~フレア=フォーチュンの闘争~ AFTER THAT
俺たちは、無事に地上へと帰って来た。
随分と長い冒険のようだったが、時間はあまり経ってない。
眠たい。腹減った。
あれから感謝されまくった挙句、お泊りになってとか言われたので、適当に巻いて帰った。
お泊りになってくださいって言ったのが絶世の美女だったのもあってか、城宝がむっとしていたんでね。円まゆかはあれから妙に殊勝だ。
一度俺の家に集まり、時刻8:00を確認した後、解散する事になった。
晩飯は抜きですか。城宝さん。
フレアは、もう将軍だから、向こうで暮らしている事だろう。
全員が帰ったところで、俺はコンビニにでも行くかなと、家を出た―
―そこで。
「円じゃねえか。どうした。」
殊勝な顔つきを続けている円まゆか。
俺はあえて、笑顔で話しかけてやった。まあ、俺も優しいね。フレアはそう言わないと思うが。
「あのさ…。」
切り出したが、何とも言いにくそうな雰囲気だな。
「あんた、戦闘要員じゃ無いんじゃなかったっけ?」
「ああ、あれか。ありゃぁ…まあ、うん、あれだ。」
我ながら答えになっていない。
「〝無力化〟つってな、戦闘には向かねえ能力だよ。正直、親友のロケットパンチが無ければどうなってたか知れん。」
「…でも、あんなやつによく立ち向かって行けたもんだわね。」
「そりゃあな。無我の境地ってやつだろ。」
俺は答えて、コンビニに向かって歩き出した。
不覚にも、円まゆかは付いて来る。何の用だ。
「…前にもそういう事があったの?」
「何だ?そういう話なら、親友にしてくれ。俺は説明が苦手で、な。」
凍える手に、息をふきかけながら、俺はひたすらに歩く。
コンビニまではまだちょっとあった。
「ん…。」
だから何の用だ。
「見直した。」
「そうか。」
どんな内容だろうが、俺は驚かない自信があっ―た?
なんつった?
「だから、見直したって言ってんのよ。」
「…熱でも出たか。いや…寒さに負けたか。頭が狂ったか。どれだ。」
「どれでもないわよ。失礼ね。ランク下げるわよ。」
俺は雑魚キャラか。そんで、中盤くらいに出てくる経験値そこそこのモンスターに格上げされた訳か。
せっかくなのでそのまんまにしておこう。雑魚キャラはいくらなんでも気に食わんし。
「意外と、強いのね。」
「まあな。」
「あの子…なんていったっけ?フレア?…に、情でも移ってたの?」
「そうでも無えさ。」
「じゃあ、何で?」
答えようの無い質問だったが、俺は答える術を持っていた。
「それ、本当に分からねえのか?」
いつかの、小生意気なガキが出した答えだったが。
翌朝である。
俺はいつも通り歯を磨いて、パン食って支度して、学校行く…寸前。
何とまあ、家の前に段ボール箱が置いてある。
「誰だ、こんなところに捨てやがったのは…。」
持ち上げてゴミ捨て場に…って、やけに重い。
「中身減らそうぜ…というか、ゴミ捨て場すぐそこなんだから、ここで諦めんなよ。」
などと、ジョークをかましていると、段ボール箱が動いた。
中身は猫か?犬か?それとも亀か?または正体不明の未確認生物?大発見?
俺はおそるおそる箱の上部を開け―
「ぶはっ」
何か飛び出した。
俺の顔面を直撃したそれは、どうやら段ボール箱から飛び出したようで、メガネしてなくて良かった。
ビックリ箱か。俺の知り合いにこんな事をするやつが…心当たりはあるが。
ん?何か落ちてくるときの独特の音がするな。…すでに時遅し。
後頭部をそれが直撃した。
「2連続はねえだろ…。」
何とか立ち上がった俺は、それの正体を見て…驚いた。
「〝CHAO〟?」
「痛いなあ、もう。誰だよ、開けるなよ。」
「って、お前は…。」
「ん?やあ、君か。って事はあの赤いポストも伊達じゃ無いって事だな。」
フレア=フォーチュン=ザ=チャスティス、帰還の証だった。
普通に帰ってくるんじゃつまんないから、段ボール箱に入って、でも運べない。
だからポストの傍で入って、郵便のシールを貼ったのだという。
よくそこまでするなと感嘆しつつ、俺はフレアを家に入れてやった。
「じゃあ、俺は遅刻しちまうから行って来る。」
「なんだ、遅刻なんて良いじゃん。それより、〝サイバー〟の新しい居場所が判ったよ。」
「任務かよ!というか学校学校!ほんと進化しても変わらねーのな。」
晴れて、俺の家の臨時ペットは、公正なる任意のペットと化した。
名を、フレア=フォーチュンという。
白い姿を象る姿は、まるで天使のようにも、はたまた…。
英雄のごとく、見えた。
「ところで円まゆかはどこだい?」
「なんでそんなん訊くんだ?」
「いや、一緒に登校する逢引でもしていたのかと思ってね。昨日の夜2人で歩いてたから。」
抜け目の無いやつだ。