＜その２＞

＜その２＞

森を歩きながら、田島は考える。
【田島】（せやけど、このまま進んでどうにかなるもんなんか・・・？）
まだ何も手がかりは無い。・・・その時、彼は襟を後ろから掴まれた。
【田島】「うぐぐぐぐっ！！・・・な、何すんねん！！」
掴んだのは、無論河村。
【河村】「アホかいな。よく前を見ぃや！」

「？」と思い田島がよく前を見ると、そこは・・・崖。
【田島】「う・・・悪い・・・」

そして、崖の下には街が見える。決して大きい街ではなく、どちらかといえばファンタジー世界お約束の街だ。

気がつくと、２人の横では、街の住民と思しきチャオが何匹か、崖の上から飛び降りて街に向かっていた。
【河村】「そうか、チャオは飛べるんやったな・・・」

すると、突然隣から泣き声が。２人が近づくと、泣いているのは子供のチャオ。
【田島】「えっと・・・どないしたんですか？」
横にいる、付き添いと思われるミズチャオが答える。
【ミズチャオ】「≪その子は、飛べないんです≫・・・」
【河村】「回り道とかは？」
【ミズチャオ】「あるにはあるんですけど、ものすごく遠くて・・・人間の皆さんは苦労してますね。」

・・・その時、田島の心の中に突然、ある台詞が響いた。
≪ソニック｢GO MY WAY!!｣ ≫
そして、その台詞に突き動かされるように、咄嗟にある行動に出た。
泣いてる子供チャオを抱え上げ、突如走り出し・・・飛び降りた。

【河村】「！？」
【チャオ】「ええっ！？」

【田島】「≪これはもはや愛だああああああああああああああああああ！！≫」

・・・という意味不明の叫びを残して。



・・・・・・
【田島】「・・・ん・・・俺・・・生きてる・・・？」
気がつけばそこは、白い天井。どうやら、病室らしい。
横には、河村の姿。
【河村】「！？　気がついた！大丈夫！！？？」
田島のベッドに駆け寄る河村。
【田島】「おう、俺の心配してくれたんか？」
【河村】「そ、そ、そんなんとちゃうからな！同じ世界の人間を異世界で見殺しにできひんっちゅーだけやで！！」
必死で否定する河村。・・・が、そこに、飛び降りる際に子供チャオの付き添いをしていたミズチャオが入ってきて、こう言った。
【ミズチャオ】「気がつきましたか。この娘、飛び降りてから今日まで３日３晩、ずっとここで見守ってたんですよ。」
・・・最早言い逃れ不可能。顔を真っ赤にした河村は、
【河村】「◎▽×Ω☆♯～！！！」
意味不明な叫びを残して部屋から逃げるように出ていった。

入れ替わりに、医者チャオが入ってくる。
【医者チャオ】「しかしおまいさんの体は不思議じゃのう・・・」
【田島】「？」
【医者チャオ】「あの崖から飛び降りたというのに、多少の打撲で済んどる。ま、丸３日気を失っとったけどな。」
【田島】「ホンマかいな・・・」
【医者チャオ】「ああそうそう、おまいさんが抱いとった子供チャオじゃが、おかげで空に対して恐怖心が無くなって飛べるようになったそうじゃ。」
それに合わせて、隣のミズチャオが頭を下げる。
【ミズチャオ】「本当にありがとうございます。あなたの勇気ある行動のおかげです。」
【田島】「いやぁ、役に立てて何よりです・・・」

【医者チャオ】「で、じゃ。」
【田島】「？」
【医者チャオ】「ワシはこう結論付けた。おまいさんは衝撃に強い特異体質を持っとる。これを名づけて≪ネオアームストロング≫…」
と、途中まで言いかけたその時、部屋にカケチャオが飛び込んできた。
【カケチャオ】「お医者さん、大変なんだ！この前の≪ライトカオス死亡事件≫の犯人が見つかったんだけど、３丁目の一軒家に立てこもりやがった！」
【医者チャオ】「なんじゃと！？」
医者チャオは慌てた様子でその場を立ち上がり、田島そっちのけで急ぎ足で部屋を出て行ってしまった。ミズチャオもそれに続く。・・・残されたのは、田島一人。
【田島】「お、おい！」
と、思わず起き上がる。・・・が、どこも痛くない。医者チャオに特異体質と言われたのはどうやら本当らしい。

【田島】「くっ、寝てる場合と違う！あのお嬢様も探さんとあかんし！」
田島はそのまま立ち上がり、３匹の後を追いかけるように部屋を出て行った。


３丁目の一軒家、らしき場所。
田島が着くと、そこには人間・チャオ問わず多数の野次馬が取り囲んでいた。

窓から犯人と思われるダークチャオが顔を出す。
【ダークチャオ】「こっちは人質もいるんだ！解放して欲しかったら逃走資金を用意しろ！！」
これではなかなか手が出せない。

さて、そのダークチャオが建物の中へと消えると、人間１人とチャオ３匹がいる人質がいる部屋へと向かった。
そして、手足を縛られた人間に向かって、ナイフを突きつけながら一言。
【ダークチャオ】「おい、人間の女。・・・≪ちょっと面貸せや≫。」

・・・その『人間の女』とは。
【河村】「ぐっ・・・！」
河村朋子。

＜続く＞