=【炎の世界編】=第28話
前回のあらすじ
デビル・炎の国の王を討伐すべく、天使達は攻撃を始めた。
城は半壊させたものの、王らしき人影は見当たらない。
だがその時、心に直接響く深い声を持つ謎の人物(チャオ)が現れ・・・。
「ガルガン神様!」
「やぁ、やっぱし暇なんで来てしまったよ。」
アルガウスは、何でこの人こんな暇なんだ、と思いながらも現状を説明した。
「ふぅむ。そいつは実体じゃないね。」
「実体じゃないと申しますと?」
「光の能力さ。光の反射を捻じ曲げているのさ。
つまり本体は別の場所にいる。」
「では、声はどうなのですか?この場にいなければ聴こえるはずがありません。」
「声は・・・風の能力さ。空気の振動をいじって方向と距離を誤魔化したのさ。」
確かに、ウィンの言うことが確かなら一応説明が付く。
しかし、気配を感じさせるというのは、能力では無理だ。
ウィンはそれについても説明をした。
「彼はそれほど強い、ということさ。」
「と、いいますと?」
「とても強い殺気は感覚を麻痺させるということさ。
現に君達ほどの実力者が、彼の能力に騙されたじゃないか。」
「ふむ・・・。で、あやつは一体誰なのですか?」
「決まっているじゃないか。デビル・炎の国の国王だよ。」
「やはり・・・ですか。」
「何?そうだったのか?」
やはり、こういうタイプは話を聞いていないというのが、テンペストで証明された。
「ところで王サマは何処行っちゃったのぉ?☆」
気付くと、もう既に王の気配は無かった。
「しまった、逃げられてしまったか!」
だが城の方から、あの静かで暗く、心に直接響く声が再び聞こえてきた。
「誰が・・・逃げたって?」
王は半壊し、もはや瓦礫の山と化した城で唯一無事だった西の塔の屋根に座っていた。
それを見つけると、やはりジュエアルフとテンペストは突撃していった。
「喰らえぇぇぇ!」
叫びながら二人はかなりのスピードで王へと向かっていく。
だが・・・。
「他愛もないな・・・。」
王は二人に手のひらを向けると、腕を魔方陣のような円が囲み、光を放ち始めた。
そして、円の前にある紋章が浮かんだ。
そう。
チャオルカの額のそれと全く同じものだ。
王は叫んだ。
『羅刻炎!』
叫ぶと同時に魔方陣は一層光を増し、眩しくて凝視は出来ぬほどまでになった。
そして・・・魔方陣は直径10メートルはあろうかという巨大な炎の弾を二人に向け放った。
二人は高速で王に向かっており、もはや避けることは不可能だった。
真昼を越すかと思われる光が広がり、耳を突き破るほどの爆音が辺りに響き渡った。
弾は二人を直撃し、二人は城の庭へと落ちていった。
ウィンですら、助けることは間に合わなかった。
「ジュエアルフ!テンペスト!」
アルガウスは声を張り上げ叫んだ。
しかし二人の反応は無く、辺りはしんと静かなままだ。
「貴様・・・。よくも二人を!」
「感情的になるのは良くないよ。アルガウス。
それに彼等はこれくらいじゃ死なないよ。」
ウィンはなだめるようにそう言った。
だが、自分の仲間をやられたアルガウフはおさまるはずも無く、すぐさま反論した。
「・・・お言葉ですがガルガン神様。
彼等は治るとはいえ、多大なダメージを負ったのですぞ!?
その一言で片付けるのはあまりにも彼等が・・・」
ウィンはアルガウフが次の言葉を言う前に、
アルガウフの口を押さえ、微笑んだ。
「信頼しているから安心出来るんだよ。」
アルガウフはやれやれといった表情でウィンを見て、次に王を睨んだ。
「とにかく・・・貴様を倒す!」
王はため息を付きながらアルガウフの方を向いた。
「そういきり立つな。今のはまだ計画のプロローグに過ぎない。
そう、『炎の世界計画』のプロローグにな・・・。
さあ、全ての始まりだ!出て来いっ!」
王が合図すると、夥しい数の異形の何かが城の跡から出てきた。
真っ赤な色をした何かが・・・。
「な、ナイトメアだと!?」
そう。その何か、とはナイトメア。その数は数百万にものぼる。
そのナイトメアの大群が城の跡から森へと広がっていく。
ナイトメアの大群はあることを意味している。
前に言っただろう。
ナイトメアはチャオの心に住んでいて、共生していると。
そして
『ナイトメアがいなくなったチャオは、強靭な精神力が無い限り死んでしまう』と。
続く