2話 扉から出てくる恐怖
無限大の増殖 2話 扉から出てくる恐怖
あの新聞記事を読んでから何週間か経った頃。オニキスチャオ達は同時に繭に包まれた。
「進化…?にしては早くないか…?」
そうは思ったものの、そんな事を考える暇さえ彼らは与えなかった。繭から出てきた瞬間、繁殖期になったのだ。
「え…!?」
繁殖、繁殖期、繁殖。彼らはそれを繰り返している。数分後には既にガーデンは満員になっていた。なんという繁殖力なのだろう。さらに、生まれたオニキスチャオ達は木の実を食べている。
「どうなっている…んだよ…」
疾風はチャオガーデンから逃げるように出た。気分転換をするためにテレビを付ける。
「チャオのクローン、誕生なるか」
それがテレビを付けた時にやっていたニュースだ。特殊な機械でチャオのクローンを作るようだ。さらに、その技術を発展させれば普通のチャオからレアチャオを誕生させることも出来るようだ。あのオニキスチャオ達はまるで、クローンを作っているようでもあった。
「あぁ…なんか…もう…」
疾風は、その後1週間ほどチャオガーデンに来ることは無かった。だがある日、チャオガーデンに行った疾風は信じられない光景を目にしたのである。
「大丈夫かっ!シップウ!!」
お気に入りのソニックチャオ。漢字で書くと疾風で、同じ字になる。それほど可愛がっているのだ。そして、そのチャオが空腹で倒れているのだった。原因はすぐにわかった。あのオニキスチャオ達である。
「くっそー!!」
疾風はシップウを急いで自分の部屋に運ぶ。そして、チャオ専門店で木の実を買って食べさせた。おそらく、もう既に新たな卵によりチャオガーデンにシップウを入れることはできないだろう。それから疾風は少し落ち着いて色々な予測をした。考えられることは3つ。
1・オニキスチャオは普通のチャオではないこと。
2・他のチャオガーデンでも同じことが起きている可能性が高いこと。
3・このことを計画した者がいる可能性があること。
1と2は既にわかりきったことだ。しかし、3が不明である。この世界自体に異変が起きているのかもしれない。さらに、計画した者がいても動機が不明である。動機などわかっても意味はないのだが。
その次の日。急遽交流会をすることになる。疾風はシップウだけを連れていく。
「なんで…あんなことになると思う?」
2の予測は当たっていた。オニキスチャオを買った全員がチャオガーデンを占領されていたのだ。疾風は自分の仮説を言った。
「一つ目…は、世界自体に異変が起きている。それも、チャオにしかまだ異変が起きてない。だけど、それだと他のチャオも同じようにならないと変」
「だな…。それに、特徴や能力も同じだったのが変だよなぁ」
勇基が頷く。そこで疾風はとっておきの仮説を言う。
「クローンチャオってのはどう?それも、そうなるように仕組まれた」
「まさか…。まだ10%完成してないんだぞ?チャオのクローン機械は」
勇基が笑いながら言う。その事を思い出して疾風は苦笑いをする。
「だとするとさ、突然おかしくなったチャオを売られたってことじゃない?」
「あぁ…なるほど」
この前、チャオのカオスドライブの取り合いで呟いていた人が言う。今のところ、それが最もいい説と言える。
「ガーデンが占領されたからなぁ…木の実代とか、かかるんだよなぁ」
最後の方には、そのような話題になっていた。疾風は、リングをコツコツ稼がなくては。と、シップウを見つめながら思った。