=【炎の世界編】=第29話

前回のあらすじ

城跡から現れた夥しい数のナイトメア。
それは森へと広がりどこかを目指しているようだ。
だが、ナイトメアの大群は『チャオが大量に死んだ』ことを意味する。
天使達の怒りは最高潮へ達していった・・・。





「国王よ・・・このナイトメアはどこから出した?」

国王は当然のことのように答えた。

「城の兵士と国民と・・・隣国の民か。
 これだけ集めるのは時間が掛かった。」
「貴様ァ!」

アルガウフが飛び掛ろうとしたが、ウィンが制止した。

「このナイトメアはどこへ?」
「チャオのいるところ全てだ。
 全てのチャオを狩るべく世界中で蠢くだろうなぁ。
 もちろん地下の世界まで到達するだろう。」

「君はチャオの命を何だと思っているのだい?」

ウィンは落ち着いている。
落ち着いているが風が起こるほどの、迸る凄まじい怒りを天使達は感じていた。
表情も、怒りを外に出さないように必死のようだった。

「只の命だ。材木の元となる木と同じ命だ。
 木は家を作るという計画の為にその命を犠牲にされる。
 だから私も同じことをしたに過ぎない。」
「だがチャオは意思を持ち、心を持っている。
 木は恐怖を感じないが、チャオは恐怖を感じるのだぞ!
 君にナイトメアを吸い出されるときの恐怖は如何程だったかも想像出来ない。」
「・・・貴様はチャオの命だけをひいきするつもりか?
 全ての命は平等であるべきだ。」

それを聞いた時、ウィンの『怒りを抑える』という束縛は解かれた。




西の塔ごと王はきえた。


攻撃ではない。『消えた』のだ。


跡も無い。『消えた』のだから。




「が、ガルガン神様・・・。これは一体・・・?」

驚きに打ちのめされいているアルガウフはウィンに聞いた。

以前と全く同じに、静かにウィンは答えた。



「分子レベルまで、王を中心に50メートルの物質を全て分解した。」



驚くほどウィンは残酷になった。
一瞬だけ。
怒りを解き放つこととなった原因は皮肉にも「全ての命は平等であるべきだ」という王の言葉だった。

「彼は全て平等であるべきと言った。なのでその通りにしてあげたのさ。
 さぁ、ナイトメアはこうなっては只の怪物だ。掃討作戦に入るよ。
 グリフェルス、フレイラ、二人の治療を頼む。」

二人はうなずき、庭へと降りていった。

「しかし・・・あれだけの数のナイトメアを我々だけで掃討するとなると、多大な時間が掛かってしまいますよ?」
「もちろん僕らだけじゃないよ。
 各国の部隊に手伝ってもらおう。」
「確か・・・『騎士団』『神封隊』『十二使徒』『黒牙』でしたっけ?」
「うん。でも十二使徒も王にナイトメアを取られていると思う。
 だから生き残っている者だけになる。」
「今無事が判明しているのは、元デビルチャオのフレアスのみです。」
「彼はダークチャオになっただけで、実力は変わりないようだよ。」
「では、収集しましょうか。」
「ここでは場所が悪い。中立国リフェーロへ移動しよう。」


一見、王の野望は終わったかのように見えた。

だが、野望は終わっていない。

何故なら王もまた操られていたのだから・・・。






続く

このページについて
掲載号
週刊チャオ第82号
ページ番号
35 / 41
この作品について
タイトル
パラレル・チャオ・ワールド
作者
ドロッパ(丸銀)
初回掲載
2002年10月7日
最終掲載
週刊チャオ第86号
連載期間
約1年19日