~まどかまゆかの激昂~ 二章

近日の事件についてのニュースを見ている最中だった。
フレアと下らない会話を交わしながら、さて昼寝でもするかと思った時だったからな。
だが、昼寝の策はすぐさまくじかれた。
5月15日、1時18分、それは起きた。
そう、これは、


戦争だった。


「―臨時ニュースです―」
というアナウンサーの透き通る声と、
ぴん、ぽーん。
という家のチャイムがハモる。
「なっ…おい、フレア。どういう事だよ。早過ぎねえか?」
「僕にも理解不能だよ。急いで向かおう。」
テレビを消すのも忘れて、俺は玄関に走った。


「城宝!」
「急いで行こう!多分…いや、絶対に、〝ダイヤモンド〟よ!」
いつになく落ち着きの無い様子で、城宝は叫んだ。
フレアは空中を飛びながら、携帯電話のような機械で会話しているが…頭の上のそいつがエクスクラメーションマークになっているところを見るに、大分驚いてるな、こいつ。
観察していると、城宝が手を差し出してきた。
「離さないでね。」
「ん?…あ、ああ…」
その手を取ると、城宝の背中から巨翼が―いや、機械だろう―生み出される。
すげえな、〝サイバー〟は。
「フレアくん、場所特定出来る!?」
「任せて。」
フレアの返答も待たずに、城宝は俺を連れて、空へ飛び立った。


ぱちん―


「……お、おい……」
怖え。怖気づいた。やべえぞ、おい。
なんだあれ。
ほとんど体、機械じゃねえか。
そこにいた3人を凝視しながらも、俺は恐怖に飲み込まれつつあった。
足が震える。
体が震える。
そして、地面に足が着く。
城宝の翼が、消えた。
麗しい髪の毛の一本一本が、太陽の光を浴びて心地良さそうになびくのを見て、俺は安らぎを得た。城宝は俺に微笑んで、3人の「敵」に目を向ける。
「目的は?」
黒と赤と黄の光をそれぞれ持つ奴らは、答えず、巨大な大砲と化したそれで、城宝に標準を定めた。
「させないっ!」
大きな発射音がしたと思うと、突然視界がぶれて、俺の体は城宝につれられた空にあった。
崩壊の音がする。形作られていたであろう街並みも、今は既に無い。
廃墟だ。
気付くと、城宝の右腕は歯車の擦れる音が響いて、光り輝き始めていた。
すたっと着地した城宝は、俺を手放し、そいつらに砲口を向けた。
「ふん、さすがは最強の一人。だが、最強というならば一人しか必要は無い。そうだろう?」
大きな砲弾が城宝の右腕から放たれる。
だが、高層ビル並の強固な盾によって、防がれた。
「え…!?」
「大した事は無さそうだ。安心したよ、城宝早苗さん。」
城宝は驚愕に身を包んでいた。
足が動かない。
やばい。
おい、城宝が危ないんだぞ。動けよ、おい、動けよ。
動けよ!!


放たれた砲弾。
身動き一つしない城宝。
風にゆらめく白いマント。
右手の先をシルクハットにかけながら、左手一本で砲弾を消してしまった。
「ふ、冬将軍…」
「きみたち、寄ってたかって一人の少女をいたぶるのかい?」
「出たな、Winter!!」
黄色が動く。
「待て、トパーズ!」
「オニキス、俺らの力はもうこっちの比じゃねえぞ!」
黒の静止の声に耳を傾けず、トパーズは素早く冬将軍に近付く。
「総戦力対総戦力と言う訳だな。」
ダークグレーのフレームを日差しに煌かせて、両腕二刀流の親友がトパーズの進行を妨げた。
「〝アンチサイバー〟だと。どうする、ガーネット。」
「消す。」
赤い奴が動く。周囲は燃え盛ったように砲弾の波に押し寄せられた。


奴の言葉は文字通り、周囲一体を消し飛ばしてしまった。
城宝は膝を付いている。冬将軍は白い服装を煤だらけにしながらも立っている。
親友は、先頭に立って攻撃を防いだのだろう。
俺の横まで吹き飛んできた。
ぼろぼろだった。
「おい、親友―」
返事が無い。
「おい、親友―」
やはり返事はなかった。
「ホットケーキ焼けたぞ、おい―」
声が届いていないのだろうか。
「親友!!!」
「あれがこちらの救世主か。頼りない。何と情け無い。」
オニキスの言葉は、俺の心にずさずさと刺さった。
そんな事気にならないといえば嘘になる。
イラついた。
ふざけんな。
てめえらは自分の家に帰れ。
ホームレスどもが。
腰が抜けていた俺は、奴等の気迫が今までの数倍にも感じられたが、気にならなかった。
「俺は〝無力〟の救世主だ。」
体中の力が抜ける。親友の声が聞こえる。
「お前らなんて目じゃねえ。」
なぜか、すっと右腕が上がった。


「まずい、止めろ!!」
ガーネットが叫んだ。
「間に合わな―」
「〝無力化〟ぁああああああああああああああ!!!!」


機械は、消えなかった。
奴等、いや、奴一人だけ残った。
既に人間の面影は残っていなかった。
それは、ゲームの中に出てきた、古代の龍に似ていた。
七色の光を壁に、俺の〝無力化〟を消しやがった。
「〝混沌…制御〟…」
不意に、俺の口から出た言葉だ。
もはや、敵に話す口はなかった。
機械音を唸りに、敵は砲弾を辺りに撃ちまくった。
「くそっ!!」
俺の身代わりになってくれた、奴らに言って置く。
ありがとよ。今度は俺が守るぜ。
「だあああああああああ!!!」
気合だけは、十二分だった。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第270号
ページ番号
35 / 40
この作品について
タイトル
マゼルナキケン
作者
ろっど(ロッド,DoorAurar)
初回掲載
週刊チャオ新春特別号
最終掲載
週刊チャオ第273号
連載期間
約5ヵ月9日