[[ .2 ]]

目が覚める。
不思議と、起きていた時の記憶がすぐに蘇った。
深い意味合いは無いだろう。単に、ここで3人の男を殺せば良い話。
しばらく街を歩いたところで、そこがどこか気付く。
以前プレイしたゲームの中の風景に似ているようだ。
夢という自覚があることにおかしいとは思ったが、明晰夢という言葉がある。
夢の中で自由に動けるのだという。夢は起きた時に、初めて夢であると自覚する。
実際に実感しているかのようにもう一つの世界を作り上げるのが普通の夢である。
だが、実際夢はなんでもありだ。常識にとらわれて常識のままの世界を生きてしまうと普通の夢でしかない。
「明晰夢」は違う。夢を夢であると自覚して、場合によればその夢で自由に動き回れるという。
まさにそれはその状態であるとは思う。が、空を飛べたりはできないらしい。
常識の中で動き回っている。自覚する程度か?それであっても、自分の体を自分で動かせているようだ。
どんどん目で確認する世界が鮮明になっていく。
24時間。街には誰もいない。SAinSS。

現在の時刻を探すべく、時計を探る。ゲームでは時計はどこにあっただろうか。
正直、そんな細かいところまで覚えていない。ホテルをうろついていると、街灯が消える。
近くにある、ロビーにいた男性にその現状を聞く。
「街灯はなぜ消えたんですか?」
作業している手を止め、こちらを見て笑顔で答える。
「夜明けの時間ですよ。なぁに、すぐ明るくなります。海に出てみてください」
安心して海側に出ると、本当に夜明けのようだ。
時間はただの常識にとらわれている。夜明けと共に、俺の体は消える。
寂しげに海の向こうから出てくる太陽を見つめ、3人の男を探し始めようとする。
いや、3人?

夢には3人の男しか出てこないんじゃないのか?

ホテル側を振り返ると、先ほどのホテルマンがやってくる。
雄叫びを上げず、足音を響かせず、ゆっくりと笑みを浮かべてこちらに向かって歩いてくる。
「そこで止まってくれ、頼む」
夢とは言え、こちらの事情を知らない場合奇襲を掛けられる。
相手は青年。だが、こちらも歳で負けてはいない。圧倒的に勝ちも困るが。
首を絞めるか海にでも沈めれば。これは夢だ。現実では出来ない事柄だし、生き延びる手段でもある。
もし、ここで負けてしまったらどうなるんだろう?そんなことを考えないように、ホテルマンに止まるよう呼びかけた。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第221号
ページ番号
2 / 9
この作品について
タイトル
「マリオネット」
作者
Sachet.A
初回掲載
週刊チャオ第221号