~まどかまゆかの危機~ 三章

なぜ俺がGUNに終われなくちゃならないんだ。
ああ!あれか!城宝に付き添ったからか!
いやいや、犯罪行為でも何でも無いだろう。ちっ、車対人間じゃ分が悪い。
俺は、ひたすら街路を走り回っていた。


相手の数は30程度。その内、半分はバイクだ。
小回りの利くバイクでも、店内には入れまい。そう思って店に入ったが、いかんせん場所が場所だ。隠れる場所が無かった。
仕方ないとデパートを探したものの、商店街なので無い。
と思って走っている内に、
「囲まれた…!」
思わず呟きが漏れる。
「すみやかに捕縛されるべし。さもなくば発砲する!」
絶体絶命とはこの事だ。携帯電話が鳴っているが応答する暇が無い。
明日の日が拝めるかさえ、難しい。
「くそ…どうする?」
無い知恵を振り絞っても、もう逃げ道は無い。
仕方ない―そう思って投降しようと思った時だった。
「打て!!」
「なっ!?」
銃弾が向かって来る。
ああ、走馬燈が駆け巡るっていうけど、あれ嘘だな…死を間近に感じつつ、思っていると、
止まった。
「…?」
思わず首を傾げてしまった。
何と、世界が静止している。向かって来た銃弾は空中で、ワイヤーにでも吊られてんのか、止まっていた。
人間らも、そのまま動かない。
驚いたその時に現れたのは、水色の生き物だった。
歴史の教科書で見たことがある。
それは、絶滅したはずの〝CHAO〟だ。


「君はまだ、死んではいけない。」
「何、言って…つーか何したんだ…?」
「さあ、走って。ここは僕が止める。君は、君の思う通りに行動するんだ。」
「は?」
「行くんだ!君の背中は僕が守る!さあ、早く!」


銃弾をかいくぐって、GUNを無視して通り過ぎると、パァンパァンと、甲高い音が響いた。
銃撃の音だ。それだけで、止まった世界は元通りになったと認識出来た。
路地に入って、携帯電話を取り出すと、すぐさま通話ボタンを押す。
やはり、親友だった。
「今、どこだ!?」
「ええっと…どっかの路地!駅前の…」
「分かった。目を瞑れ!」
訳が分からなかったが、それこそもう時間が無い。
思いっきり目を瞑った。
俺の意識は吹き飛んだ。


コツッ…コツッ…杖でも突く様な、そんな音がした。
その音で目を覚ました俺は、いつもの目覚まし時計が無い事に、まず気付く。
次に気付いたのは、ここがベッドの上だと言う事で、その次にここがどこかの個室だという事。
…牢屋でなければいいんだが。
すると、扉を開いて、白髪の老人が入ってきた。
「大丈夫かね?」
「ええ…はい。ひょっとして…。」
「君の親友の叔父じゃよ。」
にっこりと笑って言う姿を見て、俺はふと安堵の吐息をもらした。
そうか、助かったぁ…。
「付いて来なさい。」
俺は、眠たい頭が一気に冴えた様な気がして、警戒心を張り巡らせた。


「大丈夫か!?」
「コード:Sumash:、まずは落ち着く事じゃよ。我が甥。」
俺の親友は、やっぱり血相を変えていたが、いつもの通りだ。
ひとしきり見回した後、俺は神妙に頷いた。
「さて…君には悪いが、もはや手段は無い。」
「どういう意味ですか?」
「円が捕縛された。GUNの研究所だ。」
「それで…どうなるんだ?」
そいつら…俺の親友、そしてその叔父と、何やら研究員らしい奴ら。
表情を見ていると、落胆気味な、絶望というか、そんな表情をしている。
俺の不安も察して欲しい。


GUNの奴らに追われ、不審な連中に助けられ、挙句、かなり「人生の終わり」みたいな感雰囲気がする。
だがむしろ、その予感は的を射ていた。
「GUNの研究所は、円を分析するだろう。そして、その力の秘密に気付くはずだ。」
「その力?一体何なんだ。」
「知りたいか。知ったところで何も出来んぞ。」
でもだな、同級生が捕まって、親友は八方塞。
その上、俺は最初の段階で巻き込まれてしまった。
だったらやるも何も、全部知って置きたい。
「そんだけさ。」
「ふむ…対象の力は理を捻じ曲げる。」
「それはさっき聞いた。ついでに、俺といる時はそれを解除出来るってのもな。」
「それでは話が早い。その力を利用して、〝サイバー〟の強化に当たるのだよ。」
…聞き知れぬ単語があったが、〝さいばー〟ってのは、何だ?

「血液成分に特殊かつ一時的な化学反応を起こし、人体の機械化を施す事―じゃよ。」
「ひょっとして、戦争に使われたのか。」
「流石だな、親友。理解が早い。10年前にも、円の力は使われた。」
「力を行使すれば、それだけ世界のどこかが歪曲する。力を使いすぎれば…。」
世界が滅ぶ。―叔父はそう言った。

全く、けったいな話に、巻き込まれちまったもんだなぁ…。

このページについて
掲載号
週刊チャオ新春特別号
ページ番号
3 / 40
この作品について
タイトル
マゼルナキケン
作者
ろっど(ロッド,DoorAurar)
初回掲載
週刊チャオ新春特別号
最終掲載
週刊チャオ第273号
連載期間
約5ヵ月9日