~フレア=フォーチュンの闘争~ 二章

そんな訳で、俺たちは今、電話ボックスの中にいる。
はっきり言って、人気の無い場所なのはいいが…。
「狭い…。」
ぎゅうぎゅう詰めである。
まあ、可憐かつ壮麗かつ美麗かつ好感な美少女が、俺に寄り添うのは閉口しよう。
いや、下心がある訳じゃないぜ。この場合仕方無いしな。
最も円まゆかは不服なようだが。
「もう。これで移動出来なかったら即実刑よ。執行猶予無しよ。」
うるさい。まあ、見てろって。
5:55。俺らは揃って転移した。


痛っうー…というか…どこですか?
「いたたあ…あわっ!」
俺の上に落ちてきていた城宝が慌てて飛び起きた。
みなさん大丈夫ですか。俺は平気だけど。
立ち上がって上を見ると、白いワープホールがあった。
いや、ワープホールと無関係に繋げてしまったが、これにも理屈があるんだろう。
「で、ここはどこだ?」
親友が言った。答えるやついねえ。
当然だ。見たことのない場所だったからな。
というか、どう見たって病院の一室だ。
「本当に、転移したのかさえ不明だな。しかも…さっきの感覚はどこかで…。」
「お前、前に…ほら、あん時だよ…GUNの。」
円まゆかに勘付かれない程度に言葉を交わす。ああ、あの時か。
GUNに追われて、親友の電話に出て、目を瞑った結果、寝てたヤツ。
「なるほどね。」
「どなたですかな?」
俺たち一同は驚いて飛び退く。
何と古代生命体〝CHAO〟がいた。どう見ても医者のそっくりな姿で。
頭にはとげのような、羽根のような、そんなのがついている。
やる気の無さそうな表情だ。
「んー?どれどれ、ふむふむ…。」
「な、何なの、これ…。」
「いや、どう見たって〝CHAO〟だろう。」
紫色の椅子に座ると、そいつは勝手に頷き出した。
「〝人間〟ですね。」
「失礼しましたぁ!」
俺が率先して先に出ると、案外みんな着いて来た。
出てみると…。


半円を象った建物の形。電気は丸型が5つ。扉は5つ、棚が1つ、掲示板1つ。
壁にはところどころ絵が張ってあり、半円の半径の中心に当たる部分に一回り大きい扉。
俺たちが入っていたところの扉は薄緑色で、十字マーク。俺の目がおかしくない限り、
〝health center〟と読めた。要するに保健室だろう。さっきのが医者か。怪しい。
他にも、〝fortune teller〟(占いの館)、〝class room〟(クラス)、
そして一番役立ちそうな、〝principal〟(園長室)がある。
俺たちは無闇に動くのは危険だと判断し、とりあえずそこに入った。
なんかいる。
まるっきり園長室だ。高級そうな電気。地球儀。だが…。
いかにも怪しい園長の〝CHAO〟、瞬きする銅像、動かない窓の外の雲。
おかしい。
「あの、園長さんですか?」
どこまでも可憐に、城宝は言った。
すると、
「その通り。わしが園長じゃよ。ここでは、チャオ育成についてのヒントが…。」
「失礼しましたぁ!」
またもや俺が率先して先に出た。やっぱりみんな着いて来た。
何なんだここは。再び出てみて目を疑った俺。


何かいる。
「あなたの名前を占いましょう。カーッッッッッ!!」
「結構です。」
円まゆかが言い放って、俺たちはやっとこさ大きい扉から出て行った。


で、何だここは。
さっきまで、どこにでもありそうな建物だったはずだ。
なんで宇宙空間?
そこは、ガラスケースにでも包まれたような宇宙空間だった。
下には赤黒い雲、上には空(が、描かれている)、階段が光ってる。透明化してる。
真ん中に変な建造物。
「まさか…!」
分かるのか、親友。そして円まゆか。
俺と城宝はほとんど分かってない。
「ええ。ここは、多分だけど…宇宙よ。」
「そんなの見りゃ分かる。」
俺が反論。だが、親友にバトンタッチしたらしい。その親友が、こう続けた。
「古代生命体〝CHAO〟の楽園―〝CHAO・GARDEN〟だな。」
チャオの庭。って、まんまじゃねーか。
とツッコミを入れる間も無く、俺は考慮を深く沈めていた。
もしやもしやと考えを張り巡らせたって意味が無いのだ。
「とりあえず、行動だろ。」
「だね。」
城宝が明るく頷いた。それを見届けると、円まゆかは先頭を我が物顔で切る。
「まず、あの岩の扉に入ってみましょう。」


こいつの勘も捨てたもんじゃないな。
いやしかし、さっき楽園とか言ってなかったか。
これじゃあまるで、まるで…。
「戦場、だな。それも終わった後の。」
「さあ、鬼が出るか、蛇が出るか…見ものね。」
「ここで事が起こったとしたら、逃げ道は一つ。」
俺たちは一斉に、親友の指し示した先を見つめた。
岩山から落ちる滝。水源が気になったが、んなこたどうでもいい。
その奥に、洞窟があった。
「当たりだな。」
俺は微笑みを、心中でもらした。


水しぶきが冷たかったが、あっという間だった。
岩山の岩壁は削れ、削れに削れ、惨状を模していた。
進むうち、途中で2つに道が分断されていたので、俺はラッキーな気分となる。
「よし。公平にグーとパーで決めましょ。」
「いや、俺は戦闘要員じゃない。と言う訳なんで、俺とお前が一緒になるとやばい。」
「戦闘要員?何の事よ。戦いに来た訳じゃないでしょうが。」
こいつは何も知らないんだった。
知らぬが仏だ。仕方ない。運命の女神さま!俺に微笑んでください!

このページについて
掲載号
週刊チャオ第255号
ページ番号
14 / 40
この作品について
タイトル
マゼルナキケン
作者
ろっど(ロッド,DoorAurar)
初回掲載
週刊チャオ新春特別号
最終掲載
週刊チャオ第273号
連載期間
約5ヵ月9日