(後編)ページ8

今日の4時限目、つまりお昼前の授業は校庭での体育となっており、その内容はクラスでサッカーをするというものであった。
男女別に別れ、男子の中でAチームとBチームに分かれてゲームをする事となった。女子もまた同じようにAとBに別れて。
ウチのクラスの男子は合計18人いて、2チームに分かれると勿論9対9になる。
定められたルールより若干少ないものの、そんなコトは瑣末な問題に過ぎなかった。
問題は、僕がAチームに入り、木戸がBチームに入ったというコトだ。

本来なら特に問題視するべき事態ではないはずだが、木戸の性格に問題があった。
何を隠そう、木戸はサッカー部員なのである。そして目立ちたがり屋なのである。

木戸は、周りに合わせて手を抜くなどというコトは微塵も考えず、Aチームの素人MF及びDFをごぼう抜き。
あっという間に最後の砦――すなわちGKである僕の目の前までやってきた。
最後の砦といっても、ポジション決定をジャンケンに委ねた結果である。信頼感は海岸に築かれた砂のお城並かそれ以下だ。

が、砂の砦のままで終わるのもしゃくである。

僕は両手両足を少し広げて身構えた。
無駄な抵抗に終わるかもしれないが、ココは意地を持って木戸のシュートを全力で止めにいく。
木戸は堂々と真正面から突っ込んできた。ボールを意のままに操り、普通に走っているのとなんら変わりないスピードでドリブルしてくる。
そしていよいよ、木戸はシュートの体勢に入った。右足を豪快に振りかぶって。

僕は木戸が蹴ると同時に、右に跳ぼうとした。
木戸は右利きだからきっと右足で蹴るだろうし、狙いやすいゴールの左側を狙ってくると山を張ったのだ。
ココでアウトサイドキック等の高等技術を使われたり、意表をついてど真ん中シュート等されたりしたら一巻の終わりだが――

木戸の蹴ったボールは、僕の読みどおりゴールのやや左へ。地を這うグラウンダーシュートになった。
僕はそのボール目掛け跳躍…したのだが、自分のイメージしたものとはかけ離れた跳躍となってしまった。

その原因は、解けていた右の靴紐である。

左足で右の靴紐を踏んづけてしまったため、素人ながらにがんばって跳ぼうとした僕は、跳んだというよりコケたというほうが正しい格好となった。
なまじ張り切って勢いよく跳ぼうとしたために、予想外の力が働いた際のバランスの乱れは大きく、崩れた体勢で地面に激突すると同時に体中に痛みが走った。


が、発射された弾丸は止まらない。


無様にゴール前で倒れ付した僕に向かって、木戸のグラウンダーシュートは空気を切り裂きながらやってくる。
僕はとっさに両手で顔を庇おうとしたが、弾丸シュートはそれすら許さないスピードで僕の顔面を――


げしっ


射抜いた。

「やっべ、悪ぃ!大丈夫か!?」

木戸のその声を聞いたのを最後に、僕の意識は途絶えた。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第219号
ページ番号
14 / 16
この作品について
タイトル
~呪いをかけチャオ~
作者
宏(hiro改,ヒロアキ)
初回掲載
週刊チャオ第218号
最終掲載
週刊チャオ第219号
連載期間
約8日