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「おはよ~」
「あ、おはよ」
「今日で小学校生活も最後か~」
「何言ってんだよ~。来年の台詞だろうが~。まだ5年生だぞ、オイ」
しまった。会話についていけない。記憶の一部とかもらえないものなのだろうか。まぁ、死んだはずなのにこうして生きているだけでも十分有り難いといえるが…そして、なんとか相づちなどで通しながら時間は少し経ち、終業式とやらに。

「え~。1年生は中学1年生に、2年生は中学2年生に、3年生は中学3年生に、4年生は高校1年生に、5年生は高校2年生に、6年生は大学の助教授になるわけですがー」
「校長~センセ~、飛び級させる気なんですか~?」
「6年分以上は飛び級させる気じゃ」
……?中学?大学?飛び級?何だそれは。要するに、人間はチャオのようなお気楽幸せ人生ではないということか。チャオがサバイバルゲームをするほど辛い人生なのだろう。あぁ、チャオでよかった。今では人間だがな。お、別の人に替わって何か言ってるぞ。

「え~。まず、交通事故に気を付けてなー。みなさんの保健は全て解約させてもらいましたー。あと、火災保健も解約させておいたから火には気を付けるようにー。あ、またどっかの保健に加入しようと思っても無駄だぞー。この休み中は絶対加入できないようにしてあるからなー。休みが終わったら解約はなかったことになるから安心しろよー」
会場がざわつく。そんなに大変なことなのか?火災…燃えるってことか。事故とかで燃えたら保健とやらでどうにかなるってことなのか?

「後、宿題が無いからってゲームばっかしてちゃ駄目だぞー。時々先生は昼間に誰もチャオガーデンにいなかったらチャオガーデンに火を放つからなー。ちなみに火災保険は当然効かないぞー。コンボってやつだなー」
「火を放つってあり?」
「きっと、政府から許可もらってるんでしょ。ここの学校、政府と何かの関わりあるみたいだしー」
俺の独り言に隣の女子が反応する。ってか、政府とやらは放火するのを簡単に許すのか?人間の世界ってよくわからねぇな。

「そんじゃー。これで終業式おわりまーす。各自寄り道しないで教室まで行けよー。時々通信簿もらわないで逃げるやつとかいるからなー。逃げた場合はチャオガーデンが無くなると思えよー」
ほとんど脅しのような台詞で終わった終業式とやら。チャオガーデンを放火することで脅すのはチャオとして(今は人間だが)許せないものだ。んで、教室に戻る。そして、先生が来るのをただ待つのだった。しばらくして、見た事のある顔が教室に入ってきた。

「はーい。みんなー。通信簿渡すぞー。成績によっては帰ったらガーデンが燃えているかも知れないから気を付けろよー。一番、青赤 黄色(アオアカ キイロ)~」
俺は心の中で叫んだ。「アイツだー!!放火する先生だーー!!」そう。あの先生なのだ。チャオの天敵。怖い怖い。ん…?そういえば、俺…じゃなくて飼い主の名前って何なんだ!?うひゃー。問題外だー。ってか、青赤 黄色ってなんちゅう名前だ。

「十八番、物欲 有気(ブツヨク ユウキ)~」
「おい、物欲。呼ばれてんぞ~ぃ」
「ん…あぁ~」
俺の…飼い主の名前はブツヨク ユウキか。ブツヨク?どういう意味だ?チャオは勉強しないからなぁ。文字も読めない。辞書とかいうやつがあっても調べられないな。

「ラスト、三十八番~。輪輪 和和(ワワ ワワ)」
そして、その後、あいつの脅し混じりの話(勿論放火で脅しているのだが)をうんざりするほど聞き、そして下校した。俺はすぐにチャオガーデンへ行った。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第131号
ページ番号
3 / 5
この作品について
タイトル
「俺の一日人間体験記」
作者
スマッシュ
初回掲載
週刊チャオ第131号