第6話 再び旅へ
「このカードは、君の母君のその一部だ」
「一部?」
「これと同じカードが複数発見されている。しかも、このカードをキャプチャしたチャオは確実に転生ができるという噂がある」
「暴れているチャオたちはそれを血眼になって探しているわけだよ。みんな、転生したいからな」
トルネお兄様の連れていたチャオが口を開きました。
そのチャオは足が鳥の足になっていました。
小動物をキャプチャした時のものよりも随分と大きな足です。
きっとカードになった、大きな鳥をキャプチャしたのでしょう。
「あなたは?」
「俺はラシユ。転生カードには興味ないんで、トルネの味方をしている。まあ、トルネやこの町の人には世話になってきたからな。その恩返しってわけだ」
「あなたは転生したくはないの?」
ラシユは、馬鹿にするように笑いました。
「俺はそんなカードがなくたって転生できるくらい幸せだぜ。それが正しいチャオの生き方ってもんだろ」
「なるほどね」
これだけ自信満々に幸せと言い切れるのは羨ましいことです。
そしてチャオワールドのチャオの中には、こんなふうに幸せを確信できないチャオがたくさんいるということなのでしょう。
「それにしてもあなた、喋りが達者なのね。城にはあなたほど上手に人の言葉を話せるチャオはいなかったのに」
「それは教育が悪いからだろうよ。チャオは体が小さいから馬鹿だって思うのかもしれないけどな、チャオの頭脳は人間並か、それ以上なんだぜ。吸収力が違うんだ、吸収力が」
「ああ、そうなの」
口が悪いのも、教育の成果なのでしょうか。
確かに私はチャオの知能について、認識を改めなければならないようです。
先ほどのトロフだって、見事に人間の振りをしていました。
チャオワールドのチャオは、賢く育っています。
「ヘネト。私が集められたのは、これだけだ」
トルネお兄様は私に二枚カードを渡しました。
真実の愛のカードです。
これで、私の手元にある母のカードは三枚になりました。
「母のカードは何枚あるのでしょうか」
「それはわからない」
「そもそも集めれば元に戻るのか? 人をカードに閉じ込められるからって、カードから人が取り出せるとは限らないだろ」
ラシユの言うことはもっともです。
でも私は集めるしかないのです。
そうしなければ、真実の愛のカードはどんどんキャプチャされていってしまい、母を元に戻すことが不可能になってしまいます。
カードさえ集めておけば、カードから人を取り出す方法はその後で見つければ済む話なのです。
「なんと言われようとも、私は母のカードを集めようと思います」
「なら急ぐんだな。既に何枚かはキャプチャされてるだろうからな。早く集めないと、命も助からないだろうぜ」
私は頷きます。
「そういうことなら、私とラシユも一緒に行こう」
「え、マジかよ」
ラシユは嫌そうな顔をしました。
「私も君の母君を助けたい。あの人は誰に対しても常に優しい、心から尊敬できる人だった。それに、カードをキャプチャできるラシユがいれば、敵の武器を利用できるだろう?」
「お願いします」
私はトルネお兄様の申し出を素直に受けました。
チャオワールドに暮らしていたトルネお兄様がいないと、これからの旅に不安が生まれます。
私たちは急がなくてはなりません。
ラシユも、なんだか頼りになる感じがします。
こうして私たちは仲間を増やし、次の町へと歩き始めたのでした。