6-蜘蛛と光と石と-2

それより少し前。人間でない生物が対峙している。
場所は島の街。そう、会場だ。
今まさに、殺し合いをしている会場の道路。
にわか雨が降る中、二匹のチャオが立っている。しかし、この二匹が対峙しているわけではない。
この二匹と、目の前にいる"真っ黒の人の形をした生き物"と対峙しているのだ。
「やぁ、久しぶりだね君たち」
黒い生き物が口を開いた。
「ヘリがたくさん来てると思ったら、やっぱり人がたくさん来てたチャオ」
「一人、厄介なのも見つけたけどね」
チャオも口を開く。互いにけん制しあっているような、そんな雰囲気が場を包む。
「お前一匹しか生き残ってないから繁殖できないチャオ」
静寂ではない。雨の音がうるさい程だ。そんな中、三匹がにらみ合いを続ける。
「戦いを好むクモはこの世にいらないチャオ」
互い互いに口を挟む。全て、黒い生き物は聞いているようだ。
だが、異変は起きている。
黒い生き物の姿が変化し始める。クモの形に。足が増え、巨大なクモへと変貌する。
「やっぱり、"人間クモ"か」
黒い生き物、"人間クモ"は近くの建物の上へと軽々跳躍する。
脚力が凄いのと、クモのように糸を吐いて全身の筋肉を使ったこと。その二つが併合し、その脚力を見出せるのだろう。
「人が何をしているかに関わらず、静かにあいつを消す必要があるチャオ。
見られてはいけないと思うチャオ」
一匹のチャオがそういうと、頭の上の"ポヨ"が一瞬光る。
だが、一瞬に見えているだけで光速の如く何十回と光っていた。
雨粒を辿り、光は消えることなく最後まで飛ぶ。
そして、人の眼球、ガラス、水溜りなど、光を反射するもの全てへと投影されていく。
青い円となって。
その光を捉えてしまったものは全てが狐そのものへと変化していく。
20分間の眠りと併せて。狐が騙すという、草書に基づくように。
「行き通ったはずチャオ」
それを見聞したもう一方のチャオは、ずっと持っていた小さな石を一つ地面に置いた。
何も言わず、二匹のチャオはその石に触れる。
ふわりと、その石と二匹のチャオは自然に浮き始める。浮遊するように、建物の上へと。
「さぁ、どこチャオ?」
小石を手に持ち、あがっていったのは平べったい屋根の建物。
クモの姿はどこにもない。広いというわけでもないのに、クモの姿はどこにもないのだ。
辺りを見渡す。何も無い。クモは一体どこに消えたのか。
チャオは知ろうとすればできることだった。
どんなに細い物であっても、水滴がつけばその細い物。例えば糸を流れる。
今は雨が激しい。だから気づかなかったのもあるのかもしれない。
だから気づかなかったのか?だからといえばそうでもない。
"逆に言えば太い糸は水滴のあるなしに関わらず簡単に見つかる"
人間並みの知能を持ち、あの脚力をも物ににした。あのクモは…

激しい雨を降らせ、その太い糸を張り巡らせ空中にて固定されていた。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第230号
ページ番号
17 / 40
この作品について
タイトル
「マスカレードと世界観」
作者
Sachet.A
初回掲載
週刊チャオ第224号
最終掲載
週刊チャオ第250号
連載期間
約6ヵ月2日