~俺と奴らの逃亡~ AFTER THAT

ぐるぐると、薬品を混ぜたような空間。
いや、いまいち分からんな。
ブラックホールがあるとすれば、こんな感じになるんじゃないか?
時空、重力、様々な事柄が俺の脳裏を駆け巡る。
キケンも伴う―フレアの言葉だ。
俺の頭は、既にほとんどの事象を考えられなくなっていた。
色々な事が現れては消える。
もしかしたら、この空間で俺は消えてしまうのかもしれない。


だから、フレアは覚えていないのかもしれない。
だから、城宝は死んでしまったのかもしれない。
そこに、俺と言う不確定要素を要れる事により。
何かが、変わってくれれば俺はそれで良いんだ。


不平不満だらけで、真面目な話には付いていけない俺だが。
そんな風に生きていけたならば、幸せだと思う。
だけどな…。
こんなに色々な要素を交えなくても良いだろう?
薬品も調合しすぎると爆発するじゃないか。
この場合、調合し過ぎて、混ぜすぎて爆発を一身に受けるのが俺だという事だ。
だが、俺は諦めないぜ。〝サイバー〟の奴ら。
逃げたら逃げ切るまで俺は走る。
奴らと一緒に、な。


「うわっ!」
誰かに見られたらさぞかし妙な光景だったろう。
俺は自宅の目の前に転がっていた。
仕組んでくれたのか、必然か、はたまた偶然か、周りには誰もいない。
安堵しつつも、俺はここが本当に自分の家なのか気になっていた。
…入った途端に別の時間に移動するのは勘弁して欲しい。
日光がこれほど眩しいとは知らなかったが、まあ、何にせよ。
俺はドアを開けた。


…俺は、この先も後悔するつもりは無いぜ。
俺の意思で動いたんだ。最後まで俺の意思に従え。
運命がどうのこうのとか、そういう哲学的な話とは無縁でいたいんでね。
「よう、城宝。」
「あ、…おかえり。」
「他の奴らはどうしたんだ?」
と、俺が訊ねると、城宝はだんまりであった。
うつむきがちだな、どことなく。何だろう。何かあったとか。
俺が時間的に移動しているといっても、時計を見る限りでは30分も経っていない。
いつの間にか花粉症も治癒されているが…。時間の効果なのかね。分からんが。
意外にも、俺の心の中はすっきりさっぱりと枝分かれし、整理されていた。
だから、他の要素を入れて、それに考慮するに、とても時間がかかってしまったのだ。
「大丈夫か?俺に出来る事があったら、何でも言ってくれよ。」
「ほ…、」
言いかけて、止まる。何と無くだが、頬に朱が差している。
「本当に?何でも?」
「ああ…、?俺に出来る事だったら。」
こういう態度を城宝が取る時は、決まって、ためらいなのだ。
言おうか、言うまいか…何か隠しているのだろうか。
と、考えてると、突然城宝が目の前に「現れた」。
手を伸ばせば、届く距離にまで、近い。
シャンプーの匂いだかは分からないが、良い香りが漂ってくる。
質感の濃い髪の毛並み、一本結びにする事で際立つ顔の小ささ。
揺らぐ決意の瞳、吸い込まれそうな黒い眼。
形の良い耳、穢れ一つ無いような肌。
俺は頭の中がほぼ真っ白だった。


「本当に…?良いの…?」
答える事すら出来ん。なので、俺はし切りに頷いた。
見ると、頬の朱が増している。眼なんか潤んでいやがる。
やばい、こっちが野垂れ死にしそうだ。
俺のシャツをぎゅっと、可愛げな、か細い力で握る。
一瞬、瞼を伏せたが、やがて城宝は俺の顔を真正面から見つめた。
俺の胸辺りに頭がある…というくらしか状況判断出来んが…。
フレアと親友と円まゆかと寿原と叔父と親父と教師連中と校長とGUNと何から何まで俺の頭の中を走馬燈の様に巡り巡って意味不明な脳内細胞と化している。
…待て、そもそも何が…と、やっとの事で俺は正気に戻っ――――


視界全体が、綺麗な肌の色と、満天の星空みたいな瞳によって構成された。
口を開こうとするが、…塞がれている。
「なに」で?


それ、本気でワカラナイノカ―......

色んな意味で経験の浅い俺の意識は散った。
ただ、一言を残し聴いただけで。

「大好き。」




逃げて逃げて逃げて逃げて逃げた結果、誰かがそこで待っていてくれた。
何て事が、果たしてあるのだろうか。
上記の通り、色んな意味で経験の浅い俺は知識的にもわかりゃしない。
しかしだ、この状況の中で、一つだけ言える事がある。
いや、むしろ言いたい。叫びたい。



唐突過ぎるんだよ!!

このページについて
掲載号
週刊チャオ第258号
ページ番号
29 / 40
この作品について
タイトル
マゼルナキケン
作者
ろっど(ロッド,DoorAurar)
初回掲載
週刊チャオ新春特別号
最終掲載
週刊チャオ第273号
連載期間
約5ヵ月9日