~まどかまゆかの危機~ AFTER THAT
翌日である。
俺の危険な体験は去り、普通の毎日の序章がやって来た。
年明けと言うことで、親父は実家帰り。そして家には臨時家政婦の城宝、同じく臨時ペットの〝CHAO〟がいた。
〝CHAO〟は平和を保つ役割をしている団体から派遣されて来たらしい。
名前をフレア=フォーチュン=ザ=チャスティスという。
面倒なのでフレアだ。決定。
ちなみに、城宝はGUNの司令官を父親に持ち、粉骨砕身して働いているせいで、滅多に家には帰ってこないという。母親もGUN所属らしかった。
そんな訳で。姉と二人暮らしの城宝は、いつでも俺の家に来てくれるという。
親友の怪我は治っておらず、入院中だ。可哀想に。新学期には間に合わせろよ。
その叔父に関しては知らんが、事後処理というからには多忙なのだろう。
一時の平和が戻って来た。
その上、城宝までいるんだから、言う事無いね。さあ晩飯が楽しみだ。
ピン、ポーン―
晩飯の時間に何の用だ。と思って玄関に開けに行く途中、とんでもなく嫌な予感がした。
俺は誰も呼んでいない。
呼ばずとも勝手に来そうなヤツ。
一人しかいねえじゃねえか!
「誰だったの?」
「いや、その、宅配―」
「円を待たせると危険だと思うよ。」
生意気な子供〝CHAO〟はテレビを見ながら言った。
玄関とリビングは結構近い。
開けるべきか、居留守決めるか…。
「えっ…まゆかが?」
「あおおおい!」
エプロンを外さずに玄関の鍵を開ける城宝。
そして待つこと3秒。
―「こんばんは!一人寂しく年を明けるであろうあんたにスペシャルプレゼントよ!」
「こんばんは。」
城宝は明るく挨拶。
「こんばんは。」
〝CHAO〟フレアはいつも通りの挨拶。
そして俺は、挨拶無し。
なぜならば、声は出ないし足はすくんでいる。怖え。
〝侵略者〟の二十倍は恐ろしい。
「早苗?何で早苗が?」
「い、いやっ!これには深い事情が!」
「ふうん。なら、あたしが上がっても構わないわよね。」
とっとと帰れ。思わずつぶやいてしまった言葉を聞き取り、
「何ですって?へーえ、あんた、この事他言されたらどうなると思う?集団リンチね。へーえ」
「どうぞおくつろぎください。」
俺の顔はおそろしく引きつっていただろう。それくらいは分かる。
冷や汗を垂らす俺。戸惑う城宝。変わらんフレア。
ひたすらに、俺はその中で、祈っていた。
ああ、俺の命は消さないでくれよ。世界は滅びても良いけど。