=【炎の世界編】=第30話

既に廃墟と化したデビル・炎の国の城。
ナイトメアは地下から出てきたらしく、地下への階段や穴が多数見られる。
ウィン達も去った後の城に一人のチャオが降り立った。

「ふん・・・不甲斐無いな。
 全ての自然属性の能力使えると言っても神の相手にはならなかったか。」

黒い体をした、大きな翼のチャオ。
一体この廃墟に何の用があるのだろうか。
しばらくすると、城の地下に彼は何かを見つけた。
隠し扉の様だ。

「ふむ・・・。」

黒いチャオは扉を開いた。
ギギギと音をたてながら扉は開く。
その中には地の底まで続くような階段があった。
黒いチャオはそれを降りていく。
やがて階段は終わり、真っ暗な部屋に付いた。
黒いチャオは壁をつたい、手探りで何かを探している。

「パチッ」

彼は部屋の電気のスイッチを押した。
光が部屋に広がり、部屋はその姿を見せた。
そんなに広くはなく、何かの研究室の様だ。
だが、一つ疑問がある。
何故地上に電気や研究器具を作ったり使うほどの文明があるのか。
地上は地下に大きく文明の遅れをとっているはずである。
だが、そんな疑問など吹き飛ぶような光景がその部屋には広がっていた。

何らかの機械の上にある円柱型の大きなガラス容器の液体の中に、コドモのチャオが眠ってるのだ。
だが、普通のチャオではないのは体色を見るだけで分かる。
真っ黒なのだ。しかし普通の黒ではない。
「影」なのだ。立体感がない。
光を受けても光らない体。それはあの光すら吸い込むブラックホールを連想させる。

「これが・・・地上と地下の文明の集大成か・・・。
 お前が目覚めればこの世界に更なる混沌の種を植え付けられる・・・。
 その時まで我が宮殿で眠るが良い。」

ボソボソとそう言うと、黒いチャオは下の機械と容器ごとチャオを持ち去った。


        ~~~地下・第4シェルター~~~

「こっ、この小娘・・・なかなかやるではないか。」

第4シェルターでは未だにフレアス、チャオルカとリリーのデッドヒートが続いていた。
リリーのビーチャルに匹敵するであろう俊足は並ではない。
フレアスも息を切らしてきた。
一方チャオルカは遥か後方でハァハァいって走っている。汗もぐっしょりかいている。
しかしリリーは汗一つかかずに普通に物凄いスピードでフレアスについて行っている。

「アハハハッ!私の速さに驚いているのかしら?
 でも私の実力はこれからよっ!」
「く、なんて小娘だ・・・。」

が、何を思ったかフレアスはリリーの実力を見る前に急停止した。

「フフフ、私に抜かされるのが怖いのかしら?」

後ろを見ながらリリーは猛スピードで走って行く。
が、そのスピードは一瞬で0になることになった。
前方を見ていなかったリリーはT字路の壁に凄まじい音をたて激突し、そのままパタリと倒れた。

「・・・結局この小娘は何なのだ、チャオルカ。」
「ただの負けず嫌いだと・・・思う。」

しかしリリーはその衝撃に負けることなく立ち上がった。
額からは一筋の血が流れている。

「まだ、まだまだよ!」
「こいつ・・・もしや真性(のバカ)か?」

二人は立ち上がったリリーを呆然と見ている。
そこに突然笑い声が響いた。
チャオルカ達の後ろにはいつの間にか一人のチャオが立っていた。

「あっはははははは!可笑しいねぇ、君達。」
「コラコラ、複数系で指すな。可笑しいのはリリーだけだ。」
「でも君達がいなければ可笑しくはならなかっただろう?」
「・・・まぁ、それもそうだけど。」
「それこそが運命と言うもの。全ては繋がり合いなんだよ。」
「ところで一体お前は誰なんだ?」

するとそのチャオはニッコリと笑い、お辞儀をした。

「これは失礼。名乗るのが遅れてしまった。
 僕の名前は『クラゥフ=フィネルシス』
 『運命翻弄』の神だよ。」

いくら神にはもう会ったとはいえ、やはり相手が神だと分かると驚きを隠せないようだ。

「あ、あんたが神サマ・・・?」
「何?何か不服でもあーるのーかなー?」

フレイラ以上の軽い口調でクラゥフは教えてくれた。

「神ってのは大体こんなもんだよ。ただ『滅却破壊』の神『グラック=オーグロフ・ヴァルスス』は物凄く暗いけどね。」
「滅却破壊?」
「そう。全てが全て幸福ばかりじゃ何事も変な方向に向かってしまう。
 そこでバランスを取るのが『滅却破壊』の神さ。
 天変地異などを起こし、生物に『不幸』を与える。」
「神ってどのくらいいるんだ?」
「そうだねぇ・・・。
 『天地創造』『運命翻弄』『滅却破壊』『時空流動』『生命誘導』くらいかなぁ。」
「つまり五人か・・・。」

一人でも欠けたら世界は成り立たない。そんな名前ばかりが並んでいた。

「そうだ。ウィンドルフってのは何の神だ?」
「ウィンか。彼はは天地創造だよ。能力を与えるのが十八番さ。」

そんな雑談をしている時だった。
突然大きな揺れがシェルターを襲った。

「な、何だ!?」






つづく

このページについて
掲載号
週刊チャオ第83号
ページ番号
36 / 41
この作品について
タイトル
パラレル・チャオ・ワールド
作者
ドロッパ(丸銀)
初回掲載
2002年10月7日
最終掲載
週刊チャオ第86号
連載期間
約1年19日