9-背理-4

時間は数分戻り、クモを追いかけるチャオと隠遁だ。
捜査局のヘリや船が確認できた。と、同時にチャオの不穏な動きが気になった。
倒れたチャオを揺すっても何も反応が無い。責任感が重くのしかかる。
「次々と人が来るチャオ。終わりチャオ?何もかも」
外を見ながらチャオが呟く。
「何か違う、こっちの想像してる動きじゃない。
チャオ、お前誰の味方なんだ?」
「チャオと、隠遁側チャオ。他の人が来ることを望んでない。
それに、僕の光で"chao"が浄化できなかったのも何か変チャオ。衰退してる。原因はカオスエメラルド…?」
「最後、なんていった?」
「カオスエメラルドが原因かなって言ったチャオ」
事態は大きく揺れ動いた。
チャオが変なんじゃない。チャオの"チャオ"が原因であった。
"chao"と"チャオ"は右と左のように、相対するものだとしたら。先ほどから耳にしている、chaoが集まるとchaosになるという言葉も。
もしかすると、"chao"は力が弱いが近辺に数人いたら連帯して"チャオ"の力を弱めるのだろうか。
暴走状態の逆。深く関わりがあるとしては、筋が通っている論だ。
だから人が来るのを拒むとしても、それじゃ人間は元々"chao"を持っているという事実が無ければ出ない言葉だ。
単に、嫌いなだけかもしれない。不思議な生物だ。感情が表せる。
進化が気軽にできるところからも、もしかしたら人間より優れている生物なのかもしれない。
「疑ってすまない」
「いいや、口が少なかった僕が悪いチャオ」
次のことを考えようとした。
しかし、目の前に広がる道路には武装した人が何人も何人も走っていたのだ。
客船のような船だったのか?ひとかけら程度見えた程度だったのだが。
ヘリも何台か来ていることからも、結構大掛かりな後始末に来たらしい。
言うまでも無く、隠遁がいるマンションへと入ってきた。
チャオは自然と人から隠れている。だが、捜査官が確認される際に見つかってしまうだろう。
こそこそと、もう1匹の倒れているチャオを引きずりながら二階へ上っていこうとした。
だが、無理だ。そこまで力は無く、見つかってしまうという難点がある。
「全員、武器をこちらに床を滑らせるんだ。静かに床に伏せて指示を待て」
そう指示された。
十字架を渡すわけには行かなかった。アクセサリー、あるいは宗教的な人間だと思われることを願って、滑らせずに地面に伏せた。
隠遁としては、幻化の聖職者が嫌いではなかったのだ。
絶対的な強さ。それがあったから。
その時だ、チャオが光を放った。
絶妙なタイミング。伏せた直後、目を瞑っていたのだった。
カウンターの横から少しだけ頭を出して様子を伺っていた。
壁を向いていたからだ。隠遁が、壁を向いていたから。横目で見ると、チャオが目を瞑るようにジェスチャーしていたから。
しかし、明るすぎる照明のように。燃え尽きる鉄のように。
光が反射することはなかった。当然、捜査官にも見えていた。が、狐化はしない。
ひどすぎる結果だ。だが、一つの案。チャオは、その場に黙り込んで座っていた。
「これはなんだ?ぬいぐるみか?」
隠遁に向かって尋ねる。
「そうです。そこの男と一緒に倒れていたもので、どうしようかと迷っていたのですが」
伏せながら答える。まだ、目を瞑っていて。
「パソコンはいじらなかったか?」
次に、倒れている男の顔を覗き込んでいた捜査官が尋ねた。
「気になっていじりました」
物腰を低めにして、挑発しないように切り返す。
なぜ光が効かなかった?まさか、本当に人間に"chao"が元々入っていたというのか。
もう光を放たないチャオは放っておかれ、パソコンと捜査官は回収された。
しばらくして、一つの報告が飛び込んできた。
「一箇所に参加者を集める。来てくれ」
隠遁を立ち上がらせ、歩かせた。
チャオはずっと座っていた。涙を目に浮かべながら。
もう、"チャオ"は使えない。人が来すぎているのだ。泣き目になりながらも、じっと耐えた。
クモはもう殺せない。もっと、人が減ってくれれば。
武器も持たずに、自分は何も出来ないと自分を否定した。
捜査官が上がっていった。立ち上がる気力も無い。ただ、そこに座っていたのだった。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第237号
ページ番号
33 / 40
この作品について
タイトル
「マスカレードと世界観」
作者
Sachet.A
初回掲載
週刊チャオ第224号
最終掲載
週刊チャオ第250号
連載期間
約6ヵ月2日