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ちっちっちっと男の腕時計が回っている。
デジタル的なその動きとともに男は動作を停止していた。
目の前には敵―もとい警察官約20名ほど。
全員盾と銃を持っている。
対する男、武器は木刀とガムだった。
―「酸塊(すぐり)」、すぐに投降しろ。
―へぇ、俺のコードネームを知っているのか。なかなかだな。
で、調子に乗って逮捕ってか・・・?
ちっ、むかつくヤローどもだぁ・・・。
―さぁ、早く投降しろ!木刀でかなうはずがない!
それは百戦錬磨のおまえならわかるだろ!
―ぁ?俺が分かることは一つしかねぇさ。
俺は勝つってことだ。
『モノクロームの反転』
場所は高層ビルの摩天楼。
男は逃げる方法がどこにもなかった。
しかし、男には勝算があった。
男はポケットのガムを一つ取り出した。
大粒のガムだった。
刹那、
男はガムを警官に向かって投げつけた。
警官の目がそっちに動いた。
瞬間、男は走りかかった。
一人の警官ののどを突き、銃を奪う。
―し、しまった!
―THE ENDだ。
男は銃を撃ちながら、木刀で次々に警官を気絶させる。
警官も応戦するが、盾をも奪った男は無敵だった。
数秒後、警官は全員倒れていた。
しかし、全員が息をしているのは確かだった。
そう、男は銃を直接撃たなかったのである。
そのとき、上からヘリの音がした。
男はヘリのはしごに掴まる。
そして、警官から奪った銃を一発空に撃った。
歓喜の一発だった。
男はヘリの中に体を滑らせる。
そこには髪をつんつんにたてた男と、
ヘリを操縦する筋肉質の巨体の男がいた。
髪をつんつんにたてた男は、
髪の毛をさわりうつむきながら問いかけてきた。
―酸塊よぉ、例の遺伝子は奪えたか?
―炎(ほむら)よぉ、なにいってんだ?当然だ。
―でも、結構ピンチだったじゃねぇか?酸塊さん。
―あんな状況なんて日常茶飯時なんだけどな。
でもまぁ、こんなブツを奪うのは久しぶりだな。
―で、この遺伝子はどんなもんなんだ?
遺伝子コード「C H A O」というモノは?
―炎・・・それくらいしっとけ。
この遺伝子は、液状生物が生まれる可能性があるんだよ。
地球の重力に逆らう生物のな。
―たいそうなモノを奪ってきたもんだな。
そのとき操縦をしていた男が二人の会話に入り込んできた。
―おい、おまえら、大変なことが起きた。
―何だよ、籤(くじ)。そんな顔してよぉ。
―酸塊、炎、驚くなよ。
去年あの事件で死んだあの野郎に、娘がいたらしい。
―な、何だと!?
―今、情報屋の棒名(ぼうな)からそうはいってきた。
―棒名の情報か・・・確率は確実に高いな。
場所は・・・どこだ?
―場所はな・・・。
三人を乗せた戦闘型ヘリはその高校に向かった。
そして、そこからこの反転の物語が始まる・・・。
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