3-着生-2
慌てて見返す。他には見当たらない。隠れているかもしれない。が、声は二つまで確認している。
現時点で一番確率の高いのが二人。ならば、まずはこの二人を叩けばいい。
殺すまで行かずともいい。いや、行かないのがベスト。倒すだけで良い。屈服させるため。
「Right after this think "the WEAK" is dead」
異国の言葉。英国風の老人の横にいる、サングラスをかけた背の高い男。そいつが発していた。
先ほどからの言葉も、全てこの男が発した物らしい。
恐る恐るガラスに近寄り、ガラスに花を咲かせる。
その様子を見て、英国風の老人は牽制の言葉を差す。
「地面に伏せなさい。手を背中の上に組むんです。"chao"を今すぐに解きなさい」
その後に続けて、サングラスの男が言葉を挟む。
「Resistance is futile」
明らかに、異国の言葉を喋っているだけ。出身等は違うはずなのだ。
発音と良い、全てが違う。何か変だ。
花を抜き、その花をガラスに変える。そして、二人に投げつけた。
「Dead loss」
そういうと、サングラスの男が指を軽く鳴らす。
直後、ヒジから手首の間から数本の植物の茎を出し、包み込むようにそのガラスを取る。
その茎を引っ込めると、その腕には痛々しい切り傷が一個浮かんだ。
「Son of a biiiiitch!!!!」
叫ぶサングラスの男を、英国風の男がなだめる様子がわかる。
「動揺せず、相手の動向を確認することも重要です。今は我慢を」
既に階段を上り終わっている。いつでも向かってこれる。出口は無い。
"緑化"は花を一輪しか咲かせられない。ので、咲かせてしまうと時間的にも襲われる。
だから、ガラスを破れないでいる。何事も、偶然であっても発見した事実があるならば有利になる。
「一人の男が一人の恩師に縋る理由。それは単に、尊敬の意である。
尊敬するべき面を見ているからこそ"しがみ付いている"のであって、何も見ていない、盲目ならば尊敬はできない。
そんなことはない。盲目であっても、精神的に盲目でなければいいのだ。私はそう思う」
英国風の男はそういうと、その場にしゃがみこむ。
すると、一直線に小さな植物が点々と生える。男の足元まで来て、通り抜ける。そしてガラスを這う。
その様子を見て、サングラスの男が先ほど投げられたガラスを持って走ってくる。
交戦開始であった。