<その3>
<その3>
さて、何も知らない田島は、先ほど医者チャオが言っていた特異体質について考えていた。
【田島】(なんかよく分からへんけど・・・この特異体質、っちゅーので何とかなるんでないんか?相手はチャオみたいやし・・・)
そう思いついた瞬間、彼は警察の合間をくぐり抜け、一軒家へと飛び込んでいった。
【警察】「おい、そこの君、ちょっと待ち・・・」
一軒家の中。まだ犯人には気づかれていないようだ。物音を消して、人質を探す。解放が先だ。
・・・が、その時、突如2階から降りてきた人間と、目が合った。―――河村朋子。
【田島】「!!!」
【河村】「!!!」
河村は驚くが、すぐにナイフを構えた。
【田島】「な、何のつもりや!?まさか―――」
【河村】「悪いけど、ちょっと黙ってもらうで!」
【田島】「ほ、≪本当に裏切ったんですか!?≫」
河村は答えずに、ナイフを持ったまま田島のところへ飛び込む。
が、包丁すらロクに持ったことが無いお嬢様の河村に、ナイフなど上手く扱えるはずも無かった。
すぐに田島に見切られ、右腕を掴まれる。ナイフは宙を舞い、壁に刺さった。
河村は力が抜けたようにその場にへたり込む。
【河村】「ごめん・・・犯人に脅されてな・・・解放された人質のフリをしてお金を盗って来いって・・・」
【田島】「大方そんなことやろうと思ってたけどな。ケガはないか?」
【河村】「でも、なんでこんな場所に一人で・・・?」
【田島】「≪理由なんて聞かないでくれ……だって、理由なんて要らないだろ。≫」
その時、物音に気がついた犯人が、2階から降りてきた。
【河村】「しもた!」
【ダークチャオ】「くっ、あっさり裏切りやがって!≪お前達は腐ったメロンなんだ!≫うおおおお!!!」
ダークチャオが飛び込み、構える暇の無かった田島に対して一発殴り込む。・・・だが、
【田島】「≪ふんっ!その程度の攻撃じゃ、俺はたおせねぇぜ≫!」
【ダークチャオ】「なっ!?」
・・・特異体質が幸いした。さらに、人間とチャオでは覆せない体格差がある。
【河村】「よくもウチをコケにしてくれたな・・・」
【ダークチャオ】「ひ・・・ひいいいっ!!!」
ダークチャオの敗因は、ナイフを河村に渡してしまったことだろう。あっさりと河村の蹴りを食らってノックアウト。
【長老チャオ】「本当にありがとうございますじゃ。そこで、なんじゃが・・・」
【河村】「何ですか?」
【長老チャオ】「これに参加してみる気はないかの?」
と、長老が1枚のポスターを見せた。
『第123回格闘トーナメント!≪史上最高の頂上決戦を制すのは誰だ!≫』
【長老チャオ】「賞金はたっぷり出るそうじゃぞ?」
顔を見合わせ苦笑いする2人。その瞬間、なぜか長老に後光が差した―――ように見えた。
長老の後ろに、突如光の扉が現れたのだ。
【長老チャオ】「・・・どうやら、お主達が帰るための扉のようじゃのう・・・」
長老が寂しそうに言う。2人はほっとため息をついた。
【田島】「それじゃあ、≪もう、行かなきゃ≫いけないと思うんで。色々とありがとうございました。」
【長老チャオ】「うむ、達者でな!」
2人は光の扉を開く。
・・・そこを抜けた先は、意外な場所だった。
【河村】「な、何やここ!?」
【田島】「これ・・・甲子園のグラウンドやないか!!」
なぜかバックスタンドの時計は、深夜2時を指していた。恐らく、向こうとこちらでは時間の進み具合が違うのだろう。
とにかく、深夜2時というのはラッキーだった。誰もいないうちに甲子園を抜け出し、無事に自宅に帰ることができた。
―――数日後。
【河村】「ま、まぁ、どうしても、って言うんやったら、その、何や、しょうがなく付き合ってやらん事も、な、ないで?」
【田島】(いやだから俺は何も言うてへんのに・・・)
・・・どうやら、彼女が付き合ってくれるらしい。ツンデレっぷりは相変わらずである。
ただ、相手は河村グループのお嬢様。婿入りしてしまえばニート脱出も夢ではない。
彼は、後で『≪それは、夢のようなお話だったんです≫』なんてことにならないようにしなければ、と心の中で思った。
・・・・・
その頃、甲子園から直線距離で約50km離れた京都市内某所―――
【ホップ】「♪宮島さんの神主が 御神籤引いて申すには 今日もカープは勝ち、勝ち、勝ち、勝ち!♪
・・・今年も5位かなぁ・・・」
【エルファ】「はいそこの作者、出しゃばらない。」
【ホップ】「≪作者がそうしたかったからさ・・・・・。≫」
<おわり?>