~フレア=フォーチュンの戦慄~ 三章
敵は全部で6。
中央の奴が〝ダイヤモンド〟だろうか、普通の人間だ。
右から、黒いのと、赤いのと、黄緑と青と黄。
固有名詞があるんだろうが、あえて気にせん。
「そんで、お前ら〝無力化〟されてるのに、どうやって戦うんだよ?」
「残念だったな。私は〝侵略主〟…つまり、〝サイバー〟の創造主だ。」
「その〝サイバー〟も、円まゆかの力を借りてやったもんじゃねえか。」
こういう時は、ひねくれた自分の性格が嫌と言うほど発揮出来る。
しかし、そいつは鼻で笑っただけだった。気に食わん。
「〝サイバー〟に対しえる〝無力化〟への対策を取っていないとでも?」
「…は?」
さすがにそこまでは頭が回らなかったな。
何せ、〝無力化〟されたら何も出来ないと思っていたから。
「普通の〝サイバー〟とは異なるのだよ。こちらの世にも君臨しているだろう?」
…なるほどね。
「カオスエメラルドか…。」
「話が早い。さて、キリュウ君。そろそろくたばってもらおうか。」
〝ダイヤモンド〟の奴が一方的に喋っただけで、俺は何の構えも取れなかった。
だから、何かの光る光線みたいなもんが俺の真横を通り過ぎ、城宝がそれを避けて着地するまで、何が起こったのかも理解出来なかった。
キリュウ君―!!
「おい、大丈夫か!?」
「助からない。その〝サイバー〟は私が頂いて置いたからね。」
くそっ…!こんな時に、無力な自分が嫌になるぜ!
「あなた…人道ってものが無いの!?」
「私は人を超越する存在だ。ゆえに、人道などは必要ない。」
一瞬で右腕を巨大な大砲に変えた城宝は、輝かしい銀色の大砲を構えた。
キュイイイインと、歯車が回転する。
「城宝早苗…。なるほど、君の力も頂いて置くよ。〝アクアマリン〟と〝ペリドット〟、よろしく頼む。私らはキリュウ君の〝サイバー〟を調合して来る。」
「承り致し。」
「切磋仕る。」
古風な挨拶で締めくくった、青と黄緑以外は、俺が止めようとする間も無くその場を去った。
「カオスコントロールか…!」
「さて、城宝早苗。不憫だが、これも運命だ。」
青が喋った。いや、〝アクアマリン〟かね。
「ふむふむ。〝サイバー〟連結率79%、変異速度10と言ったところかな。」
「俺ら2人の敵では無いだろう。ただ、そこの無能な人間が邪魔だ。」
歯車の音が倍増し、大砲はいつもと違う光景を見せて放たれた。
何だか怒ってるっぽいですね、城宝さん…!
すごく冷ややかなオーラをまとっているように見えますよ城宝さん…!
案の定、奴ら怯えてますよ!
「私の大切な人を、邪魔扱い?へえ、そう。なら、私にも考えがあります!」
「とんでもない女だな、こいつ!」
「だが、遅いね!」
黄緑のやつ、〝ペリドット〟は、恐るべきという速さで俺に接近して来た。
修羅場を何度も潜り抜けた俺は、日常茶飯事みたいなもんなので、もう慣れてしまった。
走馬燈が無かったんでね。
〝ペリドット〟は、速度を崩さずに後退した。
「知っているかい?エメラルドの所持が1つで、単純な制御段階が3つ。2つで、発動速度の上昇と、新たな制御段階が1つ増加。そして…、もう1つで、発動に関する一切の干渉をシャットアウトし、ほぼ全てを制御する事が可能だよ。まあ、チャオだしね。ここまでが限界なのさ。」
まるで、今回の話の分を全て喋ったような長い文章で現れたそいつ。
俺が席を外してもらったといって、チャオガーデンで満喫していたはずのやつ。
天使にも悪魔にも見える、英雄。将軍さま。
フレア=フォーチュン=ザ=チャスティス。
「…君ら…一体、どんな創りを…!!」
しかし、様子がおかしい。
奴らを見た途端、驚愕で眼が見開かれている。
対する奴らは、くくくと笑っている。
おいおい、どうなっているんだ。
「俺らの体には、〝サイバー〟が9割埋め込まれている。」
「そんな事をしたら、意志を保つ事さえ難題のはずだろ。」
「知りたいかい?僕らの、ヒ・ミ・ツ。」
気色悪いな、こいつら…。
「残りの1割がカオスエメラルドだからだ。」
「なるほど。其方の世界の、という追加文章があるという訳だね。」
「フレアくん!伏せて!」
一瞬で大砲の準備を完成させると、城宝はそれを構えた。
〝ペリドット〟は呆気なく撃沈―したかに思われたが、何と青い壁に阻まれていた。
「これが、我らカオスエメラルドと〝サイバー〟の組み合わせによる力―」
「〝カオスサイバー〟とでも名付けるの?」
「センス無いね、フレア=フォーチュン。」
珍しく、フレアの表情に焦りが見えていた。