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「ちっくしょおおおお!!」
覚悟を決めて、線路を戻る。角度からして、岩二つは線路には当たらなかった。
今戻っておけばいい。ナックルボーラー。野球のナックルボールであることは計算外だった。
不規則すぎる。MRじゃ勝ち目は薄い。なぜ付いてきてしまったのか。
線路の支柱が思いっきりぶっ飛ばされる。死に物狂いで駅に向かって走る。
岩はそのまま島の地面にめり込む。どうやら一個までしか操作できないらしい。
駅に着いた。疲れることを覚悟に走るととんでもない速さが出る。
そのまま階段を降り、チャオの方に向かおうとした瞬間のことだ。
「食らうチャオ!」
岩が吹っ飛んでくる。急いで階段に戻る。これまた階段の支柱にぶち込まれ、駅は崩れた。
傷を負う覚悟で飛び降り、回り込むようにしてチャオに近づく。
正直、死ぬ。
予想通り、チャオはこっちに向かって岩を飛ばす。だが、垂直に逃げ切れば当たらない。距離から言ってもだ。
かすったと思ったら、ナックル。変化がかかり、そのまま岩に押されるような形で滝つぼに落ちる。
チャオがその様子を見て、近づいてくる。崖の上。草を触っている。まさか?
勢い良く草が飛んでくる。だが、草は草だ。都合良く当たれば切り傷。当たらなければ、ただの紙のようなものだ。
あえて体にあて、防御する。水は当てにならないから潜らない。
疑問なのは、ナックルなんだが。
「簡単に言えば、物を一方向に飛ばす。それは草であっても、岩であっても…。
そして島であっても!!これで終わりチャオ!」
何を言い出すんだ?一体?
チャオの様子がわからない。何はともあれ、上に上がる必要がある。
急いで崖から出ている岩を乗り継ぎ、上に乗り上がる。
チャオが地面に手を置いている。急いで駆け寄る。
「チャオォォォォォ!!!」
必死に叫ぶ。必死に走る。「ここに降り立った時から足は地面に触れていたっ!!」
そういうと、チャオは思いっきりジャンプした。そして、羽を羽ばたかせた。
同時に島がゆっくりと下降を始めたのか?その様子は周りの海を見れば良く分かるはず。
だが、それより先にやることがあった。思いっきりジャンプして、チャオを捕まえる。
NNNであるこのチャオは、勢い良く飛び立てるヒコウが無く思いっきり跳べるパワーが無いと踏んだからだ。
「止めてチャオー」
捕まえている俺の手に噛み付いたりして、必死の抵抗を試みる。
もう、これしかない。自分で起こしたことだから自分で責任を取ってもらう。
島が沈むことで出来あがる大きな渦で溺れ死ぬ前にチャオが責任を取れば良い。
そう思って、口を押さえる。鼻は無いはず。
どんどん沈んでいく島。思いっきり口を抑える俺。普通に考えて犯罪者だ。
ここまで来ると安心する。これは賭けだ。
1人目をやって眠ったら傷は全治していた。ズボンさえも治っていた。縫い目は無い。
そこで、予想を立てた。状態がリセットされるのではないか、と。
ここに来たばかりの状態にリセットされるとしたら、どんなに酷い状況になっていても俺は眠りさえすれば生き延びれるはず。
無理だとは思うがこれしかない。
島に水がなだれ込む。チャオはまだ気絶していない。気絶させたら俺の負けだ。
なだれ込んできた水に向けて、今まで抑えていた口を大きく開ける。
海水がチャオの口になだれ込む。飲まざるを得ない。つまりは、こういうことだ。
準備が出来てる分、俺の方が息は持つ。

気が付いたらMRの滝つぼにいた。立っていた。
チャオは倒せたらしいが、このままだと間違いなくこいつが3人目になる。
これもチャオだ。しかも同じNNN。同じってワケじゃないだろう?
「お前が…最後か?」
そう聞くと、そいつは頷いた。
「この世界には3人しか生物がいない。ホテルマン、チャオ、そして君チャオ」
どんどん形が変わっていく。粘土のように。本当にLSDを見ているみたいだ。
人間のような形に変わっていくが、一体どんな?
その疑問はすぐに結論を出せた。

"俺"だ

このページについて
掲載号
週刊チャオ第221号
ページ番号
7 / 9
この作品について
タイトル
「マリオネット」
作者
Sachet.A
初回掲載
週刊チャオ第221号