4-夢幻-3
靴の音が響く。こっちに向かってきていることは、音の鋭さで分かる。
緑化の手はガラス片を持ち、体はいつでもそれを投げられるというような構え。迎撃体制。
"着生"は階段や、二階の階段近くの踊り場にエアープラントを張り巡らせた。
そしてついに、そいつは姿を現した。
たまたま見えたこの場所に、緑化が見えたからここに来たのだ。能力の存在がバレてしまったかどうか。
いい案を採るために、とりあえずは殺しておくのが一番いいと感じ、落雷が眺める道路を平然と渡ってきたのだ。
落雷の正体を軽く殺して、雨に濡れた体を乾かそうとして。
しかし、エアープラントを踏んでいることを着生は感じた。
すかさず固定する。
「緑化!投げろ!」
いわれるがままに階段に向かってガラス片を投げつける。
鈍い音を立てた後、階段にガラス片が落ちる。鈍い音を立てたところから、当たったものと思えた。
ガラス片はまだまだある。着生とサングラスの男が来る前に、すでに何個か削ってあったのだ。
かなり厚い、その規定外だともいえる強化ガラス。
それに苦労していた結果が、ここに見えた。
ちらちらとその侵入者の姿が着生と緑化から見えていた。
もちろん、侵入者からも見えていたに違いない。だが、関係は無い。
もう一個投げ、鈍い音がした。確実に当てるべく、もう一つ取ろうとする。
その時だ。取ろうとしていたのに、ガラス片を投げていた。
そのガラス片は何に当たることも無く、一階まで落ちた。まるで、投げるのを分かっていたかのような避け方で避けて。
「これだ!あいつ、俺に"chao"で攻撃した野郎だ!この現象はそうだ!」
着生に言い聞かせる。が。
「何を言っているのですか?確かに、先ほどは驚いたこともありますが、現状何も感じません。
"あなたがガラス片を投げるのを失敗"しただけに取れますが」
着生は緑化が二度投げたことを知らないように見えた。
その会話を聞き、階段の上にいる男が口を開いた。
「夢みたいだろ?僕に当てたガラス片だが、今は僕の手中だ。"chao"で攻撃してこないってことは、あんたら攻撃手段が無いんだろ?
進展は無い。決して。すべてが幻に消える」
そして、もう一度緑化はガラス片を投げつける。
これは当たった。鈍い音。確実に当たった。
しかし、緑化が次に目にしたのは、既に投げるモーションを終え、相手に向かって飛んでいくガラス片であった。