7-妨げる者-2

行動を再開する。
石を使ってゆっくり下に降り、今まで上っていた屋根の下。建物に入っていった。
人の気配は当然無い。狐化しているのだから、狐の気配なら感じ取れるかもしれないが。
ここまで来るのに時間がいくらかかっただろうか。
チャオからすると、クモを追い、隠遁を見つけ、またクモを追い。
時間は相当かかっている。問題なのが、狐化されているのが解けてしまった場合。チャオを見つけられてしまった場合。
どんなところでも、弱い反射を持つものであってもその狐化する光は反射する。強い光で。
一つの雨粒に入り込むと、そこから一回り全てに反射する。事実、隠遁とクモとチャオ以外は狐になってしまっている。
光は何度も出せるし、時間もかからない。だがそこが問題だ。
狐化した後睡眠するが、その睡眠はどのようにして起こっているか?
それは、完璧に眠らせる段階が20分という区切りなのだ。
眠るきっかけを与えたに過ぎず、狐化した状態で睡眠しているというのは、眠らせている過程だ。
つまり、20分も経てば光を捉えた生物は"完全な眠りに入る"。
20分経った直後に全員が目を覚ませば苦労しない。個々が自分のペースで起き出すから問題だ。
「問題はクモではなく、20分制限…」
中を見渡す一匹のチャオと隠遁に、もう一匹のチャオが困っている様子が目に映る。
彼は石を使うチャオ。移動中、ずっと心配だったことがあったのだ。
「どうした?光のことだったら大丈夫じゃないか。20分経ったと思ったらすぐ光を出せばいいんだから」
隠遁が先へ進もうとすると、チャオが引き止める。
「違う!チャオの光は、あくまでも睡眠薬の役割を持つに過ぎないチャオ。だから…」
そこにしてやっと、光を出すチャオ自身が気づく。
「隠遁は"chao"を持つ人間なだけだから。それに、光は眠らせるきっかけだけだから…」
続ける。大切なところ。見落としてしまったところが。
「隠遁は光をまともに見てしまう。"chao"で避けていても、キャンドル化は免れない。そこチャオ。狐化した生物は個々のペースで目を覚ますチャオ。
一時間眠る人もいれば、十分だけで目を覚ます人もいる。それが問題チャオ。
隠遁の、人間の力とその刃物が無ければ対抗できない。石をぶつけるのも手だけど、ゆっくりすぎる。
なんだかんだで、狐化した後はその状態に驚いて目立ってしまう。クモが人間を仇にしていて、その人間が目立ってしまったらどうなるチャオ?」
一呼吸おいて、うなだれた様子で話す。
「第一、僕らチャオは見つかってしまってはいけないチャオ。好奇心が大の敵チャオ。
何より、島を知られた以上は僕たちとクモだけは知られたくないチャオ」
秘境を守る側の心情を理解できれば苦労しない。ただ、隠遁にはなにかが思い浮かんだ。
この島には秘密がある。それも、チャオやクモにしかわからないような。そんな秘密が。
人間である隠遁は関係が無いこと。だが、人間は好奇心を常に背負って生きている。
それも含め、我慢することは難しかった。何より、口から出そうになった。
目の前の敵、クモを思い出すと簡単に我慢できる。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第235号
ページ番号
22 / 40
この作品について
タイトル
「マスカレードと世界観」
作者
Sachet.A
初回掲載
週刊チャオ第224号
最終掲載
週刊チャオ第250号
連載期間
約6ヵ月2日