キーワード小説【お嬢様VS特異体質】
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【実況】『さぁ、甲子園の阪神−巨人6回戦、≪9回裏二死満塁から≫バッターは四番の金本、一打サヨナラのチャンス!』
【観客】「かっとばせー、かーねもと!!」
今日も満員の甲子園球場に阪神ファンの大歓声がこだまする。
それをテレビに齧り付いて応援する少年が、今回の主人公。
キーワード小説【お嬢様VS特異体質】
【実況】「ピッチャーは抑えのクルーン、カウントツースリーから第6球・・・打ったぁーっ!!センター前に抜けてサヨナラーっ!!!」
その瞬間、甲子園が揺れる。
「っしゃああああ!!!」
自分の部屋で叫ぶ今回の主人公は、田島雅之、17歳。甲子園の近くに住む、典型的な阪神ファン。
♪六甲颪に颯爽と~ 蒼天駆ける日輪の~ 青春の覇気、麗しく~・・・♪
六甲おろしの大合唱が響くテレビをつけたまま、彼はパソコンの方を向いた。
【田島】「なになに、≪動画サイトに自分のチャオを晒される≫って・・・何やってんだこいつ・・・」
ネットサーフィンをしながらつぶやく。
・・・彼のもう1つの趣味、それがチャオ。
チャオ育成日記をブログに書いている。(但し、ブログの内容はチャオだけではない)
そこに、こんなコメントがあった。
『≪最後の招待状「目的:かーちゃん二頭の狩猟」≫
もし来なかったら、≪明日の朝の晩飯にしてやる~。≫』
【田島】「・・・なんやこれ?
ってか、≪俺のブログに変なコメントした奴は誰だ!≫」
と、管理画面にログインし、『削除』のボタンを押したその瞬間。
・・・彼は、異世界にいた。
【田島】「な、なにいいいいっ!!??」
そこは、森と草原が広がる世界。
一体どうすればいいのかサッパリ分からず、呆然とする田島。
その時、突然彼の隣に、ツインテールの少女が現れた。
【少女】「!?・・・ど、どうなっとるんや!?」
どうやら、自分と同じ状況になっているらしい。
咄嗟に「協力すべき」と思った彼は、彼女に話しかけた。
【田島】「あ、あのー・・・」
彼女の名前は、河村朋子。とりあえず、自分の状況を説明する田島。・・・だが。
【河村】「うっさいわ、こんなんウチ一人で何とかしたる!」
あっさり拒否されてしまう田島。
と、河村が歩いていこうとすると、森から突然、チャオの姿が現れた。
【田島】「!?」
【河村】「ちゃ、チャオやて!?」
そのチャオはこちらの方を見ると、ポヨをハテナマークにするが、すぐに別の方向へと歩き出した。
・・・どうやら、ここはチャオがいる世界のようである。
【田島】「お前、チャオを知ってんのか!?」
と、田島が再び河村に聞く。
【河村】「せや、チャオ知ってて何が悪いねん!」
・・・お見事なまでの逆ギレである。
【田島】「い、いや・・・そりゃそうやろな・・・チャオ知らんかったらこんなところ来んやろうしなぁ。」
しばらく、黙る2人。その後、河村がこう言った。
【河村】「ど、どうしてもってんなら、ついてきても構わんからな。け、決して協力とか、そんなんちゃうからな!!」
【田島】「は、はぁ・・・」
・・という訳で、2人でどうなってるのか探ることになった。とりあえず、森の方へ出発。
森の中を歩きながら、2人は話をする。
【田島】「どこに住んでるん?関西弁っちゅーことは関西圏よな?俺は西宮やけど・・・」
【河村】「気安く話しかけんといてくれる?・・・西宮なら河村グループを知らへんとは言わさへんで?」
【田島】「なっ・・・!?」
河村グループ。関西圏で有名な大企業グループの1つである。無論、田島も知っている。
・・・つまり、彼女はそこのお嬢様なのだ。
【田島】「つ、つまり、≪ツンデレでツインテールのお嬢様≫・・・!?」
【河村】「ツンデレは余計や!」
げしっ、と蹴りを一発。田島はうずくまりながら、
【田島】「≪俺は巫女の方が好みなんだ・・・・・。≫」
とつぶやいたとか。
・・・今度は、河村が話しかけてきた。
【河村】「見たところ、ウチと同じぐらいの年みたいやけど・・・高校は?」
【田島】「あーいや、学校は行ってないんやけど・・・」
【河村】「それじゃ、お仕事は?」
【田島】「≪えー、私はですねー、ええ。そう、まさにその仕事をどこかに落としちゃった人でしてー。え?無職?ニート?いえいえいえ違います違います。落としただけですよ。落ちちゃったんですよ。あー、どこにいってしまったんですかねー、前々世あたりで落とした気がするんですがねえー。≫」
・・・しばし、沈黙。
【河村】「ニート、と・・・」
【田島】「あ!いや!決してニートなんかでは・・・がふっ!」
蹴り、本日2発目。
【河村】「こういうタイプの人間は認めようとせんから嫌いなんや・・・」
【田島】「はい・・・ニートです・・・」
河村がさらに畳み掛ける。
【河村】「とりあえず、気安く話しかけたら半殺しな。あと、ウチのことはお嬢様とお呼び。」
【田島】「は、はい・・・」
こうして、河村は≪田島に、お嬢様と呼んでもらえる事になった。≫
<続く>