最終話 消滅する扉

無限大の増殖 最終話 消滅する扉

「ふぅ…データは取れたから返すね」
疾風の父が、チャオを預かってから数週間後。二つの卵だったが、今は両方とも大人になっている。

「え…?」
繁殖期。ガーデンは満員のはずなのに、置かれた瞬間、繁殖期の目印である花が咲く。

「疾風っ!!繁殖させるなぁぁぁ!!」
大声で誰かが怒鳴る。その声の主は勇基。疾風はその意味がわからなかった。

「なっ!なんだこれ!!」
たった二人のチャオの繁殖期。それだけで沢山のガーデンが合体し大きくなったガーデン全体が花畑になる。

「遅かった…か!」
勇基がそのチャオ達の元へ来た時には、チャオの卵とは思えないほど巨大な卵が出現した。
「どういうことだよ…?」
「わからないが…たぶん、あいつらはチャオじゃないっ!!」
「その通りだ」
そう言ったのは、疾風の父。勇基はやはり…と呟いた。

「なぜ…チャオでないと?」
「VRとクローン…を組み合わせるんだ」
「ど、どういうことだよ…」
何の話か理解できない疾風は二人に訊く。

「君の推理は後だ。素晴らしい光景を見たまえ」
と言い、ソニックチャオのシップウを疾風に渡す。巨大な卵はその瞬間割れた。中から出てきたのは、巨大な真っ黒のイタチのような生物。

「グォォアァァァァ!!」
その生物が吠える。すると、チャオが全て消滅した。いや、全てのチャオがイタチに異様なスピードで引き寄せられているのだ。
「え…!?」
さらに、その生物はチャオを巻き添えにし、消滅した。それだけのことだった。それだけのことでチャオが全て消滅した。

「なるほど…全部わかったぜ…」
勇基がゆっくりと言う。

「まず、あのオニキスチャオ達…いや、怪物の元。あれは、VRを利用して作る。で、どうやったか知らんが、それをクローン技術で現実の生き物に変える」
勇基が話し始める。疾風と同級生とは思えないほど推理は意外なものだった。

「そんなこと…できんの?」
「あぁ。チャオの遺伝子などの全データを解析して、それと同じチャオを作る。だから、VRで作ったチャオのデータでクローンを作ることができる」
と、疾風の父は頷いた。勇基はそれを聞き、少しにやける。

「んで…そのVR怪物のクローンを2つ作り、繁殖させる。その後は誰かに頼んで売りさばく」
「それが…あの人…か」

「そして、ある程度増えたら二つのチャオの卵に何かを仕組み、今のようなことが起きるようにする」
「その通りだ」

「だが…目的がわからない…」
「それは、チャオを生存させるためだ」
疾風の父はゆっくりと言う。

「消滅したじゃないか!」
疾風が怒鳴る。しかし、疾風の父は
「チャオの生命が確認された星へ転送しただけだ」
と、あっさり言う。疾風は唖然とした。

「このチャオガーデンは、ウィルスに感染したんだ。だから、もうすぐシステムダウンしてしまう」
「システムダウンすれば、チャオはどんどん減っていくわけか…」
そう。今回の件で、チャオは全体的に減っていたのだ。それは、リングが尽きてしまうなどの理由にある。

「さて、このチャオガーデンもワープする危険性がある。出よう」

数日後、本当にチャオガーデンは消滅していた。人類が転送先の星の存在を知ったのはそれから数百年も後の事になる。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第118号
ページ番号
4 / 5
この作品について
タイトル
無限大の増殖
作者
スマッシュ
初回掲載
週刊チャオ第115号
最終掲載
週刊チャオ第118号
連載期間
約22日