["real"is a sign of love's mockin'people]
>ore視点
こういう平和なダウンタウンは襲いやすい。
俺は心底そう思ってハーレーの速度を上げる。
どんなに綺麗な日だまりの坂も、
あるいは俺の逃走する道でしかない。
景色とは、つまり、人間の想像。
あらゆるモノの総て。
そして、今の俺には、
日だまりよりも、どんなものよりも、
お金の輝きに目が引かれた。
よくよく考えれば、「理由」はそれだけのこと。
だから、こんな醜い犯罪も容易に犯せる。
こんな笑顔でいられるのだ。
「…今日は平和だな…。」
加速するエナジー、
五感に来るスティミュレィション(刺激)、
輝きを増すマニー、…
…今日は良い日だ。
>atasi視点
また、今日も強盗をした。
いや、むしろ私はお手伝いだけ。
実際にしたのは、今自分の前にいる、
私がぎゅっとその服を掴んでいる、
彼。
彼は幸せそうに見えた。
もう、私も、彼もこういう犯罪には慣れている。
だからかもしれないが…
いや、でも今日の彼はいつもより元気そうで、嬉しそうだ。
私もそんな彼が愛しい。
犯罪なんてそう言うこと無しに、
私は彼の性格も欠点も…とにかく色々なモノが入った、
彼の作る甘いフルーツサラダに酔いしれていた。
私をいつも気遣ってくれて、
私に心配をかけてくれ、
私をいつでもどこでも連れて行ってくれる。
…
しかし、そう過去を考えれば考えるほど、
私は逆に切なくなった。
結局彼は私を「仲間」としか見てくれていない。
「愛」?
そんなもの、どこにあるんだろうか?
ねぇ、答えて…わたし……
「……無いよ。」
「…ん?どうした?何か落としたか?」
彼がふいに後ろを向いた。
少し笑みが残る穏やかな表情だ。
私はあわてて、首を振った。
「へ?あ、あぁ、いや、何でもないよ。独り言独り言!」
「…そうか?なら良いんだけどさ。」
彼はまた前を向いて運転を始めた。
鼻歌を歌いながら安全運転をしているようだ
赤信号もきちんと止まる。追いかけられる可能性もあるのに。
強盗する人間らしくもないような気がした。
…
それにしても…ついつい、自問自答が声に出てしまった。
このまま言ったほうが良かったんだろうか?
「貴方は私を愛してなんかいないんだよね。」と。
でも、それで、もしもそれが本当だったら、
私はそれを言った後どうすればいいのだろう?
私は彼から離れるだろう。
そして、1人で路頭にさまよい雑踏から答えを導き出す。
他の男とくっつくの?
別の生活を過ごすの?
水商売?パブ?
それとも警察に捕まって自首?
懲役?刑務所?自殺?
一つだけ分かるものがあるとしたら、
…どれを取っても、良い生活は待ってはくれない。
それだけだった。
私は泣きたかった。
泣いて泣いて、泣きやむまで、涙を流したかった。
彼は慰めてくれるだろう。
あるいは男として、…仲間として。
微妙な感情のコンフリクト(衝突)が起こる。
私は目を開けて、外を見渡した。
街路樹にはオレンジ色の夕日が架かっていた。
きれいとは、思えなかった。