[[ .8 ]]
「さぁ、始めようか」
その男はそういうと、上を真上に上げた。
「"サマーソニック"」
太陽が目に見える速さで動く。凄く早い。まさか、時間の経つのも?
「一時間経過させ、腕輪をつけた状態で生物に触ると十分で気化する」
そういうと、こちらに走ってきた。
俺は逃げる。崖から上ることに専念する。
相手はチャオから人間になったばかりの生物。つまりは、慣れていない。
余裕を持って崖を上り、初めて抱く感情を感じた。
さぁ、殺そう
相手の姿が二重になる。水に、どう見ても2人が浸かっている。
目の前にあのチャオが現れる。
「なんなんだ?一体、目的は?」
目的は無いチャオ。ただ、薬品が成功しているかのテストチャオ。
「この能力の説明はできるか?」
"ルーズローズ"。対象の二秒後の姿を見ることができるチャオ。
「それだけで良い。勝たなきゃ脳に乗っ取られる。そうだろう?ホテルマンが言ってくれた」
そういうと、チャオは消えていった。
崖に上りきるそいつを見てた。二重に姿が重なる。
ただ、前にいる方は濡れてない。これが俺の能力。
走って殴りかかろうとするそいつを避けるのは簡単だった。手前を避ける気でいればいい。
避け切れなくても、二秒の余裕がある。
拳を叩き込んだ。微妙に大きい腕輪が吹っ飛ぶ。手で持っていたのか。
それを拾い上げ、真上にかかげてみるが何も起こらない。
その様子を見て、チャオが石を腕輪に当てる。運悪く、腕輪はチャオの方向へ飛んで行った。
腕輪を持ち、真上にかかげる。太陽が進む。これで二時間か?
腕輪をこっちに向かって投げた。既に太陽は沈み始めている。
だが、予知できている。
気持ちよくキャッチすると、チャオが笑みを浮かべてこういった。
「かかったな」
チャオの方を見る。
「"サマーソニック"!お前は気化する!」
腕輪に触っただけでも効用が訪れた。一転してピンチ。
相手に殴りかかる。二秒後を予知できているせいか、気持ちよくあたる。
「オラアアアア!!」
殴り続ける。が、チャオは侮れない。中々倒れない。
二秒後が拳を振り上げるのを見て、俺は退いた。
腕輪はまだ手の内。離したらなにかが終わる。腕輪は持っていないといけない。そんな気がした。
全力であっても倒れない相手を見て、俺は泣いた。
五分くらいが経過。隙を見て殴るが、絶対に倒れない。
泣きながら戦う。もう終わってしまうのかもしれない。
そう思っていると、腕輪が砕け散った。瞬間、俺の体が何故か水っぽくなっている。
滝つぼの水だ!それが全て、俺のところへ向かう。
そして、いたるところから入ってくる。この姿、見たことがある。
あのカオスだ。
こんなところでなれるとは。本当に原作譲り。
だが、なったところで体は動かない。瞬きをすると、いつの間にか水は無くなり普通の体に戻っていた。
そして、俺は無意識に叫んでいたのであった。
「"カオス"」
チャオの手が吹っ飛ぶ。手首からキレイに吹っ飛んでいる。
「-1」
俺がまた無意識に言うと、一秒前のチャオがチャオに重なって見えていた。
俺が俺にヒントを出したんだろう。時系列を崩している、と。
実世界に-1なんて数字はありえない。残像が実体化して、どんな動きをしても体に密着するのではじけ跳ぶ。
気が付けば、俺はあの部屋にいた。
回転する針のスイッチを急いで止めた。