9-背理-2

突然のことに声をあげる。悲鳴とか、そういったものではなく息を切らしてしまったのだ。
その息を聞き取った侵入者はこちらに出てこようともしない。
それはそうだろう。その間欠泉は、その侵入者が"chao"で意図的に噴出させたものだからだ。
捜査官は動じなかったのが幸いだった。いや、どちらかといえばどちらも肝が据わっている。
息一つしか漏らさなかったのだから上出来だ。
相手側からは一人としか思えないはず。早くも、"chao"に順応できるような奴がいたんだ。
一時間を経過しようとしている。午後一時。しかし、あたりには雲が出ている。
驚いたのが、間欠泉のように床から飛び出したのが土だったこと。
大陸棚のようになっているんだろうか。こんなに大きな倉庫なのに、地上からは壁すら見えなかったはずだ。
ホテル近く、海に面しているビル。やはり、飛び込んでくる者も多いのだろう。
問題は、武器すら持っていない二人がどうやって立ち向かうか。こちらは死者を出さない方針だが、相手はどうだろう。
"逆流"を盾にしていい逃れるつもりか。聖職者はひどく困惑する。
捜査官が、足元に飛び散った土を軽くなでるようにして触る。
触った部分を聖職者に見せる。その後、土を強く握り締めた。
水だ。捜査官がそれを水を舐めてみると、塩辛いことが確認できた。海水である。
何千年、何億年前だろう。強い酸が海にとけ、そして塩となる。
海水が塩辛いのはそういった理由だ。自然の神秘。全てを、常識であると認識するまで混乱は続くのだ。
やはり、大陸棚なのだった。湿っている土。海に近いところにあることがよくわかる。
考察を行っている間に、再度間欠泉のように噴出す現象が起こった。
息を強く吐いた方。聖職者の方だ。まさに、聖職者の真下から噴出したのであった。
今度は声も漏らしてしまう。完全に人がいるものだと知らせてしまったことになる。
土とコンクリートが入り混じって噴出してくるのだ。
湿った土のクッションでは一つも守れない。コンクリートが凄まじい。
肉に食い込む、皮を切る。真下だからこそ大打撃。
それを見て、捜査官が思わずタイヤや釘、ネジを全て出入り口にねじ込む。
何も通れないように。一度触れると力が無くなる、が。暴走状態だからか再び力が入る。短い時間を経て。
タイヤとタイヤの間を釘、ネジがとおり侵入者に襲い掛かる。
そこで、間欠泉を目の前に出しタイヤを自分の方向へ飛ばした。
釘とネジをタイヤが挟み、いとも簡単に鋭利物は押さえつけられた。
しかし、タイヤが飛んでくる。
再び、その鋭利物を抑えたタイヤごと間欠泉で吹っ飛ばす。
タイヤと間欠泉の二重防御。侵入者は攻撃の手を失うが、防御を考えなくてもいい。
「食べ物を探しに行ってる間に君は。大変憤慨なんだがね」
侵入者が、ポツりと呟いた。君たち、ではなく君だという。まだ、二人だということがバレてない。
「水星は太陽に捕らわれている。その水星を救うのが夢であり、運命なのだろうと思う。
水が一滴も無いのは理屈としておかしいのでね。それに、あそこは大気圧がすごい。
地面が噴出してるんだろうが、それはおかしくはない。願ったことだ。"背理"。一箇所が噴出すように、そこだけ気圧が低いように」

このページについて
掲載号
週刊チャオ第237号
ページ番号
31 / 40
この作品について
タイトル
「マスカレードと世界観」
作者
Sachet.A
初回掲載
週刊チャオ第224号
最終掲載
週刊チャオ第250号
連載期間
約6ヵ月2日