<後編>

ある日。

ダーカのところで練習していた俺に、
ダーカがいきなり俺に話しかけてきた。

―おまえ、世界の頂点に立ってみないか?
―・・・何?ま、確かに立ってはみたいが・・・。
―まだ、そんな実力無い・・・と思っているだろ?
―当然じゃないか。
―おまえはいま、日本でミニマム級暫定一位なんだ。

そう、出場権がある。

―・・・何ぃ?

俺は顔をゆがませて、軽蔑するかのように、
ダーカを見た。
だが、それは本気以外の何物でもなかった。

―おまえはがんばってここまで上り詰めてきたんだ。

行けるところまで行くんだ。おまえにはその権利・・・いや、

義務があるんだ。



そして、運命の朝。

Good morning ... Mr.Fear

目が覚めたかい・・・「恐怖」よ。
俺は今日、世界のトップに上り詰めるときがきた。
だが、おそうのは恐れ、恐れ、恐れ。

俺はダーカのところを訪れた。

―・・・行ってくる。
―そうか。やってこい。勝つんだぞ。
―・・・いや、わからねぇ。

すると、その言葉を言った瞬間、
ダーカの変化はしないが剣幕が急に変わった。
そして、木を思い切り殴って怒鳴った。
実が地面にぼとっと落ちる。

―恐れてるんじゃねぇ!

いいか?おまえはどん底にいた。
これ以上下に行けないくらい下にいただろ!?
馬鹿にされただろ!?
おまえはそのままでいることに「恐れ」を感じたか?

違うだろ?

おまえはあきらめていたから恐れが無かったわけじゃねぇ。
上に行けると思っていたから「恐れ」が無かったんだろ?

そして、この木。

あのとき一撃で落としたとき、おまえは笑っただろ!?
俺は感づいていたことを確信したさ。
こいつは

「もっと上に上に行きたい」

んだなってな!
おまえは、昔からこの気持ちを持っていたんだ。
気づいてなかっただけだ。
目覚めろ!
前も言っただろ?おまえは上に行く権利・・・いや、

義務があるんだ。

さぁ、恐れるな!行け、行くんだ!地の果てまでな!

―・・・サンクス。

俺は一言だけ言ってダーカの方を向かず練習場から離れた。
大量の涙があふれていた。



そして、運命の時。

ゴングが鳴る。

第1~6ラウンドはふつうに進んだが・・・。

第7ラウンド。
相手の強烈なフックが飛んできた。
俺はまともに受けてしまった。
こんなこと初めてだった。

これが、世界の実力か!?

俺は落ち着きが無くなっていた。
俺はどんどん、まともに食らっていく。
そこで、ゴングが鳴った。
時間に助けられたが、何とも哀れだった。

―しっかりしろ!いつものおまえじゃねーぞ!

前まで馬鹿にしていた友人が俺を支えている。
だが、それでも何かが見つからない。
俺は何かを忘れている・・・?

すると、見慣れない誰かが俺に言った。

―無限は無い!隙を見つけろ!それが出来るのはおまえだけだ!

・・・無限?

・・・はいつか終わる・・・そして、そこに・・・がある

刹那、いつかのダーカの言葉がふと頭をよぎった。
目を閉じる。精神を統一する。
そのとき、はっきりと言葉が浮かんだ。



―無限はいつか終わる・・・そして、そこに抜け道がある。

それを人間は「夢」という・・・。

俺がおまえにとっておきの必殺技を作ってきた・・・。

その名も、・・・



第8ラウンドのゴングなった。

分かったダーカ。

Stay away,Mr.Fear!

俺はもう逃げねぇ!

俺は相手の顔を見る。攻撃がすぐに分かる。
俺は相手のパンチをきれいに流していく。
相手のパンチが見える。はっきりと見える。

そう、これこそがいつもの俺。

そして、そのときを俺は迎えた。

相手が右ストレートを出した瞬間、

俺は左で相手の体ごとはじいた。

相手は右足が浮いて、もう片方でパンチが打てない。

刹那、

俺は右で思い切り相手のあごを天高く打ち上げた。

しばらく、虚無の時間が上げられる。

そして、

俺の右肩が大きくあげられた。

勝利の瞬間だった。

ダーカ、確かに無かった、無限は。
俺はいま、頂点に立ったんだ。

「夢」をかなえたんだ・・・。

そう、これこそ、



夢限



fin

このページについて
掲載号
週刊チャオ第232号
ページ番号
2 / 2
この作品について
タイトル
夢限
作者
それがし(某,緑茶オ,りょーちゃ)
初回掲載
週刊チャオ第232号