~白鷹潤一の覚醒~ 二章

振り返ってみれば、フレアが石となった〝カオスエメラルド〟を拾い集めていた。
円まゆかと城宝、親友と冬将軍でタッグを組んで、〝カオス〟に静止をかける。
「溺れてるじゃねえか、あいつ。」
急降下した位置エネルギーは、運動エネルギーに変異を遂げ、俺は水に突っ込んだ。
死んでたら承知しねえぞ、あの馬鹿。
とりあえず体を持ち上げて、上に向かって泳ぎに泳ぐ俺。
水面に上がると、突然ビルが倒れてきた。
「うおーい!!待てよ!!」
思わず叫ぶと、寿原が半目を開ける。
「おい、寿原!どうにかしろ!」
「く、白鷹…じゃ、ないのか…?」
「いい加減目を覚ませ!!じゃねえとあの化け物と合成するぞてめえ!!」
倒れてくるビル。
暴走する〝カオス〟。
半透明の体。
「ふざ、けるな……俺が何で、お前に助けられなくちゃならない。」
「やかましい!!」
理屈も何もかも抜きで、俺は寿原に叫んだ。
「城宝を助けるんだろ!?」
「じょう、ほう…?」
俺の指先の先は、ピンポイントで城宝早苗の姿を遠くに指していた。
「佐伯…?何で佐伯がここに?」
「は?」
「分かった。協力しよう。俺の名前は寿原俊之。白鷹潤一の野望を阻止する者。」
「白鷹の…なんだって?」


「白鷹潤一は世界全てを俺に〝合成〟したんだ。だが、そこから逃れたのが白鷹と佐伯って訳であってだな、」
「後にしろ!この、ビルをどうにかしろ!!」
「〝混沌制御〟」
ぴたっと、ビルが止まった。
「とにかく、俺は〝侵略主〟の肩書きをかぶせられた人間。俺の目的は、ひとつ。」
びしっと、指を指した。
「あの怪物を、俺に苦難を浴びせた白鷹潤一を、〝カオスエメラルド〟に封じ込めること。」
「じゃあ、なんだよ、あの悪役ぶりは?」
「俺がいつ悪役ぶりをした?お前を白鷹と見ての行動だ。あいつは狡猾だからな、あえてこちらの寿原俊之を演じなければならなかった。」
まあ、いい。その結論は呑み込むとしよう。
「あれは、どうやったら倒せる?」
「倒せない。不死の―」
「倒し方を訊いてるんだ。不可能か可能かは訊いてねえ。」
一瞬、寿原俊之は驚きを見せたが、小さく鼻で笑うと、
「体ごと消滅させる。」
「分かった。とりあえず、俺をあのビルの屋上に〝混沌制御〟で移動させろ。」
「了解。」


「これで、全部か。」
「うん、そうだよ。」
集めたのは、石になった七つの〝カオスエメラルド〟と、寿原俊之から分離させた〝カオスエメラルド〟。
こいつを使わないと勝てそうにないからな。
「おい、寿原二号。」
「二号ってなんだよ。」
「人間の力の方が、〝サイバー〟やら何やらより強いっての、本当だな?」
しばしの沈黙。
その後に、寿原はゆっくりと口を開いた。
「それらを作ったのが誰かを考えれば、当然の答えだ。」
「信用するぜ、寿原。」
「何をするんだ?」
十四個の〝カオスエメラルド〟。
ヒントはマスチャツ=ザ=ライトカオスだ。
あいつは何をしようとした?
どうやって力を引き出した?
簡単だ。
「〝カオスエメラルド〟と俺を合成する。」
「…お前、」
「危険な事は千も承知なんだがな、他に方法が思いつかん。」
そういう事にしておく。
実は危険な事は何も無いし、他に方法があるといっちゃああるが、これが一番簡単なんだ。
そうだろう?
冬将軍らが〝サイバー〟で戦っているうちに、俺は準備を整えなければならん。
「きみ、本当に倒せるのかい?」
「やるしかねえだろ。」
「きみらしくないね。自分から嫌な思いをしにいくタイプじゃないと思っていたんだけど。」
不覚にも苦笑してしまった。まさかこいつ、俺の事を理解していたとは。
「まあ、なんだ。」
かく言う俺は、言いあぐねた結果、仕方ないと、本音を話す事にした。
「守ってもらってばかりじゃ、格好悪いじゃねえか。」
寿原にもフレアにも、苦笑で返された。それを機に、俺は〝混沌制御〟を実行する。
出来る。
必ず出来る。
あの水の化け物を、身体ごと消滅させるには―


これしか、無いだろう。


「…驚いたね。てっきりカオスになるのかと思っていた。」
「お、おい、なんだ、お前。」
金髪になれば超巨大型の惑星形エネルギーで倒せるんだが、あいにくと俺は回りに金色のオーラをまとっただけだった。
だが、十分極まりない。
「じゃ、ちょっと行って来る。」
度胸と気合だけは、十二分あるからな。
俺はそう思って、ビルの屋上から文字通り、消えた。

光景が一瞬で変わる。
冬将軍は白い服に水を滴らせながら、ライフルで銃撃しているが、はて、それ効くのか?
「し、親友!?何で水の上に…」
「退いてくれ。一発で仕留める。」
右手を前に、左手を右手首に。
〝カオスエメラルド〟のエネルギーを右手一点に集結させる。
金色のエネルギーが渦を巻く。
俺はエネルギーを剣の形にイメージすると、〝無化〟を金色のオーラに上乗せした。
準備、完了。
水面を蹴る様にして化け物まで一直線に走る。
景色が流れる。
水が弾かれる。
化け物は水の竜巻を発生させた後、口から光線を俺に向けて放った。
「無駄なんだがなあ…」
とっさに〝混沌制御〟を行い、干渉の遅延と時の静止を同時発動、加えて〝無化〟で水の竜巻を突き破った。
さて、
終わりにしよう。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第273号
ページ番号
39 / 40
この作品について
タイトル
マゼルナキケン
作者
ろっど(ロッド,DoorAurar)
初回掲載
週刊チャオ新春特別号
最終掲載
週刊チャオ第273号
連載期間
約5ヵ月9日