~まどかまゆかの決意~ 一章

一連の事情が過ぎた。
この間までは、宇宙行った挙句、とんでもない事件が起こってしまったが。
今度はそうでも無いだろう。
何せ、俺は17歳。第三高2年生。最も、第三高は6年制だから、まだまだあるんだが。
そんなこんなで2年生もそろそろ最終段階。
3月上旬。俺は任務を達したり、城宝【じょうほう】早苗【さなえ】なる〝超〟美少女とまあ、何だ、話したり。
ついにこの日がやって来た。
2年生修学旅行ー。
そう、何も無いと思っていたんだ。
だが、俺の予想はもう当たらない事間違いないので、何かあるだろうとは予想していた。
覚悟が全くもって、足りない。
何せ、俺は人生最大の危機に陥ってしまったのだから。
修学旅行バージョン、ヒロインはまたもや円【まどか】まゆか。
何とも言いにくい名前をいい加減改名して欲しい。
そんな訳で、俺たちは雪の国に向かっていた。


 マゼルナキケン~まどかまゆかの決意~


行きのバスの中。俺は親友と席を隣にしていた。
何の巡り会わせか、奇跡が起こり、俺の前は城宝、その隣は円まゆかという4人詰め合わせ。
俺と親友は、2人でトランプを楽しんでいたのだが、はっきり言や、限りがある。
ポーカーで親友に連勝をされている内に、やる気を失わせた俺は、トランプを仕舞った。
この際だ。レクリエーションに参加してやるのも悪くは無い。
溜息をついた俺は、やっとの事で、ポーカー必勝法を思いついた。


しばらくレクリエーションが続き、美人のつもりでいるバスガイドの役目が無い。
最も、気遣う事は無いがな。
足元の鞄から、飲み物…を出すふりをしておいて、そいつとコンタクトを図った。
「どうだ、調子は。」
「狭い。」
「大丈夫らしいな。」
フレア=フォーチュン=ザ=チャスティス。古代生命体〝CHAO〟だ。
つい最近、一次進化を遂げたフレアは、今や白い姿をしている。
これも城宝のお陰だな。ありがたく思え。俺が育てていたらダークだったろうから。
と、俺が歴史で習った事を土台に優越していたところ、
前の席のやつが話しかけて来やがった。
「ねえ、…あんたら、トランプ止めちゃったの?」
「まあな。」
「こいつ、負けてばっかいるからよ。」
親友が微笑みながら言った。俺は悔しそうな表情をしてやる。
口のとんがった円まゆかは、椅子の背もたれに腕をかけて、ぶらぶらさせている。
城宝が俺の席の前でよかった。親友が被害を被るだけだからな。
「あの…お昼、楽しみにしててね。」
「おう。」
窓の脇から、城宝は言ってくれた。その通り。弁当を買う算段でいたが、城宝が作ってくれたのである。
「ねえ、何かやんない?」
「パス。俺はどうせ負けるからな。」


前よりも、円まゆかと、話す機会が多くなった気がする。
いい事なのか、悪い事なのか…俺には分からないって前にも言った気がするな。
まあ、美人だしな。悪くはないはずだ。面倒だけど。
下心がある訳ではない。何度も言うが。
「右手をご覧になってください。」
人気の無いバスガイドが、白けるだけの紹介をした。
もう少し点数が高いのを連れて来いよ。あ、金が無いのか。
誰も見る気配が無いので、俺は右を見てやる。
「あれが、かの有名なステーションスクエアでございます。」
…有名か?俺は胸中でつっこんでおいた。意味は無いが。
「次に、左手をご覧になってください。」
首が痛いな。俺は誰も見ない中で、たった1人左を向いた。いや、城宝は向いてるかもしれん。
「カジノポリス。かつてDrに支配された場所でございます。」
知らん。俺の勉強不足のせいかい?
その名前を聞くたび、フレアは外に出ようとしたが、場所が場所なので出さん。
後で見せてやるよと、携帯で撮って置く。


いつの間にか高速道路に入っていたらしい。
パーキングに止まっていた。俺は眠ってしまっていたので、誰もいない。
まあ、いいだろうと、誰もいないバスの中で、フレアを出してやる。
「狭かったよ。」
「だろうな。」
フレアは、子供の時と比べて、一回り大きくなった羽をはためかせ、空中に浮かんだ。
外の空気を吸わせてやりたいが、目立つんでね、我慢してくれ。
「向こう行ったらサービスしてよ。」
「そういうところは変わらんな。」
にっこりと笑って、フレアは鞄に納まった。
城宝が帰って来た。円まゆかは…いないようだ。
「よう。」
「あ、おはよう。」
爽やか、と比喩できる笑顔で挨拶をしてくれた。
「気持ち良さそうに寝てたから…起こさなかったんだけど…。」
見てたんかい。
「ご、ごめんなさい。」
「いや、別に全然構わないけど。それより、円のヤツはどうしたんだ?」
「んっと、向こうで先生と話してる。」
安心して良さそうだな。邪魔者はいない。
親友を邪魔者に指定するのは気が引けるが、この際どうだっていいぜ。
2人きりの空間を満喫してやろう。本当は3人いるが。
「これから先には、何も無いよな?」
「うん、だと思う。あって欲しい?」
「まあ、な。死ぬのは勘弁さ。」
「大丈夫だよ。」
やっぱり、爽やかな笑顔で、彼女は言った。
「絶対に、守るから。」

このページについて
掲載号
週刊チャオ第256号
ページ番号
18 / 40
この作品について
タイトル
マゼルナキケン
作者
ろっど(ロッド,DoorAurar)
初回掲載
週刊チャオ新春特別号
最終掲載
週刊チャオ第273号
連載期間
約5ヵ月9日