたが、歯形が残るだけで何にもならない。

「ちくしょう!俺も能力が自分の意思で使えれば・・・。」

そこでクラゥフが名乗り出た。

「何なら、僕が助けてあげよーか?
 これでも神だからね。それくらいわけないよ。ただ・・・。」
「ただ・・・何だ?」
「お礼はタップリとして貰わなきゃね♪」
「・・・神のくせにがめつい野郎め。
 だけど文句も言ってられねぇからな。頼んだ!」
「そーこなくっちゃ。アハハハハ!」

チャオルカが承諾すると、クラゥフは笑いながらナイトメアに向かって歩き出した。
何を思ったか、クラゥフはナイトメアの目前で立ち止まった。
そしてナイトメアに一言。

「この子は返してもらう。それが僕に決まった運命の一つさ。」

いつの間にかクラゥフはリリーを抱きかかえている。
ナイトメアは今まで捕らえてあったリリーがいなくなって困惑していた。

「そして―
 
 君の運命はここで途切れていたよ。」


ナイトメアは黒い灰となり、バサバサと崩れ落ちた。





つづく

このページについて
掲載号
週刊チャオ第84号
ページ番号
38 / 41
この作品について
タイトル
パラレル・チャオ・ワールド
作者
ドロッパ(丸銀)
初回掲載
2002年10月7日
最終掲載
週刊チャオ第86号
連載期間
約1年19日