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起きた。日は真上。時間的に正午当たり。三時間は眠れたろう。
ズボンの切れ端が無い。落ちたのかと思ったら、それすら回りに見当たらない。
むしろ、傷。傷が無いんだ。それどこか、石に叩きつけた手が治っている。折ったとは思ったのだが。
2人目の男を見つけるために、街を歩く。
下水道にはいない、店内にもいない。下水が海に流れ出る、あの水路にもいなかった。
MRではないか?とも思い、まずはSSを洗ってからと考えた。
カジノの方に向かうべく、ホテルを通る。
その時だ。エレベーターの動く音。すぐにでも動けるはずのエレベーターがボタンを押しても動かなかった。
しばらくして扉が開く。乗り込み、"チャオガーデン"に向けて移動を開始。
ガーデンに付いて目にしたものはチャオ。
チャオが一匹、ガーデンの真ん中にいた。
「君がそうチャオ?」
チャオは俺の方へ歩いてきた。3人の男。男?人間とは言ってない。
が、チャオに性別はあるのだろうか。多分無い。でも、男ではないと言い切れない。
一応、可能性はある。
「あぁ、1人をやって後2人を見つけてる」
こんなことを言ってみれば分かるだろう。チャオは無関係であると思うが。
だが、違った。現実はこうだった。
「それじゃ、MRでやるチャオ。ガーデンじゃやりたくないチャオ」
結果、戦うこととなった。嫌な夢だ。いや、夢じゃなかったか。
チャオとエレベーターに乗り、駅へ向かう。
駅には当然人はいない。モノレールのように、ワンボタンで動くようになっている。
押すと、ゆっくり動き始めた。席に腰掛け、落ち着いた。
「まさかゲームの中にいる、チャオにまで会うとは」
そう呟いた。正直、驚いた。
冷静になって考えると、あの小さな箱の中で動いていた小さなキャラクターが目の前にいるのだ。
何か深いことを溜め込んだように、黙る俺を見てチャオが言う。
「公正に行くチャオ。"ナックルボーラー"、物体の重力を切り替える能力チャオ」
フェアに行くとか、これの目的は一体なんなんだって話になる。
が、答えておく必要はある。先に言われたことだ。とは言っても、知らないものは知らない。
「俺にも自分の能力は分からない」
チャオはその言葉に、何も突っ込みをいれず黙った。
しばらくして、口を開く。
「答えなくても良かったチャオ」
謎めいた一言を聞いて、固まりながらもMRに到着する。
チャオが電車から降りずに、床に手を置く。しばらくすると、電車が動き出す。
「いや、ここで降りるんだろう?一方通行だし、もう先は無い」
そういったはずだった。目の前の光景に驚き、最後までいえなかったのかもしれない。
なぜ行き止まりを乗り越えようとしているんだ?
「ちょっと待てェェェ!!」
叫ぶ俺にチャオが冷たく返す。
「これが戦いチャオ…。"ナックルボーラー"」
一気に車両一個が行き止まりを通過。急いで電車を出ると、チャオも同時に出てきた。
そのまま、全ての車両。電車そのままが行き止まりを乗り越え、断崖へと落ちていった。
何をするのかと思ったら、そのまま羽で下までゆっくり降りていく。
見たところNNNのようだが、一応ヒコウはできるもんだ。
能力をどうやって出すのか。むしろ、俺には備わっているのか。
そんな疑問を抱えながらも、チャオの様子を見る。
海に落ちないように、柵が張ってある。その柵に触れている。
しばらくして、柵が勢い良く上に飛ぶ。
反射。かろうじて身を反った。
駅の一部をふっ飛ばしながら、柵は崖へと消えていく。
焦りながらも体勢を立て直した直後。何かが足を切った。どう見ても血が出ている。
傷口は浅い。木で切ったのではないと断言できる。既に距離を取っている。
周りを見ると、草が落ちていた。
血が付いている。犯人は草。
チャオの能力は物体の重力を切り替えるという。重力を元の何倍かに切り替えることも可能なんだろうか。
様子を見ていると、少しずつ重力が加算されているように思える。
電車が良い例だ。重さが関係あるのだろうか。草を飛ばしたのが早すぎる。
重ければ遅く、軽ければ早く。一つ謎が解けた。重いものを飛ばそうとしているときに向かえば良い。
だが、チャオは既に重力を切り替える作業をしていた。
洞窟に入る、穴の前にあるあの大きな岩に触れていた。
「チャオックメイト!!」
岩が勢い良く飛ぶ。何故か二個飛んでくる。両手で一つずつ触れていたのか?
線路に逃げ込み、行き止まりと逆の方向に走り出す。
駅は崩れてはいるものの、線路は崩れてはいない。これじゃマズイと悟った。
高い。普通に怖い。だが、前を向いて走った。逃げ切れる保障は無いのに。
チャオがこちらを向いて唖然としている。流石に計算外だったのだろうか。安心して前を向く。
横にチラリと見れたあの石。
こっちに向かってきている!
重力を切り替えられるのは一回だけじゃないのか!