6-蜘蛛と光と石と-4

「光が効かない。こんなことは無いはずチャオ」
「集まれば混沌を呼ぶだけの屑がなぜ?」
「"chao"か。誰が撒き散らしたんだ」
「それであっても、"チャオ"が効かないはずは無いチャオ」
「理由は分からない。まだ目を晒していなかっただけ」
といいかけたその瞬間だ。
再度その人間が自然に消えていく。
そう、その人間に触れている面積が大きいほど同化は早い。色々試す中、見つけた結論である。
"隠遁"。彼は彼の中の"chao"に名前をそう教えられた。
「敵?とは違う、不可解な動きチャオ」
「"chao"が集まれば"chao+s"になる。上手い例えもあるチャオ」
「消すべき相手はあの男じゃない。人間クモチャオ」
チャオは多少の相談をして、再度あの屋根へ。
周りを探ってみると、やはりあった。クモが突然現れた理由。糸を見つけた。
太く、頑丈である。網目になっているので、上手く背景と同化することができる。
いまだに一部が残っていることからも、強度が凄いものかと思わせる。
そんな糸の壁を見ているチャオの後ろに、再度キャンドル化をして人間の形へと変化する"隠遁"の姿があった。
静かに行われる"chao"の力。"チャオ"との互換性はまったく無い。また、優位性で言えば"チャオ"の方が上であった。
何事もなく"チャオ"を優先に現象を起こせる。"chao+s"なら尚更だ。
「chaos、カオス。"chao"が複数集まるだけで何か恐ろしいことが起きそうで怖いチャオ」
「さっさと見つけ…」
言いかけたところ。背後の隠遁に気づく。
そのチャオを見て、両方が隠遁を警戒する形になる。
首からぶら下げている十字架のネックレス。目をまだ出していない。
なのに、もう一度光を放つ。
効果はまったくといっていいほど出ない。
「分かるんだ、お前らが誰か分かる」
喋る出すその声。そして、具現化するその人間の顔。
それはチャオたちからみ覚えのあるものであり、この島の異変を救ってくれたあの顔。
実際に体験し、月日の経たないうちに開催された今回の殺し合い。
運良く来ることができた。目的は生きがいを見つけるためであったが、チャオを見てしまったならば目的はできる。
静かに、若者なりにクモを見ていたのだった。
まだ生きている。そう思うと、煮えくりかえる。
既に全てを殺し終わったと見たが、話は違うらしい。
人間に種を寄生させ、地道に増やした無数のクモも一緒に潰したと思った。が、そこから誤り。
あの時、リーダー格の三匹は殺した。問題はその無数のクモ。
成長しきっていない、あの無数のクモが問題だった。
臆病なのか、本能で逃げ惑ったクモ。その一匹があのクモへと成長していたのだ。
惨殺を繰り返した人間、隠遁の仲間だろうがなんだろうが構わず、殺そうと近づいてきたのだ。
問題が発生した。まだいるかもしれない。
一匹なら繁殖できないだろう、さすがに。ただこの光景は異様だ。
「久しぶり、チャオ」
「驚いたチャオ。まさか君がここに来てたとは思わなかったチャオ」
「ちょっとしたことがあってな」
人間クモは、特徴として乗り移った生物と同種の生物だけ襲う。
人間なら人間を、チャオならチャオを。
今回の場合、乗り移ってないので無差別なはずだがクモも目的を持っている。
憂さを晴らすためでもない、復讐のために。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第230号
ページ番号
19 / 40
この作品について
タイトル
「マスカレードと世界観」
作者
Sachet.A
初回掲載
週刊チャオ第224号
最終掲載
週刊チャオ第250号
連載期間
約6ヵ月2日