7-妨げる者-5

パっと見、不思議な一文だ。
ずっとその文を見ていると、目が痛くなってくる。何かがチカチカ光っているのだ。
それは、電話線を差し込んでいる部分から発せられている。
つまり、"通信を行っているという証拠だ"。
何も行っちゃいない。ただ、スクロールしただけなのに。
慌てて電話線を引き抜き、何のプログラムが起動されているか確認するソフトウェアを立ち上げる。
不思議だ。こうして回線を使っているというのに、ウイルスに対する防御策である、アンチウイルスソフトが導入されていない。
メジャーなものだと思われるものは一つも無いのだ。
起動されていないだけかと軽く見てみたが、どこにも無い。別にいいのだろうか、そんなもの。
だが、重大な事に気づいた。
キーを入力すると、そのたび通信を開始しようとするのだ。
よく考え、電話線をもう一度接続してみる。
DOSを立ち上げ、どこに接続されているのかを調べるコマンドを入力する。
「これは… キーロガーだっ!!」
時、既に遅し。画面中央に、軽い音とともにメッセージが表示される。
[すぐに向かう 安全な場所で伏せて待っていてくれ]
どこに接続されているのか。それは、紛れも無く、"連邦捜査局"。FBIへとつながっていた。
雨音が激しいが、微かに聞こえる。
飛行機の音だ。一機ではない、数機来ているようだ。
やはり、政府はこの殺し合いを認めてはいない。裏でいろいろと手を打っていたのだ。
この男は、間違いなく捜査官だ。自らここに来て、いろいろと様子を見ていたと見える。
そして、キーロガー。これは、入力したキーの情報を記録するソフトウェアである。
その記録したデータを回線を通じて送信することができれば、立派な"ウイルス"へと変貌する。
それを自ら導入していた。だからアンチウイルスソフトは入れていなかったんだ。元々、このために用意されたパソコンだった。
国際電話があるかは大陸側の捜査でわかるだろう。電力がとまっていることさえ管理されているはず。
ふと、こんなことをチャオに聞いてみる。
「"chao"は人を生き返らせることはあるか?」
答えはこうだった。
「時間の矢は常に先へ向かっている。物を投げて人が生き返るか?息を止めて人が生き返るか?
いつも、生は死へ向かうが死は生へ向かうことはないチャオ。生き返らせることは不可能チャオ」
そう、開始直前に見た"逆流"だ。
奴は、ボロボロになるまで身を傷つけたあとに衣服をも治癒しこの世に舞い戻った。
意識があったから戻れたのか?無くても戻れるのか?本当に他人も治癒できるのか?
この殺し合いが、本当に満面の笑みで帰れる気がしない。
国も絡み始めた。メッセージからは、早くも特攻隊が降りてくるかのように思えた。
安全な場所で伏せろ。その文面からは、お構いなしに蹴散らすとも取れる。
本当に生きて帰れるのか。ここは、国に全てを話すべきじゃないか?
そんなことをパソコンを眺めながら考えていると、轟音が当たりに響く。
隣に倒れていた男がうめき声を出す。眠りから覚めてしまうのだろうか?
「どうする、大きな国まで参戦し始めた。このままじゃ何かが見つかるとかが問題でない。
全て消される可能性も出てきた。それほど、クモを抹殺したいんだ。島を沈めてしまえばいい問題だからさ」
諦めの意も少しは混ざっている。どうしようというのか。
主催者はどこにいるんだろうか。"chao"は、一体何を起こすのか。
「これだから"chao"は。複数集まると、"chaos"を起こす…」
チャオが呟いた言葉。耳に残る、その言葉…。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第235号
ページ番号
25 / 40
この作品について
タイトル
「マスカレードと世界観」
作者
Sachet.A
初回掲載
週刊チャオ第224号
最終掲載
週刊チャオ第250号
連載期間
約6ヵ月2日